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sideヴィスタン

私とミリア・シルヴェンターが出会ったのは四年前。



私が立太子し、ただがむしゃらに学んでいる時だった。

その時の私は気が張り詰めていて、表情がいつも険しかったので、あまり令嬢たちには囲まれずに済んでいた。

しかし、将来王になるのではそんなことは言ってられない。世継ぎを生むことも王の役目だからだ。

そこで父王が選んだ令嬢を婚約者にすることに決めた。

それがミリー。

今、いや、未来永劫私の最愛の人だ。



当時の私は王太子妃はお飾りにして、世継ぎだけ産んでもらおうと思っていた。

だが、王宮の庭園で顔合わせをした時、そんな思いは私の中から無くなっていた。

その時、私はすでにミリーに一目惚れしていたのだろう。


私は父王に任されている執務が終わらず、時間に遅れてしまった。

さすがに令嬢に悪いと思い早足で向かっていた。

その時だ。 同じ年の頃の少女の笑い声が聞こえたのは.....


「ねぇ、とっても素敵なお庭ね!私こんなに綺麗なお庭初めて!」


侍女と喋っていたのだろう。

とても砕けた口調だった。

私は、ずっと王宮で暮らしていた。

外にあまり出たことがない。

同じ年の子と遊んだこともなければ、あまり話したこともない。そんな中で庭園の一角で待たされておきながら文句も言わず、満面の笑みでいるこの少女に目を奪われた。


私は、慌てて少女が待つ庭園に向かう。

すると、少女は無邪気な笑みを消し、伏し目がちになる。


「待たせてすまなかった。私はヴィスタン・ゴールディアという。あなたは?」


「わたくしはミリア・シルヴェンターと申します。」

先ほどの無邪気な笑顔とは違い、貼り付けたような淑女の笑みだった。


(ミリア嬢はこの婚約に乗り気ではないのか?)

自分が乗り気ではなかったのを棚に上げ、私はそう思った。だが、なんだかこの令嬢を逃したくなかった。

婚約は決まっていたようなものだが、私はミリア嬢本人からの了承が欲しかった。


「私はこの婚約を進めようと思う。ミリア嬢も異論はないか?」

素直に言うことができず、無愛想になってしまう。


「.......ございません。」

間があったが、了承をもらったので私は安心した。


そこからは私が話を振り、ミリア嬢と他愛のない話をした。


時間が過ぎ、解散となった時私は勇気を出して、

「ミリア嬢、ミリーとお呼びしても?」

と聞いた。


彼女はきょとんとして、少し笑った。

「もちろんです。」

そう答えてくれた彼女は一瞬はじめの無邪気な笑顔になったような気がした。この時私はミリーが天使にみえた。その笑顔に見惚れていると、ミリーは戸惑っていた。


我に返った私は、呼び名を変えてもらうよう言った。

「私のことはヴィーと呼んでくれ。ミリー。」

「.....ヴィー様。」

「ヴィー、呼び捨てで呼んでほしい。」

「.....わかりました。ヴィー。」


顔合わせはつつがなく終わり、その時のことを楽しそうに話している私を見て、両親はとても喜んだ。


顔合わせで分かったことがあるが、どうやらミリーは私と仲良くなりたくない、もしくは婚約をしたくない様子なのだ。何故かは分からない。

私個人が嫌いだということはないだろう。そもそも会ったのも話すのも今日が初めてだったのだから。

ということは、王妃になりたくない。何か私、王太子の妻となると不都合があると考えられる。


でもね、ミリー。

もう“俺”はミリーを手放すつもりはないよ。

今日だけでわかった。俺はミリーを愛するだろう。

これからの人生ミリーと共に歩むだろうと。

逃げても追いかけるから覚悟しておいてね。ミリー。








四年後、15歳になり、成長したミリーはさらに美しくなった。

私は忙しい中時間をできるだけ取り、ミリーに会いにいくようにしている。私のことはヴィーとは呼んでくれなくなって、避けられている気もするけど、

私が行って拒まれたことはないので、嫌われているわけではないはずだ。.......そうと信じたい。


でも、一つ気になるのはミリーが婚約解消を申し出てきたことだ。

その時の絶望感と言ったら.....言葉に表せない。

とりあえず私は泣いた。今まで自分の感情がコントロールできなかったことはなかったはずなのに......

止めようと思っても止まらなかった。

ミリーは戸惑い、ハンカチを差し出してくれたが、そこにやさしさを感じまた泣いてしまった。

私が泣いて話し合いにならなかったので、その話は有耶無耶になった。

私は構い過ぎたのが鬱陶しかったのかと反省して、週5で会っていたのを週1にしてみた。

そして、ミリーと呼ぶのもやめた。

心の中ではいつもミリーだけどね。




そのまま私は学園に入学し、それでも週1でミリーのもとに通うのはやめなかった。

私が生徒会長になり、ミリーが過ごしやすいような学園にすることを目標に頑張ってきた。



そして、ミリーが学園に入学した。

ミリーが困っていないか心配になり、ほぼ毎日ミリーの様子を見にいくためだけに1年棟へ行っている。

ミリーはどうやら困惑しているようだが、心なしか嬉しそうにしている。してくれていると思いたい。




最近ミリーが浮かない顔をしている。

ミリーの憂いを取り除こうと、私はミリーの周りの出来事を調べた。

すると、どうやらヒロルガルド・ブロンズ男爵令嬢とやらが関係しているようだ。

ミリーの友人曰く、その男爵令嬢はミリーに虐められている、、、と言っているらしい....

みんな信じていないのでミリーの方を擁護してくれているみたいだが、そいつのことは許せないな.....



ある日、ミリーの様子を見に私は1年棟に来ていた。

すると、その女、ヒロルガルド・ブロンズが私に絡んできたのだ。


「殿下ぁ。はじめまして!私はヒロルガルド・ブロンズと申します!以後お見知りおきください♡」


私は無言でその手を振り払った。


「殿下?(これは好感度イベじゃないの?)」

よく分からないことをその女はほざいていた。


「何を言っているのがよく分からないが、お前ごときが私に喋りかけるな。」

私はこの女にイラついている。ミリーへの意味のわからない嫌がらせが続き、ミリーの元気がないのだ。私が会いにいくと心配させまいとしているのか、空元気で、微笑んでくれる。その健気さがまたいいんだが....ゔゔん。


話を戻すと、ヒロルガルド・ブロンズに私は憤っている。

そのまま唖然としている“それ”を置いて、私はミリーを探しにいく。


教室にもどこにもいない、今回は諦めて帰ろうと階段の方へ向かう。


するとさっきの甲高い耳障りな声が聞こえてくる。


「なんでうまくいかないの!あんたのせいよ!!」

何か嫌な予感がして私は走った。


そこには突き飛ばされて階段から落ちているミリーがいた。


....ヴィー、助けて....


ミリーの声が聞こえた気がした。

私は焦って

「ミリー!!」

と叫んで、ミリーの元へ駆ける。


なんとか間一髪でミリーを受け止めることができた。

一安心すると、怒りが湧いてくる。


ヒロルガルド・ブロンズには“俺”の大切な人を傷つけるとどうなるか、教えてやらないとなぁ。


「ヴィー」

ミリーは私の腕の中にいる。

恥ずかしそうにしながら安堵の表情を見せるミリーに微笑みかけて、前を向く。

あの女の顔が視界に入っただけで怒りが湧いてくる。


「ヒロルガルド・ブロンズ。」

忌々しい女の名を呼ぶ。


「はいっ!」

名を呼ばれだだけで何が嬉しいのか、弾んだ声だった。


何か勘違いしているみたいだから、現実を突きつけてやろう。


「貴様には相応の罰を受けてもらう。覚悟しておけ。」


周りの生徒に拘束しておくように言い、私はミリーを抱き上げその場を去った。



「あ、あの!ヴィスタン様!おろしてください!」

顔を真っ赤にして恥ずかしそうにミリーは言う。



「もうヴィーとは呼んでくれないのかい?」

悲しくなって自分でも驚くぐらい甘い声が出た。


「っ!....ヴィー」


「ふふっ、なんだい、私のお姫様。」



「大好き!」

ミリーは幼少期の頃に一度だけ見た本物の笑顔を初めて俺に見せてくれた。


息が止まるかと思った。

思わず立ち止まり、大切な存在を確認するために腕に力を込める。


「俺もだよ。愛しのミリー。」


もう逃がさないからね。覚悟してね。ミリー.....











私は今、牢に来ている。

もちろん、俺のミリーを突き飛ばした女に罰を与えるためだ。

ブロンズ男爵令嬢はおそらく私のことが好きなのだろう。そうじゃないとミリーへの嫌がらせの数々の説明がつかない。

だから、俺がわざわざ惨めな女の末路を見届けてやって絶望させてやる。



女がいる地下牢の前に立つ。

「おい。」

思ったよりも俺は怒っているようだ。

自分でも驚くぐらいの冷たい声が出た。


「ヴィスタン殿下?なぜ私はこんなところにいるんでしょう?助けてください!......今ゲーム通りならミリーが破滅して私が王太子妃になってるはずなのに!」


この女、何を言っているんだ?

よくわからないがミリーが破滅....ふっ、俺がいる限りそんなことにはならない。

それに私が王太子妃?そんな訳がないだろう。


反省しているなら一思いに処刑にしてやろうと思っていたのに。

反省のかけらもないこの女には生きて罪を償ってもらおうか。

ミリーが気に病むから、生涯幽閉とだけ言っておこう。そこで何が起ころうが関係ない。

この女には俺が引導を渡してやろう。


「お前は今から死刑囚の重罪人地下牢に入ってもらう。あぁ、だがお前は死刑ではない。重罪人どもに怯えながら生涯を終えるがいい。」


「いやぁぁぁぁぁ!殿下ぁぁ!」


淡々と刑を言い渡し、用は済んだともう振り返らなかった。もう頭ではミリーを囲い込む計画を練っていた。












「ミリー。」


「なんですか?ヴィー。」

今私たちは王宮の私の私室にいる。

ミリーとは、両親を説き伏せて私の卒業と同時に結婚することが決まった。

一足先にミリーが私の部屋と繋がる隣の部屋に移ってきた。

もちろん私の要望で。


「愛してる。」

そう言って私はミリーの手を握ってそこにキスを落とす。


「私も、愛しています。」

ミリーは照れながらも返してくれる。


あの事件があってからミリーは私に愛を伝えてくれるようになった。

お互い素直になることができて、2人の関係が縮まった。



「結婚式が楽しみだね。」

これでミリーは一生俺のものだ。


愛してるよ。誰よりも。ミリー。


見ていただきありがとうございました。

また後日談など書くかな?と思いますが、その時もよろしくお願いします。

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