第63話 大喧嘩祭10
俺から放たれる光を見て、カルボは杖を振り上げて俺に叩きつけようとする。いい反応だ、しかしそれは失敗に終わる。杖が弾かれたのだ。カルボはそれを見て距離をとる。
「なんの魔法ですか? 聞いたことのないものだ」
「なぁに、安心しろよ。俺にもわからないんだから」
とりあえず、カルボの方を向いて放ったはずなんだが、どうやら何かを飛ばす魔法ではないらしいな。光もすぐに収まってしまった。力の向上も感じられない。ムカつきもしない。杖を弾いたのは何だったんだ? バリアー的なあれか? だとしたらカッコつけといて悪いが降参しなきゃならなく······、
「バーガー、後ろ」
ジゼルの声に俺は後ろを振り向く、って何もいないじゃないか。志〇後ろ後ろってか? ジゼルが冗談をいうわけがないか、俺はクラウンの部分だけを180度回転させる。うん? 青白い光が俺の背後に、俺はそのままの姿勢で視線を上に向ける。
「なっ! お前は!」
そこには、俺が立っていた。生前の、転生する前の、人間だった頃の、現代最強だった時の、コンビニに買い物に行った、トラックに轢かれる前の、俺がそこにいた。
ただ違うところといえば、ランプの魔人みたいにハンバーガーから上半身部分のみが生えているってのと、頭に白い三角巾がつけてあることだ。あと肌が青い。
「ハハ······そういう魔法だったのか」
「どういう魔法です」
転生前の俺です、なんて言えないから、俺はこういうことにした。
「化身だ。俺の中に眠る勇者の魂を実体化させる魔法とでもいおうか」
「勇者の魂だと!」
おお、驚いてる驚いてる、こういう知恵で戦う奴の驚くさまを見るのはなんだか気分がいいな。さて、試運転と行きますか。
「じゃあ、行くぞ、覚悟しろ。何せこれは初めて使う魔法だ、力の調節は難しいぞ」
俺はゆっくりとした動きでカルボに近づいていく。ハンバーガーの魔人もちゃんとついてくる、なんか可愛いな。
俺はゼロ距離まで近づく、完全にカルボの間合いの中だ。ハンバーガーの魔人がカルボとメンチを切っている。なんだこの安心感は、まだ能力すら判明していないのに。
「く、雷撃」
「壁ドン」
カルボが魔法を放とうとするが、それよりも俺の精が放つ拳のほうが断然速い。一撃で杖を叩き折りカルボの胸を殴る。カルボは血を吹き出し数歩よろめく。俺は容赦なく念じる。やっちまえ、壁ドン三本締めだ!
「いよぉおっ!
ドドドン! ドドドン! ドドドンドン! いよっ!
ドドドン! ドドドン! ドドドンドン! もう一丁!
ドドドン! ドドドン! ドドドンドン!」
「ぐぼらがぎゃがぐわーーッ!!」
カルボはモヒカンのやられ声みたいなリアクションをとって試合場の端まで飛ばされる。ふむ、本来の肉体よりも格段に力が劣るな、足がないせいか、否、単純に俺の肉体を再現しきれていないのだろう。まぁ、どちらにしても高威力なのは間違いない。あとはカルボを場外につまみ出すだけだ。
「······なかなか、やりますねぇ······」
カルボはボロボロになりながらも立ち上がった、全身血だらけですでに満身創痍だ。
「ほう、まだ意識があるとはな」
「ここまで私を追い込んだことを後悔させてあげましょう」
「なんだ、まだ俺を楽しませてくれるのか?」
「あの子供をご覧なさい」
カルボが指さしたのはスーだ。犬の形をした風船を大事そうに抱えている。
「あの子供が持っている風船には爆裂魔法が仕掛けてあります」
「なに!」
「こんなこともあろうかと用意していました。さぁ、あの子の命が惜しいのならば素直に場外に出なさい、さもなければ後悔することになりますよ」
「はぁ······わかった、わかったよ」
「ふふ、ここまでやられたのは久しぶりでしたよ」
「······ってみろ」
「はい?」
「やってみろ、やってみやがれ、やれるもんならやってみろって言ってんだ!」




