第39話 蜥蜴軍団7
蜥蜴剣士たちの装備は片手剣以外バラツキがある。
胸当てを付けていたり、籠手を付けていたり。俺に襲いかかってくる、蜥蜴剣士は鉄兜を装備している。アイナの矢が頭部にヒットするも、鉄兜に拒まれる。
「アイナ大丈夫だ! こいつは俺がやる!」
矢が再び屋上に飛んでいくのを見て、俺は目の前の敵に集中する。蜥蜴たちの身長は2m近い。特に剣士タイプは腕が太い。生前の俺に比べたら貧弱だが、それでもその腕から繰り出される剣撃は強いだろう。
俺はハンバーガーの手軽さを活かして絶え間なく動き回る。蜥蜴剣士は首を動かして俺を目で追う。魔法陣が傷つけられれば俺は意識を失い、それは致命的な隙となる。だが折角の機会だ、なるべく魔法は温存してこの短剣だけで戦いたい。
俺は蜥蜴剣士の背後に回り込み横回転して急速接近する。跳ね上がった俺は蜥蜴剣士の背中を斬りつける。蜥蜴剣士は前方によろめくものの、硬い鱗に阻まれ肉まで刃が通らない。
今の俺の力ではエリノアのように鱗を切断することはできない(ジゼルの強化魔法ありきでこれだ)、だが鱗で覆われていない箇所を狙えば······。さっき斬れた時は足首の裏側だった、関節部分は駆動するために鱗が少ないのだ。
蜥蜴剣士は、俺を狙い剣を低く振るい始める。この程度ならアイナとの鍛錬で経験済みだ。むしろアイナの剣の方が断然早い。
俺は飛んだり跳ねたりして剣をかわす。いきなり頭を狙えば、高く跳躍したところを剣で斬られる。ならば跪かせるまでだ!
まずは膝裏を狙う。膝裏は鱗が少ない、あそこなら斬れる!
「ぐっ!」
その時、俺の頬に衝撃が走る。蜥蜴剣士の尻尾攻撃だ。尻に集る蝿を払うように、俺は無様にも鞭のようにしなる尻尾に直撃してしまったのだ。
俺は吹き飛んだまま飛び退き距離をとる。蜥蜴剣士は舌をチロチロさせて俺ににじり寄ってくる。強い、エリノアがバッサバッサと斬りまくっているから弱く見えるが······、村人たちが勝てないわけだ。ましてや俺はハンバーガー。俺は自身の未熟さに更なる鍛錬を誓い動き出す。
斬撃とは違い、尻尾攻撃では魔法陣は傷つかない。ならば実質ノーダメージのようなものだ。ノーカンだノーカン、なにせ俺はハンバーガー、脳震盪を起こすための脳みそも持ち合わせてはいないのだからな!
俺は再度チャレンジする。次は尻尾にも注意を払う。ちゃんと見ていれば振り子のように動いているだけだ、掻い潜ることなど容易い。そしてウィルの短剣で蜥蜴剣士の膝裏を斬りつける。
蜥蜴剣士は短い悲鳴をあげると、斬られた方の膝を地面につく。やった! 膝裏を斬ってやった、腰の入っていない剣など恐るるに足らぬわ! 俺は蜥蜴剣士を正面から襲う。肘を狙うと見せかけて、鉄兜の隙間から見える目を狙う。
蜥蜴剣士の左目に短剣を突き刺す。蜥蜴剣士は暴れ悶える。捻って脳みそを破壊する前に鉄兜が外れ短剣も落ちてしまった。左目を手で押さえて、こちらを睨みつけてくる。俺は短剣を拾って反撃に備える。次の攻撃をかわし、とどめを刺す。俺がそう決心した、まさにその時。
「なっ!」
俺は知らなかった。追い詰められた敵が死力を尽くして襲いかかってくるということを。剣を捨て、口を大きく開き、俺にかぶりつこうとしてくる。窮鼠猫を噛む、否、窮蜥蜴ハンバーガーを食べる、とはまさにこの事だろう。敵の思わぬ行動に俺は硬直してしまった。かわせない。俺は力の限り叫んだ。
「アイナ!!」
その瞬間、蜥蜴剣士の右目、眉間、喉にそれぞれ矢が生える。そのまま大きくのけぞり仰向けに倒れる。足がピクピクと痙攣しているが、どうみても即死だ。
アイナのいる茂みの方に振り向くと、テンポよく矢が茂みから放たれ続けている。······3本同時? いや、一瞬ズレがあったな速射か。
アイナさん、どっかのVR女神(VRをこよなく愛する女神の略)より、女神してるよ!




