2-7 ポプリの販売
今回の商品ーーポプリの準備が整った。
ここまで来るのには結構時間がかかった。
それぞれのポプリにどんな効能があるのか実際に領民やランバート商会の方たちにもいろいろと試してもらって決めていったからだ。
「これ、あんまりシャキッとしなかったな...」
「昨日、すごくよく眠れたよ。びっくりだった。」
「この香りをかぐと落ち着くのよね。好きだわ~」
みんな、それぞれに感想を述べてくれて、興味が出そうなもの、効果がありそうなものを決めていった。
みんなで和気あいあいと意見を述べるのも楽しいもの。
「この色かわいいわよね。私の一番好きなハーブを入れちゃいましょう。」
私も、自分用にかわいいピンクの袋に私らしく野菜の刺繍を入れてポプリを作ってみた。
甘く華やかな香りで私の気持ちもより楽しくなる。
「野菜の刺繍なんて、面白いけど商品としてはね...」
すっかり仲良くなった領民のライラが苦笑しながら言った。
やっぱり商品向きではないのかな?
「いいのよ。自分用だから...みんなだったらどんな刺繍を入れるの?」
もうこれも市場調査だ!どんな刺繍がいいのか聞いてみよう!
「そうねえ。私だったら花とかかな?」
「女性にはいいわね。でも男性にはどんな刺繍がいいの?やっぱり、肉?」
私は、気になって聞いてみた。
「うふふ...肉って何よ!アリシアったら。私が贈るとしたら、その人にまつわる剣や強そうな動物、紋章なんかもいいかもしれないわね。」
「そうなんだ。なるほどね。参考になるわ。」
ポプリ作りをしながらそんな話も出来た。
時間はかかったけど、その分楽しい時間だった。
領地の特産物探しなのに、商品を作り出す仲間たちとウキウキする楽しい時間を共有することができた。
そして、みんなでアイデアを出し合って決定した!
今日は、ルシアン様に商品提案をする日。
私は、自信をもってルシアン様に現物を見せながら説明する。
「今回商品化したいのはーー
ぐっすりと安眠できる”眠りのポプリ”...黄色
甘く華やかな香りの”恋のポプリ”...ピンク
落ち着いたり安心したりできる”癒しのポプリ”...青
元気ややる気が出る”活気のポプリ”...オレンジ
そして、最後にーー
”守りのポプリ”...緑
この5種類です。
それぞれ、イメージできる色も決めてみました!」
「どれも気になる提案ばかりだね。それにしても”守りのポプリ”とは何から守ってくれるんだい?もしかして、厄災を払うようなお守り的なものかな?女性はそういうの好きだからな。」
ルシアン様も納得したようにうなづいている。
「やはり気になります!?”守りのポプリ”はですね~
いや~な虫から守ってくれて、消臭効果まであるすぐれもので~す。
私も農作業の時には持ち歩いているんですよ!一番の自信作です!」
私が胸を張ってそう言うと、ルシアン様はため息をつき、うなだれてしまった。
「もういいよ。アリシア嬢の思考はみんなの上を行くからな!まるで予想できない。よし!今回はその五種類でいってみよう。」
まずは、市場の反応を見るために、商会長のルシアンがエーレンベルク家に紹介に行った。
「今日は、エーレンベルク公爵にぜひ紹介したい新商品をお持ちしました。」
ルシアンが神妙な顔で話を持ち掛ける。
「前回のジャムも好評で、次は何かと期待されすぎて困っているんだよ。今回は何だろう?楽しみだな?」
公爵はもう待ちきれないとばかりに身を乗り出して、瞳を輝かせている。
「まずはこちらをご覧ください。五種類あります。」
テーブルの上に五種類の商品を並べた。
「まあ!それぞれにきれいな色の商品が並んでいて、かわいいわ。それだけで全部ほしくなっちゃう!」
公爵夫人も両手を合わせて笑顔になっている。
「ところでこれは何だろう?今回は女性向けのような感じだね。」
公爵の興味が少し下がったように感じられた。
「この商品は、色ごとにそれぞれ違う香りがついています。まずは、それぞれの香りをお試しください。説明はその後にします。」
ルシアンは努めて冷静に話をした。
「違う香りだって?香水のような香りはしないけれどね?ん?これは、さわやかな香りだね。」
公爵は、香水の香りをイメージしていたからか、その違いに驚いている。
「あら、私のものは甘い香りよ。香水よりも優しい香りだわ。」
公爵夫人も香りには敏感に反応する。
そこで、ルシアンはポプリの説明を始める。
「これは、ハーブという香り高い植物を乾燥させ、布の袋に詰めたものでポプリと言います。これは単純に香りを楽しむだけでなく、実はいろいろな効果があります。実際に私どもも試してみました。例えば、この黄色のポプリはぐっすり眠れる効果があります。これを”眠りのポプリ”と名付けました。次に、...」
こうして、五種類のポプリの効果と名称を説明していった。
「なんと、ハーブにはそんな効果があるのか。種類によって香りも効果も違うなんて面白い!」
「本当ね。私は、最近忙しくてゆっくりしたいわ。”癒しのポプリ”なんていいかもしれないわね。」
「それを言うなら、私はいつも眠りが浅くて、ゆっくり眠れないんだ。”眠りのポプリ”はぜひ試したいね!」
「あら、うちの息子には”恋のポプリ”がぴったりね。まだ婚約者のお話も何もないもの。でも、絶対黙って渡しましょう。その方が効果がありそうだもの。」
「それはいいね。息子にもいい出会いがあればいいのだが...ポプリの効果に期待だな。」
二人は次々とポプリについての話が止まらない。
「今回の商品”ポプリ”はいかがでしたでしょうか?」
ルシアンが二人に問いかけた。
「全て試してみたいわ。ぜひ今日いただきたいわ。」
「そうだな?家族だけでなく、使用人たちにも配って、みんなで試してみようか?数はたくさんあるかい?」
早速、公爵家全員の分のポプリをお買い上げいただいた。
果たして、効果のほどは...
「はあ~~ これは、相当な数をまたすぐに準備しなければならないな...」
ルシアンは、これから押し寄せるだろう注文を思い浮かべ、嬉しそうにため息をついた。




