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1-1 グランベル家は慎ましくも温かい



「アリシア、今日のトマトは甘くておいしいぞ!朝食に食べような。」


畑仕事から帰ってきたお父様。お父様が抱えているかごには、真っ赤なトマトや緑がみずみずしいキュウリ。紫の鮮やかなナスが所狭しと並んでいる。今は、朝の六時。暑くなる前の朝の仕事を終えたお父様から野菜のかごを受け取る。


「お帰りなさい。今日は、エドワードが卵を十二個も取ってきてくれましたよ。お隣さんにもおすそ分けしようかしら... 今日は、ごちそうね。」


厨房に入って料理を手伝っているお母様。どうしてお手伝いかというと、うちには料理長がいるから... それでもお料理をするのが好きなお母様は、毎日料理長と一緒にお料理をする。もちろん私もお料理を手伝っている途中だ。



うちは、ただの農家ではない。


実は、れっきとしたグランベル伯爵家。

ーーーーつまり、貴族である。


では、どうして農家のようなことをしているのか?


それは--

貧乏だからである。


お父様は、気立てがよく働きもの。領地の発展のために、農産物がたくさん元気よく育つように日々先頭に立って頑張っている。お人よしすぎて好かれてはいるけれど、領地の収入にはつながらないのが玉に瑕。


お母様もそんなお父様や私たちのために、庭の畑の世話やお料理、おかし作りを趣味としておいしいご飯を作ってくれている。たくさん採れた野菜や卵をおすそ分けと言って周りの人が笑顔になってくれると嬉しいといつも心を配っている。


だから、私アリシアと弟のエドワードは、そんな家族の役に立つべく一生懸命お手伝いをしている。



「このトマト、本当に甘いね。すごくおいしい!」


エドワードはお父様の野菜が大好きで、いつも味の感想を一番に伝えている。


「お母様、この卵焼き。ふっくらしていておいしいです。お母様のお料理みんなおいしいです。」


私も、お母様みたいにお料理が上手になりたいと思っていつもがんばっている。


「あら。アリシアだって、このナスの炒め物。味付け上手よ。すごいわ。」


お母様に褒められて、嬉しくなった。


「エドワード、鶏の世話頑張っているな。今度父様と畑に行ってみるか?朝は早いぞ。収穫の手伝いはできるかな?」


お父様は、手塩にかけて育てた野菜を褒められてうれしくて、弟に声をかけている。


「もちろんできるよ。行きたい。明日からいい?」


エドワードも頼りにされて喜んでいる。



家族みんなで協力して生活している今に不満はない。何なら、充実していて楽しいとさえ言える。



でも、領地としたらどうだろう...?

領民の生活は?


不自由しないくらいの農地はある。でもそれだけ。農産物が採れるうちは困らない。その程度。


では、天候や不作などで採れなくなったら。そもそも売れなかったら...


私は、不安を抱えている。お父様もお母様も何も言わないけれど、どうにかしなければと思っているはずだ。


私に何ができるだろう?

私にしかできないこと...?


領地の収入を安定させて、ゆくゆくは弟にこの伯爵家を継がせたい。


私が、この領地でできることは...


私が結婚するまで?


結婚?


そうだ!!


結婚を機に、ある程度お金のある領地に入って、グランベル家を庇護してもらえないだろうか?


もちろん、お金をもらうとかそういう話ではなく。


立て直しのアイデアややり方を教えていただく。その程度でも構わない。


もし、どうしても金銭が必要とあらば、一度貸していただき、後ほど返せればよいのではないか。


そうと決まれば、私の結婚!


ーーいや、まずは婚約。



善は急げと早速、お父様に聞きに行った。


「お父様。つかぬことをお聞きしますが、私に婚約の話は来ていますか?」


私は前のめりになってお父様に聞いてみた。


「えっ! アリシアに婚約の話? まだ早いだろう?」


なんとのんびりした考えのお父様だろう。私も、さっきまでは、婚約なんて考えてもみなかったことを棚に上げ、お父様に詰め寄った。


「何を言っているんですか?私もうすぐ14歳になるんです。うかうかしているといい物件は売れてしまうんですよ!」


私は、拳を振りながら自分の考えを力説する。


「何を焦っているのかわからないけど、アリシアは婚約したいのかい?」


お父様は、私の肩に手を置いて、ゆっくりと話す。


「もちろんしたいです。なるべくお金持ちの方と!」


私は、本音が駄々漏れの答えを返してしまった。


「お金持ちかどうかは置いておいて... じゃあ、ちょっと知り合いにでもあたってみるよ。」


お父様は、そう言って、ちょっと寂しそうな顔をした。




さあ、早く婚約のお話が来ないかな?




すぐにでも来るかと期待した私の考えとは裏腹に、なかなかそのお話は来なかった...



不純な動機が周りに伝わっているのかな?


そう、頓珍漢な考えで待っているアリシアだった。



そんなアリシアもとうとう14歳。


はたして...



お読みいただき、ありがとうございます。

本日、あと一話投稿いたします。

よろしくお願いします。

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