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凄い勇者だった俺が美少女勇者をプロデュースした件  作者: 穂麦
第2部×第5章 凄い勇者と騎士学校祭
205/207

俺は騎士学校祭を迎えた 『紅茶はなるべく高級な物をお願いしますね』

お久しぶりです。

数か月ぶりの投稿になりましたm(_ _ )m

 騎士学校祭。

 生徒達は大はしゃぎ。


 祭りに浮かれてハメを外すヤツはいないが。

 それでも最近は、騎士学校祭の話題があちこちから聞こえてきた。

 また、校舎が建て替えられてから、かなり派手になったという話しもある。


 建て替えのための金を用意したのは俺なんだがな。

 誰も褒めてくれないのは悲しかった。


 だがもっとも浮かれているのは、我が友マグニールではないだろうか?


 ヤツはすでに騎士学校の全女子生徒に告白している。

 そして、こりずに2週目に入っているという猛者だ。


 その告白のペースなんだが、最近は回数が一気に跳ね上がっている。


 このペースは中々のものだ。

 今学年中に全女子生徒への告白が3週目を迎えるのも夢ではない。


 友として応援してやろう。

 告白の回数が増えるということは、比例してフられた回数も増えるという事だが。

 それは細かい話だ。


 *


 イザベラ逃亡の尻拭いで作らされた藁人形──もとい形代。

 アレを焼く事から騎士学校祭は始まる。


 騎士学校祭が始まり、目の前で形代が焼かれているのだがな。

 どっかの馬鹿が油を放りこんだらしい。

 天高くまで火柱が昇っている。


 誰だろうな?

 こんな馬鹿な事をしたのは。


 キャンプファイヤーのように組まれた木材。

 コイツに火を付けた後、形代を放りこんでいく。


 このイベントは学校の重要な行事なのだ。

 とうぜん厳重に管理がされていたハズ。


 と、なると犯人は──


 1.管理していたヤツ

 2.彼らの目をくぐり抜けられる工作員適正が高いヤツ

 3.管理しているヤツが文句を言えない権力を持っているヤツ


 犯人が誰なのだろうか?


 これはどうでもいい話なのだが。

 さっきから冷たい目を校長に向けているヤツがいる。


 一人や二人ではない。

 何人もだ。


 本当、誰が犯人なのだろうな?


 犯人は気になる。

 だが大人が真実を見ようとしないのだ。

 お子様な俺がでしゃばるわけにはいかない。


 権力バンザイだ。

 大人の汚さに付き合ってやろう。


 思考を切り替える。

 イザベラの悪行から目を逸らし、キャンプファイヤーに注目。


 よく燃えている。

 天を赤く染めるほどに。


 凄いな。


 生徒達が次々に逃げ出すほどだ。

 しかし、一部は何かに目覚めてしまったようだ。

 目覚めた彼らは、火魔法を集中的に訓練することだろう。


 明らかに異常な火加減だ。

 しかし、騎士学校祭に来ていた卒業生。

 彼らからは懐かしいなどという声が聞こえる。

 今年は”イザベラちゃんが張り切ったな”とも言っている。


 ヤツは、どれほど昔からイザベラちゃんなどと生徒に呼ばせていたのだろうか?


 *


 天に上る業火が騎士学校校舎を焼きつくす──などということはなかった。

 無事は最初のイベントは終了した。


 あまりもの火加減に犯人のバカ校長もドン引きしていた。

 だが火柱のインパクトが強すぎたのだろう。

 ヤツを咎める者はだれ一人なく、あのイベントは終了した。

 とても残念なことだ。


 さて、騎士学校祭についてだが、色々なイベントが行われる。


 武術大会なんていうのもある。

 これにはラゼルが参加表明をした。

 当然、多くの女子がヤツの応援に向かっている。

 すっかりアイドル扱いだな。


 勇者ギルドでもアイドルぶりを発揮して欲しい。

 そちら方面でも金が集められるだろうからな。


 この武術大会に俺は出ない。

 若い芽を摘むのは本意ではないからだ。

 などと建前を考えておいたが、誰も訊ねてくれずて残念無気分を味わった。


 とはいえ俺には役目がある。

 そう、和の楽園を広めるという使命が!


 だから、出店を行うことにした。

 なにを売るのかというと、たいやきだ。


 見た目にインパクトがある。

 少しの練習で誰にでも作れる(職人並だとは言わない)

 和菓子の定番食材である餡子を使っている。


 砂糖が少し高価という剣点はあるが。

 その点はケットシーが所有する魔導船の活躍である程度はなんとかできた。


 そもそも餡子であれば、作るときに色々と混ぜるからな。

 使う砂糖の量を他の菓子よりも減らせるので安価で作れる。

 それに手軽に掴んで食えるという利点もある。


 こういった理由で、たいやきを出店で出すことにした。


 もちろん企画、監修はケットシー。

 俺の出る幕などなかった。


「たいやき2個、おまちどうさまでした!」


 などと、出店で威勢のいい声を上げたのはフェル。

 彼には売り子のバイトをしてもらっている。

 学費が稼げると大喜びだった。


 本当はラゼルにやらせて、ショタ好きのお姉さま方を釣る予定だったのだがな。


 もしくは、ヤツの弟であるセレグでもお姉さまを釣る案もあった。

 だがコチラは、男の娘の魅力で変な男どもが釣れかねない。

 よって却下された。


 ちなみに作っているのは大人。

 ケットシー関連の店から連れてきた。


 俺の仕事?


 もう終わった。

 学校に屋台の申請をし、バイトを集めてそこでお仕事終了だ。

 飽きっぽいからと、それ以上の仕事はやらせてもらえなかった。


 もちろん俺に仕事を回さなかったのは、プロデューサーであるケットシー。


 長い付き合いだけあって、俺の事をよく理解ししている。

 涙が出そうなほどに。


 それにしてもよく売れるな。

 珍しい食べ物には、警戒心を抱くものだと思うのだが。

 

 たいやきは、赤字覚悟で売っているというのも大きいかもしれない。

 あくまで王都にある店の宣伝が目的。


 旗にも出張所と書いてある。


 そう、和の楽園出張所──と?


 いつの間にか、王都の店の名前が和の楽園になっていた。


 和の楽園は仮の名前だったのにな。

 まぁ、ケットシーがそう決めたのなら問題はないだろう。

 アイツら、商売に関しては鬼だからな。

 妥協などするはずがない。


 さて、他を回るか。


 *


 少し歩いた場所。

 闘技場に向かう途中の道。

 ベンチなどが並べられた休憩場所がある。


 そこで、見知った顔を発見した。


 イリアだ。

 なんか囲まれている。


 イジメ!!

 と、いうわけではない。

 むしろ反対だ。


 女子生徒達が目をキラキラさせて話しているのだ。

 対してイリアは困り顔。


 だが、女子生徒のキラキラはイリアだけに向けられているわけではない。


 隣にいるヤツに向けられている。

 イリアを成長させたような女性に。


 イリアと違って大きい方は慣れているようだ。

 自分よりも遥かに年下の女子生徒に笑顔を向けて受け答えしている。

 そして女子生徒達は頬を赤らめて──。


 憧れだよな?

 男女のアレを向けているわけじゃないよな?


 ウチの学校って変なのが多い。

 だから、あの齢で扉を開けている可能性もあるのだが。

 大丈夫だよな?


 ──考えるのはやめておこう。


 視線を大きいイリアに向ける。

 俺は何も気づかなかった。

 何も考えなかった。


 うん。

 まるでイリアを少し成長させたかのような女性。

 いや、女性よりもは若いが少女かと呼ぶにはギリギリか。


 年齢としては、20歳にはいっていない。

 たぶん18か19歳くらいか。

 少し自信がない。


 それはともかくとして、少し前に見たことある気がするな。

 あの大きなイリア。


 他人にしては似過ぎている。


 イリアの兄弟に女子は彼女1人のみ。

 残りは男子。


 だからあの大きなイリアは姉ではないハズ。

 それともまさか──。


 そう言えばイリアにはあの年齢の兄がいたような。

 となると、やはり──。


 複雑な事情があるのだな。

 触れないでおいてやろう。


 少々の疑念を残したまま、この場を去ることにした。


 俺は何も気付かなかった。

 何も考えなかった。

 それでいい。


 *


 闘技場についたが、すでに闘技大会は始まっていた。

 ラゼルはというと──順当に勝ち上がっているな。


 次は上級生とか。


 おっ、俺に気付いて片手を上げた。

 こっちも軽く手を上げて返す。


 すると、なぜか女子生徒達から黄色い悲鳴が上がった。


 ふっ。

 最近気付いたんだ。

 俺って、けっこうモテているって。


 父さん(剣聖)と母さん(大魔導師)の影響もあり、一部で注目されていた。

 そうケットシーから聞いた。


 最近になって、ようやく教えてくれたんだが。


 当然、なぜこれまで言わなかったのか聞いてみた。

 そうしたら『挙動不審になりそうでしたから』と答えられた。

 反論できないじゃないか!


 別に子どもに好かれても、恋愛云々にはならんだろう。

 だが10年ほど経ってから、学校生活を振り返ったとき違うのだ。

 子どもとは言え異性に好かれたかどうかで思い出の輝きが。


 スバルとしての思い出は────真っ赤だな。

 勇者活動が中心の血塗られた青春しか思い浮かばない。


 いや、これ以上は前世を思い出すのはやめよう。

 嫌な事しか思い出せない。

 話を戻そう。

 

 父さんと母さんの影響もあり、一部で注目されていた俺。

 それがマルヴィンとの決闘騒ぎで、一気に全校生徒に知られるようになった。

 親のネームバリューに、俺の美貌が加わり一気に人気が高まったらしい。


 青春だな。


 でもな。

 ラゼルとこういうやり取りをすると、必ずヒソヒソ話し合う女子がいるんだ。


「やっぱり」「お二人って」「いつも一緒だし」


 最近、どう見られているか分かってきたんだ。

 だから彼女達の言葉の意味も理解できてしまう。

 ラゼルのヤツは全く気付いていないようだが。


 これだけでもツライ。

 だが、どうしても我慢ならない事がある。


「イザベラちゃん可哀そう」「遊び?」「三角関係?」


 なぜか、イザベラのヤツと人生の汚点となる関係であると思われている。


 屈辱以外のなにものでもない。

 わずか11歳で、これ程の汚点を抱えることになるとは。


 何がいけなかったのだろう?

 振り返ってみる。


 1.校長室に行くことが多い。

 2.ヤツに頼まれ事をされることが多い。

 3.なぜか夏休みに一緒にいたと知られている。


 思い当たる節が盛りだくさんだった。

 俺の日頃の行い──いや、イザベラの行いが悪すぎるのがいけないのだ。

 きっと、俺のせいではないハズだ。

 そうに違いない。


 ラゼルに関してもイザベラに関しても、語るのは一部でしかない。

 だがキツい。


 というか、ヒソヒソ話している女子ども。

 お前ら俺と同じ11歳や12歳ばかりだよな。

 その話を聞いたら親が泣くぞ。


 なお、親もその話で盛り上がっている可能性は無いものとする。


 *


 思わぬ人生の汚点に絶望しかけながらも、なんとか闘技場を脱出できた。


 その足で再びたいやき屋の前を通りかかると、人生の汚点がいた。


 頑張っても地球でいう所の中1程度の外見のイザベラ。

 その小さな体にまん丸に膨れ上がった革袋を抱えているもだが。

 それを店員のフェル達がなんとも言えない顔で眺めている。


 たいやきを買い込みやがったか。

 ”毎度あり”とだけ言っておこう。

 心の中でだけな。


 なんか口に出すのは悔しいから、絶対に言ってやらない。


 どうでもいい話か。

 ロリババアに見つかる前に、この場を退散することにする。


 向かう先は校舎内。


 校舎といってもいくつもあるのだが。

 目的の場所は生徒達の自由研究をまとめた教室。

 でも本当は、貴族達の自慢話をまとめた資料がの処理場。


 各地域の貴族が、自分の領地に住む生徒に持たせた物をココに封印したらしい。


 騎士学校には貴族達が干渉できない。

 ロリババア校長が、その点はきっちりやっている。

 イザベラのクセにな。


 だが、なんとか貴族達は騎士学校に干渉しようと知恵を絞った。

 その結果、子ども達の学校外での活動を通して色々な事をするようになった。

 と、イザベラが愚痴っていた。


 貴族達もよく考えるものだ。

 ケットシーの尖兵と化している俺が言うのもなんだが。


 ──ボスとかじゃないよな?


 一瞬、ケットシーに崇められる自分が脳裏をよぎったがそれは錯覚だと信じたい。


 ところで、なぜ貴族達の自慢話を集めた教室に行くのか?

 それは誰もいないと予想できるからだ。


 貴族の自慢話など、興味を持つヤツは少ない。

 だからよい休憩場所になるのだ。


 他に同じ考えのヤツがいなければだがな。


 *


 ふむ、正解だったようだ。

 やはり、貴族の自慢話に興味を持つヤツなどいなかった。


 それにしても混沌としている。

 貴族が自慢話のために色々と生徒に持たせたのだろう。

 紙にまとめた資料だけでなく、変な物が色々と置かれている。


 持ち込みの最中、奇異の目を向けられたであろう生徒の姿がしのばれる。

 ご愁傷さまだな。


 憐憫れんびんの情を向け、再び周りに目を向ける。


 変な模様の絵があったり。

 奇妙な服があったり。

 妙なオーラを放つ剣──呪われているよな、アレ。


 少し確認してみる。

 どうやらチョットだけ気持ちよくなって笑いだすだけの呪いのようだ。

 放置しても大丈夫──かな?


 とりあえず放置だ。


 さすがにヤバイのはイザベラが持ち込ませることはしないだろう。

 腐り切っても大魔導師なのだ。

 その辺は信頼している。


 アイテムBOXから椅子を2つ取り出す。


 3階のこの場所は丁度いい。

 外に声が漏れても聞き耳を立てているヤツはいない。

 それに貴族のつまらない頑張りのおかげで、全く魅力の無い領域と化している。


 招かざる客だが、内緒話をするにはちょうどいい。


「なにかご用ですか?」


 開け広げたドアの横。

 壁に身を潜める男に声をかけた。


「少しアナタとお話をしようと思いましてね、クレス君」


 出てきたのは糸目の男。

 黒い髪を後ろで縛り、赤茶色のコートを着ている紳士風の落ち着いた男。


 本心を隠すつもりもないだろうに。

 偽りの雰囲気を纏い続ける様子に少しイラッとする。


「冒険者ギルドのグランドマスターであるカリス様に名前を覚えて頂き光栄です」


 コイツは、もう確信していることだろう。


「ですが本当にお話をしたいのは11歳の子供でしょうか? それとも昔の知り合いでしょうか?」


 シルヴィアを通じて2枚目の冒険者カードを融通させた時点で。

 俺の存在を可能性程度には感じていたハズ。

 あれから月日が経った今では──。

 

「ふふ、そうですね。アナタとお話しするのも面白そうですが、今日は昔馴染みと話しをさせて頂けますか?」


 一瞬だけ、目の奥にコチラを観察するかのような意図を感じた。

 だがカリスの口から出たのは、昔を懐かしむような優しげな口調の声であった。


「せっかくお前の分も椅子を用意したんだ。座ったらどうだ?」

「ええ、ありがとうございます」


 優しげな口調。

 しかし、それは口調だけ。

 今も悟らせずにコチラの観察は続けている。

 それがカリスという男だ。


「紅茶はなるべく高級な物をお願いしますね。スバル」


 これで5人目になるのか。

 130年前の俺を知るヤツとの邂逅は──。


 それにしても、ロクでもないヤツばかり長生きするものだな。

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