婚約破棄
ロバートとロバートの両親は、ロザリンドからの手紙を受け取った。
「ロバートこれはどういう事だ」
「ここに書いてある事は事実なの?」
「確かに事実ですが、事実と違う事もあります」
「一体どういう事なのだ!説明しなさい」
「確かにエブリン嬢を誘って芝居見物と食事は認めますが、それはあくまでも友人としてです」
「でも可哀想にロザリンドの耳に入っているのよ!」
申し訳ない事に母の血圧が上がったようだ。
「だからといって事実も確認しないまま婚約破棄を突き付けてきますか?しかも手紙で」
「それもそうだ、まず事実か確認して話し合うのが普通ではないか」
「それもそうですわね、ロバートの性格は分かっているでしょうから、どういう事か聞いてくれれば誤解は解けますのに」
「それにあちらのご両親がこの事をご存知かどうかも分かりません。彼女の独断かもしれませんし……」
「そのような事をして彼女に何の得があると言うのだ」
「彼女の気持ちは分かりません、ですが早急に婚約を破棄したい理由が出来たのではないでしょうか」
「何か心当たりがあるのか?」
「はい、サンチェス家には今公爵閣下が逗留中です。私の約束を無視するようになったのもここ最近なのです。無関係だとは思えません!」
「……」
「どちらにしても話し合いは必要です。手紙だけで、はいそうですかではすみませんから」
「そうだな、あちらにお邪魔しようではないか」
「それにエブリン嬢の事もあります、彼女に不名誉な噂を立てて貰いたくはありません」
「分かった」
「それとあちらを訪ねる前に見ていただきたい資料が有ります」
そう言って調査報告書を差し出す。
「エマを呼んできてもらえるか」
両親が報告書に目を通している内にメイドに頼む。
「これは事実なの?」
まず母が驚きの声を上げる。
「実は今回の事とは別に調べていたのです。日付を見てもらえれば分かると思いますが」
その内エマがやって来た。
「エマ、済まないが調べる事になった経緯を話して貰えるか」
「分かりました、実は……」
そうしてエマの説明により調査の経緯を分かって貰い今日にでもサンチェス家を訪ねる旨の先触を出してもらう。
「これだけは聞いておきたい。ロバート、この婚約をどうしたい?」
「彼女とは上手くやって行くことはできない気がします。破棄を希望します」
「そうか、気持ちは固いのだな。分かった」
そうしてその日の午後にはサンチェス家を訪ねる事となった。
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「では双方破棄という事で宜しいですかな?」
ここはサンチェス家の応接室。
念の為に同席して貰った弁護士が聞く。
「はい、サンチェス家は同意致します」
娘を思って胸が苦しいのか、サンチェス伯爵は胸を押さえて答えた。
「はい、コールマン家も確かに同意致します」
「ではこの条件で婚約は破棄されました。それではこちらにサインを」
取り急ぎ弁護士に同席を頼み、条件もその場で取り決めて文章を作成、サインして無事に婚約が破棄された。
条件といってもロバート側からはエブリン嬢に今回の事で慰謝料を請求しない、不名誉な噂を広めない、責めないと言う事のみ。
サンチェス家からは婚約破棄では無く、対外的には双方同意の円満解消とする。慰謝料は無いが婚約指輪等の返還を求めない、という事で決まった。
慰謝料はロバートとしては払っても良かったが弁護士から後々、有責の証拠になるから出来れば払わない方が良いと言われたので、指輪等の高額プレゼントの返却を求めない事で手打ちとなった。
グズグズ揉めるのを意外にもロザリンドが嫌がったので、これで関係終了となった。
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「それではこれで。今までありがとうございました。是非ロザリンド様には幸せになって頂きたいですな」
何か言いたげではあるものの口をつぐんで憔悴した両親を尻目に、ロザリンドはご機嫌だった。
「ロバート様どうかお幸せに」
「あぁ。君もお元気で」
そう言って馬車に乗り込もうとすると、庭の小路からセシリアは顔を出した。
「ロバート様、こんな事になって御免なさい」
「君のせいでは無いよ。縁が無かっただけだから」
「そう言って貰えると……お元気で」
「あぁ、君も」
ロバート達はそう言ってサンチェス家を後にした。
ロバートは長年婚約者だったのでロザリンドに対して何か気持ちが湧くかと思ったが、却って清々しく彼女を全く愛していなかった事に気が付いた。
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まだヒーローが登場していないのですがもう暫くお待ちくださいね!
主人公も暫くお留守、うーむ脇役書くの楽しくてつい⋯⋯∑(゜Д゜)




