表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巡礼者の道  作者: 잿빛서기관


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/55

意味①

宿へ戻る道。


司祭は口を固く閉ざしたまま、


何も言わなかった。


司教と会って部屋を出てから、


ずっとそうだった。


エリオンは下手に声をかけることもできず、


静かにその後ろを歩いていた。


やがて、


エリオンがふと足を止めた。


「そうだ」


司祭も足を止め、


振り返った。


「どうした」


エリオンは気まずそうに頭を掻いた。


「豚串です」


司祭が目を瞬かせた。


「豚串?」


「その……


トリーが帰りに買ってきてほしいって言っていたので」


司祭はしばらくエリオンを見つめてから、


小さく笑った。


「そんなことまで頼むのか」


そう言って、


懐から財布を取り出した。


中を少し確認すると、


小さく鼻を鳴らして、


またしまい込んだ。


「まあいい。


せっかくだ、買って帰るとしよう」


エリオンはためらいがちに口を開いた。


「でも……


大丈夫でしょうか」


「何がだ」


エリオンは慎重に言った。


「お金です。


司教様が十分に送ってくださるかどうか……」


司祭は呆れたように笑った。


「あの方は、


そこまでけちな方ではない。


そんな心配はせず、


さっさと買って帰ろう」


そう言って、


背を向けた。


「疲れた」


少し前まで固く沈んでいた空気が、


少しだけ和らいだようだった。


エリオンは小さく笑いながら、


その後ろに続いた。


そうして、


市場の方へ足を向けた。


市場へ向かう途中。


エリオンは困ったことになっていた。


化粧の濃い女たちに囲まれ、


どうしていいか分からずにいた。


司祭は……


少し離れたところで、


その光景を眺めていた。


「この前見かけたお兄さんじゃない?


ねえ、私といいところ行かない?」


エリオンは困った顔で、


その女を見た。


通りすがりに見かけた女だった。


田舎者をからかうように、


ウインクを投げて通り過ぎていった女。


隣の別の女が、


くすくす笑いながら身を寄せてきた。


「反応がちょっと可愛いねー。


どう?


サービスしてあげるから」


エリオンは顔を真っ赤にしたまま、


ぎゅっと目を閉じ、


どうにか振りほどいた。


「す、すみません!


恋人がいます!」


女たちは残念そうな顔をして、


くすくす笑った。


そして離れながら手を振った。


「分かったわー。


じゃあね、お兄さん」


「気が変わったら来てねー」


そうして彼女たちが離れていくと、


通りすがりの人々がエリオンを見て、


小さく笑った。


司祭も……


その輪に加わるように笑いながら近づいてきた。


「なかなか人気があるな」


エリオンは深くうつむいた。


「ここの人たちは……


開放的すぎます……」


司祭は小さく笑い、


エリオンの背を軽く叩いて先に歩き出した。


「用が済んだなら行こう」


司祭はまた笑いながら続けた。


「おかげで面白いものが見られた」


エリオンは呻き声を漏らし、


すぐに司祭の後を追った。


レアと来た時は、


まともに見て回ることができなかった。


だが今見ると、


本当に多くの品が売られていた。


食べ物や生活用品だけではない。


初めて見る菓子や、


玩具まで並んでいた。


その玩具の中には……


以前、行商人が見せてくれたものもあった。


ぜんまい仕掛けの鳥と、


銀の鈴。


エリオンは興味深そうに眺めながら言った。


「見たことがあるものですね。


あの人も、


ここで仕入れていたのでしょうか?」


司祭が言った。


「さあな……


別の土地から流れてくることも多い。


断言はできないだろう」


エリオンは頷いた。


「そうですね」


それから、


周囲を見回した。


蜂蜜菓子。


林檎の揚げ菓子。


ワッフル。


話にだけ聞いたことのあるものが並んでいた。


「ああいうものも買って帰ったら……


ベルは喜ぶでしょうか?」


そう言って、


何となく首の後ろを触った。


「少し高いでしょうか……」


その言葉に、


司祭は小さく笑って言った。


「いくつかくらいなら買って帰れるだろう」


それから少し間を置いた。


「一緒にいられる日も、


そう長くは残っていない。


少し贅沢をしよう」


そう言って、


屋台の方へ近づいた。


彼が菓子を選んで包んでもらっていると……


誰かがエリオンの肩に手を置いた。


エリオンはびくりとして振り返った。


見覚えのある男がいた。


……誰だっただろう。


その男がかすかに笑った。


「お元気でしたか」


……


その時になって、


ようやく思い出した。


道で助けた病人だった。


戸惑い。


安堵。


そして暗い影。


複雑な表情が、


一瞬のうちに通り過ぎた。


エリオンは苦労して口を開いた。


「生きて……


いらしたんですね」


病人はかすかに笑って言った。


「あなたのおかげです」


それから深く頭を下げて言った。


「本当に……


おかげで助かりました」


そうして身体を起こし、


エリオンを見た。


エリオンの表情が暗いことに気づくと……


彼は視線を伏せた。


しばらくの沈黙。


もじもじしていた彼が、


慎重に口を開いた。


「……私のせいで、


大変な思いをされたのでしょう」


エリオンは答えなかった。


ようやく塞がりかけた傷を、


また掻き返されたような気がした。


病人はためらってから、


ようやく言葉を続けた。


「長くそばにいても、


空気を悪くするだけでしょうから……」


そう言って、


懐から何かを取り出した。


金袋だった。


「こんな形でお会いするとは思っておらず、


多くは用意できませんでした。


せめてこれだけでも、


受け取ってください」


エリオンは金袋を見つめてから、


小さく首を横に振った。


「こういうものを望んで、


したことではありません」


病人も首を横に振り、


袋を差し出した。


「これだけでもお渡ししなければ、


私の気が済みません」


そう言うと、


半ば無理やり握らせ、


距離を取った。


そしてもう一度、


深く頭を下げて礼をした。


「改めて、


ありがとうございました。


いつか……


いつか、この恩を返せる日が来ることを願っています」


そうして身体を起こすと、


静かに離れていった。


エリオンはぼんやりと彼を見送った。


それから……


手の中の金袋を見下ろした。


遠くから見守っていた司祭が、


近づいてきて声をかけた。


「あの時の……


あの人だったようだな」


エリオンはようやく口を開いた。


「そう……


みたいですね」


しばらく目を閉じて考えた後、


苦しそうに笑って言った。


「早く、


豚串を買って帰りましょう」


エリオンは小さくため息をついた。


「急に……


すごく疲れました」


そう言って、


ぼんやりと歩き出した。


司祭はため息をつき、


静かに後を追った。


エリオンはとぼとぼと歩き、


串を売っている屋台の前で足を止めた。


自然に注文しようとして……


ふと、


レアのことを思い出した。


レアは……


どう注文していただろう。


ラヘンでのことを思い返して、


小さく笑ってしまった。


そうだったな……


エリオンは串を指差して言った。


「豚串を五本ください」


そう言いながら、


懐の袋に手を触れた。


主人が並べてある串を包もうとすると、


エリオンはそれを止めて言った。


「焼いてあるものじゃなくて……


新しく焼いてください」


それから、


にっと笑って言った。


「その方が……


ずっとおいしいでしょう?」


体調が悪くて遅くなりました。申し訳ありません。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ