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巡礼者の道  作者: 잿빛서기관


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楽園

第一話 楽園


【神は誠実なる者を愛される。


正しき者を愛される。


善き者を愛される。


神は汝らのために天国への道を開かれる。


その地で汝らは慰められ、


満たされ、


そして愛されるだろう。】


ロイロス神聖王国の海辺に、小さな村があった。


エメラルド色の海は陽光を浴びて輝き、


潮風は穏やかな波を運ぶ。


空にはカモメの鳴き声が響いていた。


朝になれば、


働き者の男たちは小舟で海へ出る。


そして夕暮れには――


大漁の魚を抱えて帰ってくる。


港には人々が集まり、


子供たちは母親の手を振りほどいて駆け出した。


帰ってきた父親の胸へ飛び込む子もいる。


それを見守る村人たちは、


どこか幸せそうに微笑んでいた。


商人たちの威勢のいい声。


漁師たちの豪快な笑い声。


子供たちの元気なはしゃぎ声。


様々な声が混ざり合い、


村は今日も賑やかだった。


やがて日が傾く。


鐘が鳴った。


礼拝の始まりを告げる鐘だ。


人々は自然と教会へ集まり、


同じ場所に座り、


同じ祈りを捧げる。


説教。


聖歌。


そして――


「エリオン。礼拝のあと、少し時間ある?」


耳元で囁くような声。


エリオンは目を開き、


隣をちらりと見た。


赤い髪。


そばかす。


そして、


眩しいくらいの笑顔。


サラだった。


「大丈夫だよ」


エリオンは小さく笑う。


「どうしたんだ?」


サラは答えない。


ただ微笑んだまま前を向いた。


足を小さく揺らしている。


見ているだけで、


機嫌がいいのが分かった。


エリオンは少しだけ彼女を見つめ、


再び目を閉じる。


そうして祈りを続けた。


礼拝が終わった。


人々と挨拶を交わしながら、


エリオンはサラと並んで歩く。


サラは鼻歌を歌いながら、


軽やかな足取りで先を進んだ。


その背中を見ているうちに、


エリオンは思わず笑ってしまう。


サラが振り返った。


「なによ、その顔」


「子供を見るみたいに笑ってるじゃない」


エリオンは少し考えた。


それから正直に答える。


「いや……」


「可愛いなって思って」


サラの目が大きく開かれる。


頬がみるみる赤くなった。


「いきなり何言ってるのよ……」


顔を背ける。


けれど、


少ししてまたエリオンを見上げた。


そして照れたように笑う。


「まあ……嬉しいけど」


その後も彼女は落ち着かない様子で、


何度も指先をいじっていた。


気づけば、


サラの家の前まで来ていた。


「それで?」


「何の用だったんだ?」


エリオンが尋ねる。


サラは口を開いた。


「その……」


「明日、旅に出るでしょ……」


声がどんどん小さくなる。


「え?」


するとサラは突然顔を上げた。


「ちょっと待ってて!」


そう言うなり家の中へ飛び込んでいく。


しばらくして、


勢いよく扉が開いた。


サラが何かを抱えて飛び出してくる。


「明日、巡礼の旅に出るじゃない!」


最初は勢いよく言ったものの、


最後は小さな声になった。


「その……」


「手ぶらで送り出すのも変だし……」


「ただ……渡したくて……」


エリオンは笑って受け取る。


太陽の紋章が彫られた木製の首飾りだった。


「これ、サラが作ったのか?」


サラは答えない。


だが、


傷だらけの手を見れば分かる。


「ありがとう」


「大切にするよ」


そう言うと、


サラは黙って近づいてきた。


首飾りを受け取り、


自分の手で彼の首に掛ける。


そして――


そのまま抱きついた。


温かい。


草の匂いがした。


しばらくして、


サラは真っ赤な顔で離れる。


「無事でいてほしくて作ったの」


「太陽神が守ってくれるようにって……」


「それに……」


言葉が途切れる。


そして、


消え入りそうな声で続けた。


「あなたに……私のこと……忘れてほしくなくて……」


エリオンは彼女を見つめた。


サラは視線を合わせられない。


「サラ」


「俺のこと、好きなんだろ?」


肩がぴくりと震える。


エリオンは優しく笑った。


「俺もだ」


そして――


そっと抱きしめる。


「帰ってきたら」


「その時はちゃんと始めよう」


「恋もして」


「結婚もして」


「騒がしく生きていこう」


サラは彼の胸に顔を埋めたまま、


小さく笑った。


「気が早すぎるわよ……」


それでも離れようとはしない。


「無茶して怪我なんてしないでね……」


「待ってる人がいるんだから」


エリオンは答える代わりに、


そっと彼女へ口づけた。


温かく、


静かな口づけだった。


空には宝石のような星々が輝いていた。


その夜。


エリオンは首に掛かった太陽の首飾りを、


いつまでも指先で弄っていた。


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