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第88話

 四柱帝ウリエルの軍勢にナジューラの街を包囲されたアルディア達。

 ウリエルの軍勢に対抗するため、アリババはシャフリヤールに出兵依頼を頼むことを考える。

 そして、シャフリヤールの館に向かい、シャフリヤールに依頼をするも、事情を聞いたシャフリヤールは自身の館を警護するよう、兵に指示。

 その後、改めてシャフリヤールに出兵依頼を出すアリババ。しかしながら、シャフリヤールは理屈を並べ出兵を拒んだ。

 そのやりとりにしびれを切らしたモルジアナが、シャフリヤールの協力を断念し自分たちで戦う旨を発言。一同は、シャフリヤールの館を後にしたのであった。


 ――――ナジューラの街

「くそー。予想はしていたけど、やっぱりシャフリヤールからの協力は得られなかったかぁ……」

 ナジューラの街中を早歩きで歩くアリババは、がっくりと頭を落としながらそう言う。

「仕方ない。っていうか元々、あいつには期待していない」

 アリババの横を同じ速度で歩くモルジアナが、アリババを慰める言葉を、淡々とかける。

「それにしても、わかりやすく保身的な方だったねぇ、シャフリヤールさん」

 エスメラルダは館でのやりとりを思い出し、苦笑いを浮かべながらそう言う。

「尤もらしい理屈を並べて断る辺り、それなりに腕の立つ豪商なのだろうがな」

 ザフィーアはふっ、と鼻で笑いながら、そう言う。

「ほんと、嫌な奴だったよね!」

 ルービィはそう言うとムスッとした表情を浮かべる。

 そしてアルディアはというと、

「あっ……」

 と小さく声を漏らす。

 そして、かつてカスティードにてマリーが口にした言葉を思い出した。

『貴族の皆、ここ(カスティード)の人たちみたいだと思わない方がいいと思うよ』

「(あの時の、マリーの言葉……)」

「アル?」

 小さく言葉を漏らした後、考え込むアルディアを見たルービィは、そう尋ねるとアルディアの顔を覗き込む。

「え? ルーちゃん?」

 突然顔を覗き込むルービィに、驚いた様子を見せるアルディア。

 そして、

「えっと、ごめん。ちょっと考え事をしてて……」

 と、ルービィに答えた。

「そっか」

 アルディアは考え事をしていたと答えると、ルービィはあっさりとそう返した。

 そんなルービィの反応を見たモルジアナは、

「気にならないの?」

 とルービィに尋ねる。

「うん」

 ルービィは二つ返事でモルジアナに返す。

 そして続けて

「ま、アルが特に何も話さないなら、あたしから無理矢理聞かなくてもいいかな、って」

 と笑顔でモルジアナに答えた。

「そう、優しいのね、貴女」

 モルジアナは柔らかい笑みを浮かべ、ルービィに語る。

「そうかな? よくわからないけど」

 ルービィは首を傾げながらモルジアナに答える。

 そんなルービィに、モルジアナは再び笑みを浮かべると、

「ま、貴女らしくて、いい」

 とルービィにそう言った。


 ――――ナジューラの街・南部区域

 シャフリヤールの館から、商業区である南部区域へ移動したアルディア達。

 アリババ達に続き、アルディア達は商人達の寄り合いの建物へと移動した。


 ――――商人連合の寄り合い場所

「悪い、皆!」

 アリババはそう言いながら扉を開け、寄り合いの建物内へと入る。

 アリババに続き、アルディア達も建物の中へと入っていった。

 建物内に入ると、そこにはそこそこの人数の人族、魔族が、各々用意した装備で武装をして集まっていた。

 集まっている者たちは種族、性別こそ異なれど、年齢は大凡10代~30代くらいの若年層が多く見受けられる。

「アリババさん!」

「待ってたよ!」

 集まった者達はアリババがやって来ると、口々にそう言う。

 そんな一同に、アリババは

「皆、集まってくれてありがとう!」

 と頭を下げた。

 そして頭を上げ、再び集まった者達の方を見ると、

「皆にも伝わっていると思うが、今朝、ナジューラの街を沢山のクリーチャーが囲っている」

 と説明をする。

 そして、アルディア達の方を向くと、

「この方達が言うには、どうやらそのクリーチャーの軍勢は、四柱帝のクリーチャーらしい」

 と説明をした。

「四柱帝だって!?」

「あの聖都の教皇が召喚した、化物だろ? 実在したのか」

「っていうか何で今頃……」

 アリババの説明を聞いた一同は、四柱帝という言葉を聞くとざわつきはじめる。

 その様子から、今回の相手が想定していた相手よりも遙かに強大である事を知り、動揺が隠せないようであった。

 だが、そんな中、ある一名が、アリババに尋ねる。

「ところで、その方達は?」

「ああ、この方達か?」

 アリババはその問いかけに、改めてアルディア達の方を向く。

 そして、

「この方達は、各大陸で四柱帝と戦ってきた方だ」

 と、集まった者達へ紹介をした。

「「四柱帝と戦ってきただと!?」」

 アリババの紹介を聞き、再び驚いた様子を見せる一同。

 だが、アリババはそんな一同に対し、更に説明を続けた。

「今回、ナジューラの街を囲っているクリーチャーが四柱帝のものだと判断できたのも、この方達の経験からだ。だが、安心してくれ。こっちも四柱帝と戦った方達がついている」

 そして一同にそう説明を終えると、アルディア達の方を振り向き、

「な?」

 と、笑顔を浮かべた。

 そんなアリババの反応に、ルービィ、エスメラルダ、ザフィーア、アルディアは

「もっちろん!」

「乗りかかった船だしね」

「元々、四柱帝と戦う為に来たわけだしな」

「頑張るよ」

 と各々返した。

「本当、悪いな」

 アリババはそう言うと、アルディア達に頭を下げる。

 そしてまたしても集まった者達の方を向くと、

「とはいえあの数。本当ならこっちももっと数が欲しかったのだが……、悪い皆。先ほど、シャフリヤールに頼んだのだが、断られた!」

 と言うと、再び頭を下げる。

 だが、そのアリババの言葉を聞いた一同は、

「謝る必要なんかねぇよ、アリババさん」

「シャフリヤールなんざ最初から期待できないしね」

「特に、モルジアナさん娶ったアリババさんの頼みなんか、ねぇ」

 と笑いながらそう言葉を返した。

「お前達……」

 集まった一同から返ってきた言葉を聞いたアリババは、そう呟きながら顔を上げる。

 だが、一同はそんなアリババに気に留めることなく、更に話を続けていた。

「そもそもシャフリヤールの奴。昔からモルジアナさんにお熱だったしな」

「舞台でも相当貢いでいたみたいだったしね」

「まぁモルジアナさん、昔から舞台のトップダンサーだったもんなぁ」

「そんなモルジアナさんを嫁にされちゃあ、シャフリヤールも腹立てるよなぁ」

「羨ましいよなぁ。……何か俺も腹立ってきたな」

「「やっぱアリババさんが悪い!」」

 雲行きの怪しくなった会話が続いた後、指を指されるアリババ。

 アリババは思わず

「何でだよ!!」

 と一同にツッコミを入れた。

 そして一同を前にモルジアナに抱きつくと、

「いいか。シャフリヤールが、お前らが何と言おうと、モルは俺の嫁なんだよ。諦めろ!」

 と、一同を挑発するかのようにそう言うのであった。

 そんなアリババの反応にブーイングが起こる寄り合い場内。そしてモルジアナも、

「暑苦しい。離れろ、猿」

 と、アリババを突き放すように強くアリババの顔を手で押すのであった。

 すると、そんなやりとりの横から

「あの~、それよりも、現在の状況教えてくれない?」

 話の流れを変えるかのようにそう尋ねるのは、エスメラルダであった。

 エスメラルダがそう言うと、アリババは

「ああ、そうだったな」

 と言うと、モルジアナから離れる。

 そしてこの寄り合いの場に顔を出していた見張りに、

「悪い、街の周りの状況を改めて説明してくれるか?」

 と、説明の依頼をした。

 アリババからの依頼を受けた見張りは、

「はいっ!」

 と返事をすると一歩前に出る。

 そして一同へ、今朝確認をした状況の説明を始めた。

「今朝、南部区域からの見張り台から確認をしたところ、この街を囲うように無数のクリーチャーと、そしてそのクリーチャー軍の一歩後方に土色の肌をした大柄な男が立っていました」

「土色の肌の男……。じゃあそいつが四柱帝か?」

 見張りの説明を聞くと、アリババは見張りにそう尋ね返す。

 だが、見張りは

「いえ、それはわかりません」

 とアリババに返す。

 更に続けて、

「ミニオンでの報告ですが、どうやら北部区域側の見張り台からも、同様に無数のクリーチャー、その一歩後方に赤色の肌の大柄な男、更にその側には木製のチャリオットに乗った少女の姿が確認されたとの事です」

「チャリオットに乗った少女だって!?」

 見張りの報告を聞いたアリババは、驚いた様子で思わず聞き返す。

 だが、見張りの話をアリババの横で聞いていたエスメラルダとザフィーアは、

「ねぇ、もしかして……」

「ああ。四柱帝かはわからないが、少なくとも北部にいるのが、この軍のボスだろうな」

 と、冷静に状況を分析した。

 そのやりとりを聞いていたアリババは、

「あんたらがそう言うなら、親玉がいるのは北部か……」

 と顎に指を当て、呟く。

 そして、

「皆も知っていると思うが、外から来た方の為にも改めて説明をする」

 と言うと、ナジューラの街の地図を机の上に広げた。

「このナジューラは、南北の出入り口を除き、石の塀で囲まれている。だから、迎え撃つためには南北の2部隊に分かれることになる」

 机の上に広げた地図を指差しながら、説明を行うアリババ。

「さっきの話だと、北部がどうやらボスっぽい奴がいるとの事だった。だが、南部も南部で幹部級の奴がいるみたいだし、北部側にだけ戦力を割くわけにもいかなさそうだな」

「なら、私たちも二手に分かれた方が良さそうだな」

 アリババの説明を聞いたザフィーアが、アルディア達の方を向き、そう提案をする。

「そうだね」

 ザフィーアの提案に、エスメラルダは首を縦に振り、そう答えた。

 エスメラルダがそう答えると、ザフィーアは、今度はアルディアの方を向く。そして、

「北部だが……。敵の配置的にアル、君に頼んで良いか?」

 とアルディアに尋ねる。

「え! 私!?」

 アルディアは驚きながら自分を指差し、ザフィーアに答える。

「ああ。敵のボスと思われる相手は北部側に居るのだろう? 未確定だが、そいつは四柱帝かもしれない。そうなるとアル、君が必要だろう」

「そっか……、わかった」

 ザフィーアの言葉に、アルディアはそう言うと、首を縦に振った。

 そしてアルディアがそう言うと、

「じゃあ僕も、アルと一緒に北部へ向かうよ」

 と名乗りを上げたのはエスメラルダであった。

「エスメ。悪いな、じゃあ北部を頼む」

「任せて!」

 エスメラルダはザフィーアにそう返すと、右手の親指を立てた。

 ザフィーアはそんなエスメラルダの反応を見ると、フッと優しく微笑む。そして今度はルービィの方を向くと、

「では私とルーは、南部の方から出撃しよう」

 とルービィに言った。

「おっけー!」

 ザフィーアの言葉に、ルービィは右手の親指と人差し指で丸を作る。

 その反応を見たザフィーアは、次はアリババの方を向くと、

「我々はアルディアとエスメラルダが北部、ルービィと私が南部から出撃しようと思う」

 と報告をする。

 アリババは、

「そっか。わかった」

 と返事をした。

 そして、

「じゃあ道案内も兼ねて、俺も北部へ行くか」

 と言うと、アルディアとエスメラルダの方を向く。

 そんなアリババの反応を見たモルジアナは、

「じゃあ私は、南部から出る」

 と言うと、ザフィーアとルービィの方を向いた。

「さて、じゃあ後は他のメンバーの出撃配分だけど……」

「モルジアナさんが南部から出るなら、私たちも南部から出ます」

 アリババはメンバー配分について話をしようとした、その話を遮るように入ってきたのは、モルジアナ同様、口元にレースをつけた女性達であった。

「お前達は確か……モルの」

「はい、モルジアナさんと同じ、昼間はナジューラの警護、夜は舞台のダンサーをやっている、舞踏家(ぶとうか)部隊です!」

「モルジアナさんが出られるなら、私たちも共に戦います」

「モルジアナさん、よろしくお願いします!」

 舞踏家達がそう言うと、一言

「わかった」

 と返すモルジアナ。

 そんなやりとりを見たアリババは、

「じゃあ南部はモルと舞踏家達で良いとして、そうなると商人連合の青年部は……」

 と話を切り出し、集まった商人達の方を向く。

 だが、商人達はというと

「モルジアナさんが南部から出るなら、俺も南部行こうかな」

「私も」

「俺も」

 と、次々と南部からの出撃を希望する旨の発言をするのであった。

 そんな一同を見たアリババは、

「いやちょっと待て!」

 と思わずツッコミを入れてしまう。

 そして続けて、

「お前達まで南部から出たら北部手薄じゃねーか!」

 と苦言を呈した。

 だが、商人達はというと、

「いやでも……」

「どうせならモルジアナさんと一緒がいいし……」

 と、北部からの出撃を拒むような発言をする。

 その発言を聞いたアリババは、思わず声を荒げ、

「うるせー! お前達青年部は俺と一緒に北部だ! いいな! はい決定!」

 と強引に北部からの出撃を決定するのであった。

 そんなアリババの強引な決定に、ブーイングをする商人達。

 だが、アリババはそんなブーイングに耳を傾けることはなかった。

 出撃の段取りが決まると、

「アリ。出撃前に、一言」

 とモルジアナがアリババに声をかける。

「あ、そうだな」

 モルジアナの言葉に、アリババはそう反応をする。

 そして、改めて一同の方を向くと、右手の拳を突き出した。

「今回のミッションは2つ。1つ、ナジューラの街をクリーチャーから守ること。1つ、生きて帰ってくること」

 アリババの言葉に、何も言わず頷く一同。

「必ず生きて、またここで会おう! いいな!」

「「おう!」」

 アリババの言葉にそう答えると、各々アリババの突き出した拳に、自身の拳をあてていく。

 そしてそのまま、自身の出撃場所へと向かっていったのであった。

 尤も、一部の者はアリババの拳ではなく、腹部などに拳をあてていったのであったが……。

「(腹とか殴った奴、絶対私怨だろ! くそー!)」

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