第86話
「大変だ。ナジューラの街が、クリーチャーの軍勢に、囲まれている」
「「「「え?」」」」
アリババの言葉を聞き、食事の手を止め、驚くアルディア達。
モルジアナも
「アリ、朝からおかしな冗談?」
とアリババに尋ねた。
だが、アリババは
「違う、モル。冗談じゃなくて、本当なんだ!」
と、真剣な表情でモルジアナに返した。
そんなアリババの表情を見たモルジアナは、これは嘘ではないと判断する。
アリババの様子を見たモルジアナは、真剣な表情になると、
「アリ、具体的に、どんな状況なの?」
と、アリババに状況を尋ねる。
「今朝のことだ。いつも通り街の様子を見回って、外壁の見張り台に行った時、見張りの奴らが慌ててた。事情を聞き、外の様子を見たら、街の周りに無数のクリーチャーが街を囲うように並んでたんだ」
モルジアナの問いかけに、アリババは今朝からの出来事を一つ一つ、モルジアナと、そしてアルディア達に語った。
アリババの話を聞いたモルジアナは、
「クリーチャーが、街を囲うように、配置?」
と首を傾げる。
一方、アルディア達はというと、
「無数のクリーチャーが配置……。野良ではなさそうだよね?」
「ああ。四柱帝の配下かもしれないな」
「カスティードの海岸で戦った、ガブリエルの軍勢のことを思い出すね」
「あ、なつかしー!」
と、エスメラルダ、ザフィーア、アルディア、ルービィが各々、思いを口にした。
そんなアルディア達のやりとりを聞いていたアリババは、
「じゃあ、今回のも四柱帝の軍勢だっていうのか?」
とアルディア達に尋ねる。
「断定はできないが、可能性としてはありえるだろうな」
アリババの問いかけに、ザフィーアは冷静にそう返した。
「マジかー……。四柱帝と戦ったあんたらが言うと可能性高そうだなー」
ザフィーアの返答を聞いたアリババは、がっくりと肩を落としそう言った。
「アリ、どうするの?」
そんなアリババに、モルジアナは冷静に尋ねる。
「う~ん……」
モルジアナの言葉に、今度は腕を組み、考え込むアリババ。
そして、
「とりあえず、商人連合の青年部を中心に、街で戦えそうな奴らを募るけど……。多分足りないよなぁ」
と考え込んだまま、そう言う。
「なら、どうする?」
考え込んだままのアリババに、モルジアナは変わらず冷静に尋ねた。
アリババは暫く黙り込み、考え込んだ後、
「こうなったら、『シャフリヤール』の奴にも頼んでみるか」
と答えた。
「シャフリヤールに!?」
モルジアナはそう言うと、露骨に嫌そうな顔を見せる。
「ナジューラで私兵を持ってるといったら、シャフリヤールぐらいだしなぁ。あいつの私兵も出してもらわないと戦力足りないだろ?」
「そうかも、だけど……」
アリババの言葉を聞くも、モルジアナの表情は変わることはなかった。
そんなモルジアナの表情を見たアリババは、
「モル、無理して着いてこなくてもいい。俺が行くから」
と優しく微笑みモルジアナにそう言った。
アリババの反応に、モルジアナは少し口元を緩ませると、
「ありがとう、アリ。でも、私も行く」
とアリババに答えた。
「大丈夫なのか? モル」
アリババは心配そうな表情を浮かべ、モルジアナに尋ねる。
「大丈夫。それに、あいつ相手なら、私が行った方が、うまくいく可能性は高い」
モルジアナはゆっくりと首を縦に振り、アリババに返した。
「そっか。まぁ、そうだな……」
アリババはそう言うと、少し浮かない表情を浮かべ、顔を俯かせる。
だが、その後直ぐに笑顔を浮かべ、モルジアナの方を再び向くと、
「じゃあ、一緒に行こう!」
とモルジアナに手を差し出した。
「うん」
モルジアナは首を縦に振ると、差し出されたアリババの手を握った。
そんな両者のやりとりを横で見ていたアルディア達。一同を代表し、ザフィーアが
「我々も同行しよう」
とアリババに申し出た。
「悪い。助かる」
ザフィーアの申し出を受けたアリババは、ザフィーアに軽く礼を言う。
こうして一同は、アリババの家を出て、シャフリヤールの場所へと向かうのであった。
――――ナジューラの街・中心区域
アリババの家を後にした一同。
一同はシャフリヤール邸のある中心区域へと移動をした。
中心区域へ着くと、街の様子がこれまでとは大きく変わり穏やかながらも静寂に包まれた場所へと変わる。
その様子は、アルディア達が最初に訪れた南部区域の商業区、アリババの家がある西部区域の住宅区とは大きく異なるものであった。
そして、アリババの後に着いていったアルディア達は、中心区域の中でも一際大きな豪邸の前へと辿り着いた。
「着いた。シャフリヤールの館だ」
豪邸の前の門に立つと、アリババが豪邸の方も見ながらもアルディア達に向けてそう言う。
「さ、入るぞ」
アリババはそう言うと、前に歩みを進める。
アルディア達もそんなアリババに続き、歩みを進めた。
――――シャフリヤール邸・門前
「「待て」」
アリババと、それに続くアルディア達がシャフリヤール邸に歩みを進めると、直ぐに門前の警備兵らしき者2名に呼び止められる。
「貴様……アリババか。何しに来た?」
呼び止めた警備兵のうち、1名がアリババに近寄るとそう言う。
「すまん。シャフリヤールに急ぎの用があって来た」
アリババは近寄った警備兵にそう答える。
だが、警備兵は
「こんな早朝に、シャフリヤール様がお会いになるわけないだろう」
とアリババの申し出を一蹴りする。
そしてもう1名の警備兵が更に続けて、
「そもそも一小市民の貴様相手に、シャフリヤール様がやすやすとお会いになると思ったのか?」
と、小馬鹿にするようにそう言った。
「そりゃ俺だって、俺だけでシャフリヤールに直ぐに会えるなんて思っていないさ。だから、俺だけじゃなくてルベンの町議だって連れてきてるんだ」
アリババはそういうと、ザフィーアを前に出す。
突然前に出されたザフィーアは、少し動揺しつつも、直ぐに
「失礼。紹介に預かった東の大陸、港町ルベンの町議を勤めている、ザフィーアです」
と、簡単に自己紹介をする。
だが、ザフィーアが自己紹介をしても尚、警備兵たちはというと、
「自己紹介か。ご丁寧にありがとう、ルベンの町議さん」
「だがな、そんな異国の、しかも町長でもない者が突然やってきても、はいどうぞ、とはいかないんだわ」
と、ザフィーアに返した。
「まぁ、そうだろうな」
警備兵の反応に、冷静にそう返すザフィーア。
だが、アリババはというと、
「頼む。本当に、緊急事態なんだ!」
と、警備兵に頼み込んだ。
警備兵は、
「しつこいぞ!」
と、アリババを突き放す。
だが、もう1名の警備兵が、
「おい……」
と警備兵に声をかける。
「何だ?」
声をかけられた警備兵は、少し苛立った様子で声をかけた警備兵にそう尋ねる。
声をかけた警備兵は、何も言わず視線を向ける。
もう1名の警備兵も、視線の先を確認すると、
「……少し、待ってろ」
とアリババに言うと、館の中へと入って行った。
「当然どうしたんだろ?」
警備兵の突然の変わりように、首を傾げたのはエスメラルダであった。
「あー……、あんまりいい予感はしないがな」
アリババは後頭部を掻きながら、そう答えた。
そして、アリババは横目でモルジアナの方を見た。
モルジアナはというと、何も言わず少し表情を曇らせていた。
そんな状態で警備兵を待っていると、館の中へ入っていった警備兵がアルディア達の下へと戻ってきた。
そして、
「おい、中へ入れ」
と言い、アルディア達を館の中へと案内をした。
――――シャフリヤール邸
警備兵に中へと案内されたアルディア達。
一同は、警備兵に連れられて歩みを進めた。
そして、とある部屋の扉の前に辿り着くと、警備兵は歩みを止めた。
歩みを止めた警備兵は、扉をコンコンコン、とノックすると。
「シャフリヤール様、モルジアナ達を連れて参りました」
と話しかける。
「ご苦労。入れ」
扉の奥からは年配の男性のような声が返ってきた。
「はい、失礼します」
警備兵はそう言うと、扉を開けた。
「("モルジアナ"達……?)」
扉を開ける警備兵の背中を見ながら、ザフィーアは先ほどの警備兵の言葉に疑問を抱いていた。




