第45話
逆上したハインの馬による特攻に、想定外に苦戦していたザフィーアとルービィ。
そこへディアが参戦。闇属性魔法による魔剣技でハインの馬を足止めする。
一方、ハインはディアの魔法に対応しつつも、ディアに攻撃を仕掛けるが、ディアに攻撃をした直後、馬が倒れ、落馬するのであった。
――――レビ平原
「どういうことだ?」
先ほどまで自身が乗っていた馬が突如倒れ、戸惑うハイン。
そして、戸惑いつつも改めて馬の様子を見る。
すると、自身の乗っていた馬の首から上がなくなっており、首からおびただしい血が流れている姿を発見した。
また、その直ぐ側に切断された馬の頭部も発見。これにより、馬が倒れた理由が、斬首されたことによるものであることを、理解したのであった。
だが、ハインにとって、一つ理解できない事もあった。それは、誰が、どのようにして、自身の馬の首をはねたのか、ということである。
斬撃である以上、ルービィによるものではないのは明白。可能性があるとすれば魔剣士であるザフィーア、もしくはディアのどちらかである。
しかしながら、ザフィーアは自身から距離を取っており、自身の近くに居たディアも刀の刀身を地面につけており、馬に攻撃を仕掛ける様子はなかった。
故に、どのようにして自身の馬の首をはねたのか。ハインはそれが理解できなかったのであった。
「貴様ら、一体何をした?」
ハインはザフィーア達をにらみつけ、そう尋ねる。
一方、ザフィーアとルービィも、何が起きたのかわからず、ディアの方を見る。
「『影刃』」
ハインから攻撃を受けた右肩を左手で押さえながら立ち上がり、そう言うディア。
「影を斬り、影の主に影響を与える魔剣技です。勿論、魔力の高い相手には通用しないため、私程度ではハインに傷を負わせることは叶わない。だが、馬……ただの獣相手ならば、首をはねるくらい、容易い」
「成る程。だからあの時、距離をとらなかった、と」
ディアの魔法『影刃』の説明を聞き、全てを理解したザフィーア。
「自分がダメージを受ける覚悟でやったってわけね。すごいじゃん!」
ルービィもまた、右指をパチンと鳴らし、ディアを褒めるのであった。
「お役に立ててなにより。だが、これ以上はお役に立てそうにない」
「いや、とんでもない。本当に助かりました」
ディアがそう言うと、ザフィーアはそう返し、一礼をする。
そして、それと同じタイミングに、
「ディア様、大丈夫ですか!」
と、一名の兵がディアのもとへとやってきた。
「ああ、命に別状はない。だが、戦えそうにはないな……」
ディアは自身のもとへとやってきた兵に対し、そう答える。
兵は、ディアからの返答を聞くと、
「直ぐに治療班に対応させます。さぁ、こちらへ」
と言うと、陣営の後方へとディアを案内した。
ディアは、ザフィーアとルービィの方を向くと、
「後は、頼みます」
そう言うと、兵の導きに着いていき、自陣営の後方へと乗ってきた馬と共に歩いて行ったのであった。
「さて、後は貴様だけだな」
ザフィーアはそういうと、刀の切っ先をハインに向ける。
ザフィーアがそういうと、ルービィも両手の拳に炎を纏い、構える。
「おのれぇ!」
ハインはそう叫ぶと、黒衣の内側より金属メイスを1本取り出し、両手にメイスを構える。
ハインは両手に構えた金属メイスを金属性魔法で変形。両方のメイスはそれぞれ短剣へと姿を変えた。
ハインは魔法で変形させた短剣を携えると、そのままザフィーア目がけ特攻。両手の短剣の切っ先をザフィーアに向けて突き刺そうとする。
だが、ザフィーアはそのハインの攻撃を冷静に対処。短剣の切っ先を刀の刀身で受け止めた。
両者はそのまま刀剣を交わしたまま、一歩も引かぬ拮抗状態となる。
しかしながら、そんな状態のハインの右側面からルービィが攻撃を仕掛ける。彼女の仕掛けた攻撃、火炎拳の右拳はハインの右横顔に綺麗に入る。右横顔に火炎拳を受けたハインはそのまま左側へと吹き飛んだ。
「があぁ!」
火炎拳による打撃と、炎による火傷に右頬を押さえながら叫び声を上げるハイン。
悶えながら地面にのたうち回るハインに追撃をすべく、駆け寄るザフィーア。刀に魔力を込め、刀身に氷を纏わせると、刀の切っ先をハインに向け突き刺した。
だが、ハインはそんなザフィーアの攻撃を間一髪で回避。その後立ち上がり、ルービィの火炎拳を受けたことにより出血した鼻と口から流れる青い血を右手の手の甲で拭うと、またしても黒衣から金属メイスを取り出し、魔法で今度は槍に変形させた。
「あいつ、一体いくつ同じメイスを隠し持ってるのよ……」
黒衣に隠し持っているメイスを取り出したハインを見て、ルービィは呆れた様子でそう言う。
「金属性魔法使いだ。戦闘用に複数用意しているのだろう。……それにしても多いとは思うが」
「っていうかあの服、よく破れないよね……」
ザフィーアとルービィはそんなやりとりをしながら、槍を構えるハインを迎え撃つ準備をする。
ハインは手に持った槍でザフィーア達目がけ突き刺す。
だが、ザフィーアとルービィはこの攻撃を軽く回避。ザフィーアは再び刀に魔力を込め、ハインに斬りかかった。
しかしハインは今度は槍を両手で持ち、槍の柄の部分でザフィーアの斬撃を受け止める。
だが、ザフィーアの攻撃を受け止め、無防備になったハイン。そんなハイン目がけ、ルービィがまたしても魔拳法による攻撃を仕掛ける。
しかしハインは、今度は槍を手放し後退。ルービィの攻撃を回避するのであった。
「流石に同じような手は通用しないか」
後退し、ルービィの攻撃を回避したハインを見て、ザフィーアはそう呟く。
「なら、同じような手じゃない攻撃をすれば問題ないでしょ!」
ルービィはそう言うと、左腰付近で両手を合わせ、魔力を溜める。
そして魔力が溜まると、
「火炎砲!」
と叫び、左腰付近に構えていた両手をハインの居る方向へ突き出し、直線状の火炎放射をハインに向かって放った。
だが、ハインはルービィの火炎砲に対し、
「来い!」
と叫び、左腕を掲げ、左手首の腕輪を光らせた。
腕輪の光に応えるように、数名の人族と魔族がハインの前に立つ。そしてルービィの放った火炎砲を受け止め、ハインへの直撃を防いだのであった。
「ハハハ!」
操られた者達を使い火炎砲を防いだことで、得意気に高笑いをするハイン。
だが、壁となった者達から立ち上がる炎の向こう側から、一つの影が飛び出した。
飛び出した影に気づいたハインは、咄嗟に飛び上がる影の方へ目を向ける。すると、そこには右手の拳に炎を纏わせたルービィの姿があった。
「同じ手は、何度も通用しないよ!」
飛び出したルービィはそう叫ぶと、ハインに向かっていく。
右手に纏っている炎より、火炎拳で自身に殴りかかろうとしている事を察したハインは、今度は身に纏う黒衣で自分の顔を被った。
「?そんな布で、あたしの拳は防げないよ」
ルービィはそう言うと、ハインの行動に気を留める事もなく、そのままハインに向かって殴りかかる。
そして、ハインの黒衣ごとハインの顔面を殴ろうとしたその時である。ハインの黒衣にルービィの拳が当たると同時に鈍い音が辺りに響き渡った。同時に、ルービィの拳がそのまま止まってしまった。
「……どうしたんだ?」
ルービィとハインの様子を見ていたザフィーアは、状況が理解できず、そう言う。
一方、ルービィはというと、
「いっ……たあぁぁぁぁ」
と声をあげると、拳をほどき、涙目になりながらザフィーアのもとへと下がってきたのであった。
「痛い?」
ルービィの反応を見たザフィーアは、ルービィに問いかけるようにそう言う。
「かた……、硬いの……。なんか壁とか思いっきり殴った感じ……」
ルービィは涙目のまま、ハインの黒衣を殴った右手を振りながらザフィーアにそう答えた。
「まさか、魔法で黒衣を金属化させたのか?」
ルービィから返ってきた答えを聞いたザフィーアが、ハインの取った行動について予測。そう言葉にする。
ザフィーアの言葉を聞いたハインは、何も言わずニヤリと笑ったのであった。
「成る程。そういう芸当も出来るというわけか」
ハインの反応を見たザフィーアは、冷静にそう言葉にするのであった。
「フン! 白兵戦では優位だと思っていたのだろう。馬鹿め」
ハインは吐き捨てるかのように、ザフィーアにそう言った。
「ザフィ、どうする?」
ルービィは相変わらず涙目のまま、ザフィーアに尋ねる。
ザフィーアは少し考え込むと、
「ルー。もう一度、奴に向かって火炎砲を放ってくれないか?」
と、ルービィに火炎砲を放つよう、依頼をする。
「え? もっかい?」
「そうだ、もう一度だ」
ルービィの問いかけに、ザフィーアは冷静にそう返した。
そして続けて、
「私に、策がある」
とルービィに言ったのであった。




