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第44話

 金属性による足がらめの魔法を攻略され、逆上するハイン。

 とうとう自ら出向き、ザフィーア、ルービィに戦いを仕掛けた。

 向かってくるハインに応戦をするザフィーアとルービィ。だが、ハインの乗っている馬による機動力、そしてザフィーア達の攻撃に対しては腕輪による操りの魔法で、操った者を壁にするといった戦い方を仕掛けることで、器用に立ち回るハインに対し苦戦を強いられていた。

 そんな状況を後方から見ていたディアは、ハインとの戦闘に参戦をすることを決意。ザフィーア達の居る前線へと赴くのであった。


 ――――レビ平原

「思った以上に厄介だな……」

 ハインの馬による機動力と、操りの魔法による立ち回りに、思わず言葉を漏らすザフィーア。

「壁にした奴ごと攻撃してくるしねぇ」

 ルービィもザフィーアの漏らした言葉に同調するかのように、そう言った。

 一方ハインはというと、

「ハハハ! ガブリエルを倒したからといって、調子に乗るからだ!」

 と高笑いをしながら、ザフィーア達を煽るかのようにそう言った。

「調子に乗ってるのは、どっちかって言うとアンタじゃん……」

 高笑し自身を煽ってくるハインに対し、ルービィは目を細めながらそう言う。

「確かに奴(ハイン)の方が調子に乗っているが……。だが、腹立たしいが我々が奴に苦戦しているのも事実」

 ザフィーアもルービィの意見に同調するかのようにそう言い、眉をひそめた。

「あの馬の機動力さえどうにかできればな」

 続けてザフィーアが、ハインの方を見てそう言う。

 すると、

「ザフィーア殿、ルービィ殿」

 ザフィーアとルービィの名を呼び、ディアが馬に乗って近寄ってきた。

「ディア殿!?」

 突然やってきたディアに、驚き思わず名前を呼んで反応してしまうザフィーア。

 ディアはザフィーア達のもとに辿り着くと、馬から降りて

「戦況を後方から見ておりました。微力ながら、助力します」

 と、ザフィーア達に言った。

「助力って、アンタ戦えるの?」

 ディアが戦力になるかわからないルービィが、指を指し、疑うかのようにそう言う。

 そんなルービィの様子を見て、

「おい! 失礼だぞ!」

 と叱責するザフィーア。

 ディアは、

「確かに、ルービィ殿のご心配もごもっとも」

 と答える。

 だが、続けて、

「しかしながら、私も魔剣士。ザフィーア殿ほどではないが、魔剣の心得はあります」

 と言うと、腰に差した刀を抜き、黒い刀身の刀を天に掲げた。

「ふ~ん」

 刀を天に掲げそう言うディアの様子を、変わらず疑う様子で見ているルービィ。

 一方、ザフィーアはというと、

「ディア殿も魔剣の心得がありましたか。心強い」

 と、ディアの参戦を歓迎するかのようにそう言うのであった。

 そして、

「後方で戦況を見ていらっしゃったのであれば、ご存知かとは思いますが、奴(ハイン)の馬もしくは操りの魔法をどうにかして、白兵戦に持ち込めればと思っているのですが……。何か策はありそうですか?」

 とディアに尋ねた。

 そんな会話を横で聞いていたルービィは、

「ねぇ。いっそザフィの魔法で一帯を氷漬けにしたらどう?」

 とザフィーアに問いかけた。

「悪いが、私にそんな高位な魔法は使えん」

 ルービィの問いかけに、ザフィーアは少々呆れた様子でそう返した。

「まぁ、一帯に魔法効果を及ぼす魔法は、かなり高位の魔法ですからな……」

 ザフィーアに続き、ディアもそう言った。

「そっか~」

 ルービィはそう言うと、胸の前で腕組みをし、ふーっと息を吐くのであった。

 すると、そんなルービィの横でディアが

「馬ですか……。私の魔法であれば、あるいは……」

 と呟く。

「何か策でも?」

 ディアの呟いた言葉に、そう反応するザフィーア。

「私の魔法属性は"闇"。操りの魔法に妨害されないよう馬を止めるには有効かと」

「成る程、闇属性ですか」

 ディアの持つ属性を聞いたザフィーアは、ディアの策の根拠を理解し、そう返した。

 一方、ルービィはというと、

「?闇属性だと何かあるの?」

 と、闇属性自体がどのような特徴を持っているのかわからず、そう返したのであった。

 それを聞いたザフィーアは、

「闇属性は重力や影を操る魔法だ。重力魔法であれば、私の氷魔法よりも、足の速い相手に有効かもしれん。そう思ったのだ」

 とルービィに説明をした。

「へ~」

 ザフィーアの説明を受けるものの、あまり関心のなさそうな返事をするルービィ。その上で変わらず、疑うような目をディアに向けていた。

「まぁ、あくまで可能性なので……」

 自身の能力を疑うような目で見てくるルービィに対し、ディアはそう言葉をかけた。

 ザフィーア達がそんなやりとりをしていると、

「何コソコソと企んでやがるか知らんが……。行くぞ!」

 ハインがそう叫び、またしてもザフィーア達に向かって馬を走らせた。

「来たぞ!」

 ザフィーアは自身の方へ向かって馬を走らせてくるハインを見て、そう叫ぶ。

 ザフィーアの言葉にルービィ、そしてディアは身構え、ハインを迎え撃つ準備をした。

「アンタ、本当に何とかできるんでしょうね?」

 ルービィは腰に携えた刀に手をかけるディアにそう尋ねる。

「おい、ルー!」

 ディアに対し相変わらず失礼な発言をするルービィに対し、声を荒げそう言うザフィーア。

 だが、ディアは、

「いやザフィーア殿、結構。……ルービィ殿、ここは一つ、証明する為にも私に任せてもらえないか?」

 とザフィーアと、そしてルービィに対しそう言った。

「……」

 ディアの言葉に対し、ザフィーアは沈黙を、そしてルービィは

「いいよ、わかった」

 と、返したのであった。

「かたじけない」

 ルービィの返事に、そう返すディア。

 ルービィに言葉を返した後、ディアは向かってくるハインの方を再び向くと、腰に携えた刀に魔力を込めた。

 そして、抜刀と同時に、魔法を発動させた。

 ディアの発動させた魔法は、刀の軌道にあわせて前方に居るハインへと向かって飛んでいく。

 飛んでいった魔法は、そのままハインの馬に直撃。魔法による重力の影響を受けたハインの馬は、ダメージこそ負わなかったものの、重力魔法の影響で吹き飛ばされてしまった。

「なっ!?」

 ディアの魔法の影響で馬ごと吹き飛ばされ、落馬するハイン。

 馬の態勢を立て直すと、ハインは再び馬に乗るのであった。

「へぇ~、すごいじゃん」

 吹き飛び、落馬するハインを見て、関心するかのようにディアにそう言うルービィ。

「今のは?」

 ザフィーアは、ハインの様子を見て、どのような魔法を使用したのか、ディアに尋ねた。

「『重横断(じゅうおうだん)』。前方の対象物に刀の軌道に合わせた重力を押しつける魔剣技です。もっと実力のある者であれば、斬撃による傷も負わせることが出来るのですが、私では重力を押しつける程度で……」

「いや、とんでもない。素晴らしいです」

 ディアの説明に、そう返したザフィーア。

 一方、馬に乗り直したハインはというと、

「くそっ! 今のは闇属性魔法か!」

 と言い、ディアを睨みつける。

 だが、直ぐに

「だが、モノがわかれば大した問題はない!」

 と言うと、再び馬を走らせ、ザフィーア達に向かって走ってきた。

 再び向かってくるハインに、ディアは再び刀を構え、重横断をハインに向かって放つ。

 だが、

「来い!」

 ハインはそう叫ぶと、左手首の腕輪を光らせる。

 ハインの腕輪の効果が発動すると、ハインの前に操られている者達を前に立たせた。

 ハインの前に立った者達はそのままハインに向かって放たれたディアの重横断を受け、吹き飛ばされる。

 だが、壁になった者達によって、ディアの重横断はハインには届かなかった。

「ハハハ!」

 重横断を阻止したハインは高笑いし、そのまま馬を走らせ続ける。

 そんな様子を見たザフィーアとルービィは、ハインの馬を回避するため、左右に分かれ移動する。

 だが、ディアはその場から大きく動くことはなく、右手に持った刀の刀身を地面に付け、ハインの馬が向かってくる軌道上からわずかに移動した程度であった。

 そんな様子を見たハインは、

「ハッ! 諦めたか」

 と鼻で笑い、金属メイスを変形させた剣を構える。

 一方、ザフィーアは、

「ディア殿! 回避を!」

 とディアに向かって叫んだ。

 だが、ディアはザフィーアの言葉に反応することもなく、その場に留まる。

 いよいよハインがディアに近付くと、ディアを斬りつける態勢をとる。

 そしてそのまま、ハインは手に持った剣でディアに攻撃。馬の勢いもあり正確な箇所は狙われなかったものの、ハインの攻撃はディアの右肩に大きなダメージを与えた。

「ッ!」

 ハインの剣による攻撃を受け、左手で右肩を押さえながら表情を歪ませ地面に膝をつくディア。

 そんなディアの様子を馬に乗ったまま見たハインは、

「ハハハ! ざまぁねぇな!」

 と笑い、ディアを煽るような言葉をかける。

 だが、ディアに煽り言葉を送ると同時に、どんどんと自身の視界が移動していく感覚に襲われるハイン。そしてその感覚に襲われたと感じた直ぐ後。ハインは再び落馬し地面に身体をつけるのであった。

「!?」

 突然の落馬に理解が追いつかないハイン。

 身体を起こし立ち上がり、自身の身体を確認する。特に身体には何らかの異常はないことを確認すると、今度は周囲を確認するハイン。

 すると、自身の目の前に、さっきまで自身が乗っていた馬が、倒れている姿を発見したのであった。

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