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聖女物語  作者: 野ウサギ座
Chapter2 東の大陸
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第43話

 レビ平原にてハインの軍勢と激突するザフィーア、ルービィ、ディアとその軍勢。

 ハインの金属性魔法による足がらめで一時は劣勢に陥っていた一同だが、ザフィーア、ルービィによるハインの魔法の攻略、そしてディア軍の魔弓兵による活躍により、一気に優勢な状況へと戦況は変わったのであった。


 ――――レビ平原

「くそー! くそがぁー!!」

 戦場に響く、ハインの悔しさに満ちた叫び。

 ハインはその場で地団駄を踏むが、ザフィーア達はそんなハインの様子をただただ、冷静に見ていた。

「一見、多数対多数に見えたが……。実際は操りもハインの魔法の一部と考えたら、ほぼハイン相手に戦っているだけだったな」

 ザフィーアは、冷静に戦況を分析し、そう言葉にする。

「操りと足がらめが一緒に行えないからね~」

 ザフィーアの言葉に同調するかのように、ルービィもそう言った。

「まぁ、いずれにせよ、戦い方がわかればどうということはないな」

「正直、わかっちゃえば怖いものはないよね!」

 悔しさに満ちた叫びを叫び、地団駄を踏むハインを前に、ザフィーアとルービィはそう会話を続ける。

 一方、戦場の後方では、ディアが

「このまま一気に押し切ろう」

 と言い、魔弓兵に三回目の攻撃準備を行わせた。

 すると、さっきまで叫び、地団駄を踏んでいたハインが、急に馬に乗り、

「もういい! この俺自らが相手してくれる!!」

 と激怒。そして馬を全力で走らせると、ザフィーア達の方へと突撃をしてきたのであった。

 猛スピードで走ってくるハインの馬に、ザフィーア、ルービィは咄嗟に左右に分かれ跳躍。間一髪のところで回避した。

「びっくりした……」

 ハインの馬による特攻を回避したルービィは、思わずそう言葉にする。

「状況が悪化して逆上して、いよいよ出てきたか」

 ルービィ同様、ハインの馬による特攻を回避したザフィーアが、先ほどまでと変わらず冷静にハインの様子を見て、そう言う。

 そして続けて、

「だが、ハイン自ら出てきてくれたのは好都合。こちらも手間が省けるというものだ」

 と言うと、駆け抜けていったハインの方に身体を向け、刀を構えなおした。

「そうだね。あいつさえ倒せばいいわけだしね」

 ザフィーアがそういうと、ルービィもまた、拳を構え、ハインの方を向いたのであった。

「舐めるなぁ!!」

 怒りの感情を露わにしたハインはそう言うと、馬を方向転換させ、ザフィーア達の方へ向かい再び馬を走らせる。

 向かってくるハインを迎え撃つべく、ルービィが拳に炎を纏い、跳び上がり、馬に乗るハインに向かって殴りかかろうとする。

 だが、

「来い!」

 ハインはそう言うと、左手首の腕輪を光らせる。

 すると、ラファエルの魔法によって操られている者達が、ルービィとハインの間に割り込み、ハインの壁となった。

「うそ!?」

 急に割り込んできた者達を見て、思わずそう言葉を漏らすルービィ。

 だが、攻撃を仕掛けたルービィの拳は止めることはできず、間に割り込んだ者達によって防がれてしまい、ハインには届かなかった。

 自身の腕輪の効果によって壁となった者がルービィの攻撃を防いだことで、ニヤリと笑うハイン。そして今度は右手に持ったメイスを魔法で槍に変形させると、壁となった者もろとも、ルービィへ向かい槍を突き刺した。

「うあっ!」

 ハインの突き刺した槍は、ルービィの左肩をかすめる。

 ルービィは攻撃を受けた左肩を右手で押さえながら、地面に転がり込んだ。

 一方、ハインは槍へと変化させたメイスを手放し、そのまま馬で駆け抜けていく。

 そして、走る馬の勢いが止まったところで、改めて方向転換し、ルービィの方を向いたのであった。

「ッチ! 肩をかすめただけか」

 左肩を押さえ、地面に転がるルービィを見て、そう言うハイン。

「大丈夫か!? ルービィ」

 ザフィーアは肩を押さえ地面に転がるルービィにそう言い、ルービィの下へと駆け寄った。

「大丈夫。かすっただけだから……」

 ルービィはそう言うと、肩を押さえながら立ち上がる。

 だが、かすっただけとはいえ、それなりに出血はしており、ルービィの左肩は彼女の血で青く染まっていた。

「ルービィ、出血が酷いようだが?」

 ルービィの肩の出血状態を見て、声をかけるザフィーア。

 ルービィは自身を心配するザフィーアに対し、

「大丈夫、止血できるから……」

 と答えると、左肩を押さえていた右手を肩から離し、右手の人差し指と中指の2本をくっつけた状態で立て、炎を発生させる。

 そして、炎を纏わせたその指を、傷口に当てた。

「うああ!!!!」

 傷口が焼ける痛みで、思わず声をあげるルービィ。

 だが、そのまま暫く指を当て傷口を焼くことで、ハインに攻撃された箇所の傷口を塞ぎ、出血を止めたのであった。

「傷を焼いて止血したのか……。無茶な」

 ザフィーアは傷口を処置したルービィの様子を見て、思わずそう言葉を漏らしてしまう。

 一方、ルービィはというと、地面に蹲り、

「ま、まだ戦いの途中だしね……」

 と、止血の激痛で涙目の状態でザフィーアにそう答えたのであった。

「火属性の魔法には、治癒の効果を持つものもあるらしいが……。成る程、貴様は使えんようだな」

 ルービィの止血の様子を駆け抜けた先で見ていたハインが、彼女を煽るかのようにルービィに向かい、そう言う。

「悪いけどあたし、そんな器用な魔法、使えないから」

 ルービィは涙目のまま立ち上がり、ハインにそう返した。

「ふん! ガブリエルを倒した者達とはいえ、所詮はこの程度か」

 ハインは高笑いしながらそう言うと、またしても馬を走らせる。

 そして、先ほど壁にした者に使用した金属メイスとは別の金属メイスを取り出すと、そのメイスを今度は剣に変形させ、ザフィーア達に向かってつっこんできた。

 自身に向かって襲ってくるハインを見て、大きく跳んで回避するザフィーアとルービィ。だが、回避をするのが手一杯で、反撃に転ずることは叶わなかった。

「くそっ! 馬が厄介だな……」

 回避後、着地したザフィーアが、駆け抜けていったハインの方を見てそう言う。

「せめてあの馬だけでもなんとかできればねぇ~」

 ルービィもまた、回避後着地し、ハインの方を見てそう言った。

「ねぇザフィ。あの津波とかで何とかできないかな?」

 ルービィが今度はザフィーアの方を見て、そう言う。

 ザフィーアは腕を組むと、

「……少しの間の足止めにはなるだろうが、難しいだろうな」

 と答えた。そして、

「足止めしてる間に接近したところで、またしても操った者たちを使って落馬させるには至らないだろうしな」

 と、続けて対策として難しい旨を、ルービィに説明した。

「そっか……」

 ルービィはそういうと、再びハインの方を見た。

 そして少しの間を置いた後、

「じゃあさ、あの氷で足止めする魔法は?」

 と、再びザフィーアの方を見て、ザフィーアに尋ねた。

「足止めの氷の魔法?」

 ルービィの言葉に、どの魔法のことを指しているのか尋ねる。

「ほら、あたしたちがルベンで初めて会った際、ザフィがあたしたちに使ったあの魔法」

「ああ、アレか」

 ルービィの言葉にどの魔法を指しているのか理解したザフィーアは、そう言うとハインの方を向く。

 そして、右手に持った刀を持ち替えると、

「確かに、試す価値はありそうだ」

 と言うと、刀を地面に突き刺し、刀の柄を強く握った。ザフィーアが刀の柄を強く握ると、刀から冷気が出始め、刀を起点としてハインに向かって氷の道を作りはじめた。

 ザフィーアが作った氷の道は、勢いよくハインに向かって進み始める。このままハインに届くか? そう思ってルービィが見ていると、

「来い!」

 ハインが突然そう叫び、左手首につけているピンク色の腕輪を掲げた。

 すると、操られている魔族がハインの馬の前に現れ、ザフィーアの作る氷の道の進路に立ちはだかった。

 その魔族はそのままその場に留まると、その身体でザフィーアの魔法を受け、足を凍らされてしまう。だが、その魔族が魔法を受けてしまったことによって、ザフィーアの魔法はそのまま発動が終了してしまった。

「!またしても操った者で……」

 ハインの行動で足止めに失敗したザフィーアが、地面に突き刺した刀を抜き、奥歯を噛みしめるよな表情を浮かべそう言う。

 一方、ハインはというと、

「ハハハ! その程度の策でこの俺を止められると思うなよ?」

 と、得意気に高笑いをするのであった。


 ――――ディア陣営・後方

「ザフィーア殿、ルービィ殿。かなり苦戦されている様子だな」

 前衛でのハインとの交戦の様子を見ていたディアが、そう呟く。

「ディア様、如何いたしましょう?」

 前衛の状況を見ているディアに、兵士の一人がそう尋ねる。

 ディアは目を瞑り、暫く考えると、

「……私が行こう」

 と兵に告げる。

「え!?」

 ディアの発言に、思わずそう返す兵士。

 だが、ディアは

「私も参戦し、彼らに協力する。後衛の者達はここで待機していろ」

 と兵に指示を出すと、馬を走らせザフィーア達のところへと向かったのであった。

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