第23話
オーバードライブ状態からの溜め魔法でガブリエルに攻撃をしたアルディア。
その攻撃はガブリエルを押していたものの、耐えきられてしまった。
そして、溜め攻撃を耐えきられたのと同時に、アルディアのオーバードライブも効果が切れてしまった。
オーバードライブの効果が切れたアルディアは、反動による疲労と一時的な魔力切れに襲われ、床に膝をつく。
一方、アルディアの攻撃を耐えたガブリエルも、その攻撃の威力から、尾びれと両手を床につけ、息を切らしていた。
「アルディア!」
膝をつくアルディアの下に駆け寄るエスメラルダ。
「ごめんね……。やっぱり倒せなかった……」
アルディアは息を切らしながら、自身のもとに駆け寄ってきたエスメラルダにそう詫びる。
するとエスメラルダに続きアルディアのもとにやって来たザフィーアが、
「大丈夫だ」
とアルディアに声をかける。
そして続けて、
「元々一度のオーバードライブで倒せる相手ではないことはわかっていたんだ。アルディア、とりあえず今は体を休め、次のオーバードライブに備え魔力を溜めるんだ。その間は、私たちが何とかする」
そう言うと、刀を構え、ルービィと共にアルディアの前へと出た。
「ルービィ、もう大丈夫なの?」
アルディアはルービィに尋ねる。
「うん! 後は任せて!」
ルービィは右手の親指を立て、笑顔でそう答えた。
「エスメラルダ、アルディアの事を頼む」
「わかった。後は頼むよ」
エスメラルダはザフィーアにそう言うと、アルディアを連れて後方へと下がっていった。
アルディアとエスメラルダが後方に下がった辺りで、ガブリエルも立ち上がり、一同の前に立ちはだかる。
「貴様……やってくれるな……」
アルディア達に向かってそう言うガブリエル。
「流石にあのレベルの攻撃を受けたらダメージは負うんだな?」
ガブリエルに対し、そう問いかけるザフィーア。
ガブリエルはフンッ、と鼻で笑いながら
「まぁ、お前達がトリトンとポセイドンを倒せたのは、よーく理解できたよ」
と言う。
そして、左手の手のひらを前に突き出すと、
「俺も少し、本気を出すとしよう」
そういうと、左手から水の環を作りはじめた。
見覚えのある水の環を見たザフィーア達は、
(まさか……)
と、心の中で呟く。
ザフィーア達の嫌な予感は当たっており、ガブリエルの左手から作り出された水の環は円を描き、どんどんとはっきりと現れ始める。
そして、水の環がはっきりと出来上がった時、水の環は渦となり、ザフィーア達の方へ放たれた。
ザフィーア達の予想通り、トリトンとポセイドンが合体技として使った魔法『サイクロン』である。
襲いかかるサイクロンの魔法を間一髪で回避するザフィーアとルービィ。後方でアルディア回復の為、介抱していたエスメラルダも、自身の方向に飛んでくるサイクロンの魔法を見て、急いでアルディアを引っ張り、こちらも間一髪で回避をしたのであった。
「まさか、サイクロンの魔法を使ってくるとはな……」
サイクロンを回避し、体勢を立て直しながらそう言うザフィーア。
「それも単独で、しかもトリトンとポセイドンよりも発動までの時間が短いっていうね……」
アルディアを連れてサイクロンを回避したエスメラルダも、後方の位置より、そう言う。
ザフィーア、エスメラルダの言葉を聞き、フンッ、と軽く鼻で笑うガブリエル。そして、
「トリトン、ポセイドンは俺の創ったクリーチャーだぞ? 俺の創ったクリーチャーが出来ることを創造主である俺が出来ないわけがないだろう」
とザフィーア達に答えた。
そして、ニヤリと笑うと、再び左手を突き出し、水の環を作り出す。
「またか!?」
続けてサイクロンの魔法を発動させようとするガブリエルを見て、そう言うザフィーア。
「っていうかこっちに向けて撃とうとしてない?」
ガブリエルの手が自身の方に向いていることに気がつき、エスメラルダはそう言う。
「アルディアは大丈夫?」
アルディアの様子を心配したルービィは、エスメラルダに尋ねる。
「いや、疲労でダウンしてるだけだから意識とかは全然あるけど、まだ動ける状態でもないよ」
エスメラルダはアルディアの状況について、ルービィに答える。
「ごめんね……」
アルディアは小さな声で、詫びの言葉を出した。
「まずいな。今アルディアを狙われるのは阻止したいところだな」
ザフィーアはそう言いながら、ガブリエルの方を見る。
ガブリエルはというと、既に水の環が完成しており、今にもサイクロンを発動させられる状態となっていた。
「もう完成したの!? 早いなもう……」
水の環を完成させたガブリエルを見たエスメラルダは、思わずそう言葉を漏らす。
「くそっ! どうするか……」
サイクロンの魔法発動間際の状況に、そう言葉を漏らすザフィーア。
すると、
「アタシに任せて」
そういうとルービィがガブリエルに向かって駆け寄った。
そして、ガブリエルに接近したルービィは、右足に炎の魔法を纏った。
水の環が完成し、アルディアに向けてサイクロンの魔法を今にも放とうとするガブリエル。
サイクロンの魔法が発動するその直前で、ルービィは炎を纏った右足でガブリエルの左手首を蹴り上げた。
アルディアの方に向けて突き出されていたガブリエルの左手。ルービィの蹴りにより、左手の位置がずらされ、サイクロンの魔法はそのまま上方へと放たれたのであった。
「た、助かった……」
サイクロンの直撃を免れ、エスメラルダは思わず安堵の声を漏らす。
一方、ルービィに手首を蹴り上げられ、サイクロンの魔法を阻止されたガブリエルは右手に持った槍に氷の魔法を纏わせる。そして、ルービィの方を見ると、無言でルービィ目がけて槍を突き出した。
ガブリエルの手首を蹴り上げるためジャンプをしていたルービィ。まだ地面に着地をしていないところにガブリエルの槍による攻撃が襲いかかり、とても回避できるような状態ではなかった。
自身に襲いかかる槍の矛先を見て、表情が強張るルービィ。
すると今度は、ガブリエルの槍攻撃を止めるため、ザフィーアがガブリエルと同じく刀身に氷の魔法を纏わせた刀で三叉の槍の矛先と矛先の間に刃を当て、ガブリエルの突き攻撃を止めた。
間一髪のところで止まった矛先を見て、ホッと胸を撫で下ろすルービィ。そのまま着地をすると、少し後方へ下がりガブリエルから距離を置いたのであった。
ザフィーアによって槍攻撃も阻止されたガブリエル。
「チッ!」
と舌打ちをすると、今度は右手に持っていた槍を横に振り、刀で槍を止めていたザフィーアを振り払った。
ガブリエルの行動により、壁面へと吹き飛ばされるザフィーア。そのまま部屋の壁に背中を激突させた。
壁面に背中を打ち付け、苦痛の表情を浮かべながらも立ち上がり、刀を構えるザフィーア。
一方、ルービィもまた、拳を構え、次の攻撃へと備えていた。
そんな両者を見てガブリエルは、
「どうやら俺は少しお前達の事を舐めていたようだな」
と言葉を発する。
そして、今まで右手のみで持っていた槍を左手も添えて、自身の前で構えると、魔力を溜め始めた。
(何をする気だ?)
そう思いながらガブリエルの出方を伺うルービィとザフィーア。
すると、ガブリエルの下部から水がどんどんと湧き出てきた。
どんどんと湧き出る水は槍を構えるガブリエルをどんどんと上へ押し上げていく。
ガブリエルが作り出した大量の水を目の当たりにしたザフィーア達は、大技が来るであろう事を予測し、身構える。
作り出した水によって、部屋の天井くらいまでの高さまで昇ったガブリエルは、
「これで終いにしてくれる!」
というと、左手を槍から離すと、槍を持っている右手を上に上げる。
そして、
「くらえ! タイダルウェーブ!!」
そう叫ぶと同時に、右手を振り下ろし、槍を前方へと突き出した。
ガブリエルが槍を突き出すと同時に、ガブリエルの下部に大量につくられた水は、津波となって、どんどんと勢いを増しながらアルディア達の方へ襲いかかる。
「しまった!」
迫り来る波を見て、思わずそう言葉を漏らすザフィーア。
しかしながら、今回の魔法『タイダルウェーブ』の水量から、部屋の中で回避するのは困難であり、迫り来る津波に、ただ受けるだけしかなかった。
ガブリエルの発動させたタイダルウェーブの魔法は、その後も勢いを増したまま、アルディア達に襲いかかる。
そして、タイダルウェーブによる津波は、アルディア達を飲み込んだのであった。




