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第22話

「……オーバードライブ」

 ガブリエルとの戦いが始まったと同時に、オーバードライブを発動させるアルディア。

 アルディアがオーバードライブを発動させると、エスメラルダ、ルービィ、ザフィーアは援護の態勢に入る。

「オーバードライブ……、伝説の失敗魔法か。俺のところに来る前に魔力でも溜めていたのか?」

 オーバードライブを発動させたアルディアを見て、そう話しかけるガブリエル。

 しかしながらアルディアはガブリエルの問いに答えることはなく、無言で銀のロッドより光線を放つ。

 アルディアの放った魔法『レイ』を身体で受け止めるガブリエル。防御が間に合わなかったということもあり、ガブリエルは少し後ろによろめく。

「成る程……。威力は流石だな」

 ガブリエルは体勢を立て直し、そう言葉にする。

 だが、アルディアは間髪を入れることなく、今度はガブリエルの下部死角位置から、銀のロッドを突き放つ魔法『リヒトゾイレ』を放つ。

 このリヒトゾイレもガブリエルの防御が間に合わず、ガブリエルは魔法の勢いに押され少し吹き飛ぶ。だが、先のレイ共々、トリトンやポセイドン相手に放ったとき程のダメージを与える事はできていなかった。

「ふふ……、いい攻撃だ」

 ガブリエルは体勢を立て直すと、にやりと笑いそう言う。

 そして、

「では、次は俺から行かせてもらおうか!」

 そういうと、右手に持った三叉の槍を勢いよく前に突き出す。

 ガブリエルが三叉の槍を突き出すと、突きの勢いに合わせ、矛先から光線状の水の魔法が放たれる。

 放たれた水の魔法は、勢いよくアルディア達の方へと飛んでいった。

 自身の方に飛んでくる水の魔法を飛んで回避するエスメラルダ、ルービィ、ザフィーアの三者。一方アルディアはというと、オーバードライブにより身体能力強化もされていることもあり、消えるような速度でガブリエルの攻撃を回避。ガブリエルの背後にまわると、レイの魔法で反撃をした。

 だが、このレイの魔法も、先の魔法と同様、ガブリエル相手に、決定打となるような効果は得られなかった。

「くっ……」

 トリトン、ポセイドンに比べ、明らかに手応えのない状況に焦りの様子を見せるアルディア。

 一方、ガブリエルはというと、

「ははは、いいぞ、いいじゃあないか」

 と、余裕の表情で戦いを楽しんでいる様子であった。

「なら、こいつもどう?」

 ルービィはそういうと、炎を宿した拳での正拳突き『火炎拳』でガブリエルの腹部を殴る。

 だが、ガブリエルはルービィの火炎拳を腹部で受けるものの、微動だにすることはなく、

「ふん……」

 と鼻で笑うと、左手より水の玉を作りだし、ルービィに向けて放った。

「うわあぁぁぁ!」

 ガブリエルの水の玉の魔法を受けたルービィは、声をあげそのまま壁面に向かって吹き飛ばされる。

 サファイアドラゴンの加護もあり、ある程度はダメージ軽減がされたものの、弱点属性の攻撃を受けたルービィには効果が大きく、吹き飛ばされた勢いで壁に激突したルービィは、苦しそうな表情を浮かべていた。

「ルービィ!」

 ガブリエルの魔法で吹き飛ばされたルービィを見て、そう叫びルービィのもとへ駆け寄ろうとするアルディア。

 すると

「待て、アルディア!」

 と、ザフィーアが叫び、アルディアを制止させる。

 ザフィーアの声に反応し、アルディアは足を止め、ザフィーアの方を向く。

 ザフィーアは続けて

「ガブリエル撃破の鍵はアルディア、お前のオーバードライブだ。だがそのオーバードライブも時間制限があるだろう? なら発動中は他の誰にも構わずただ真っ直ぐ、ガブリエルだけを見ろ! そしてガブリエルに攻撃を与えることだけを考えろ!」

「ザフィーア……」

 ザフィーアの叱咤に少し顔を俯けるアルディア。だが、直ぐにロッドを強く握ると、

「わかった。ごめんね」

 そういうと、ガブリエルの方を向き、そちらへ向かっていった。

 ガブリエルの方へ向かっていくアルディアを見届けると、ザフィーアは

「すまないアルディア。ルービィの事は、私たちに任せてくれ」

 そう呟くと、ガブリエルに吹き飛ばされたルービィの下へと向かっていった。


 再びガブリエルと対峙をするアルディア。

「ガブリエルッ……」

 ガブリエルを睨みながらガブリエルの名を呼ぶアルディア。

「何を怒っている? ここは戦場だぞ」

 ガブリエルは鼻で笑いながらアルディアにそう言う。

 そして続けて

「それとも何か? 誰も傷つかず、四柱帝であるこの俺を倒せると思っていたのか? この海帝ガブリエル、舐められたものだなッッ!!」

 そう言うと、右手に持った矛をアルディアに向かって突き出した。

 アルディアはガブリエルの突攻撃を回避。レイの魔法を放ち、反撃をする。

 ガブリエルは今度はレイの魔法を両腕で防御。受け止めた後、ニヤリと笑った。

「どうした? そんな攻撃では俺は倒せんぞ?」

 ガブリエルは挑発するかのように、アルディアにそう言う。

 アルディアは何も答えず、ただ、ガブリエルの方を見つめる。

 そんなアルディアに、ガブリエルは続けて

「時間制限付きのオーバードライブでその程度とはな……。やはり噂通りの失敗魔法か」

 と、更に挑発するかのような言葉をアルディアに投げかけた。

 アルディアは相変わらず何も言わず、ガブリエルを見つめ続ける。

 しかしながら、ガブリエル相手にオーバードライブを持っても有効打を出せていない事にアルディア自身も思うところがあるのだろう。アルディアは一度深呼吸をすると、銀のロッドを両手で構えた。

 そして、両手で構えた銀のロッドを高く掲げた。そして、高く掲げた銀のロッドの先端に魔力を溜めはじめた。

 それを見たガブリエルは、

「成る程、溜め攻撃か」

 と言う。そして左手の手のひらを前に出し、

「だが、俺がその溜めを待つ理由もないよな?」

 そう言うと、手のひらから拡散する水の弾の魔法を放った。

 ガブリエルの手のひらから放たれる無数の水の弾が次々とアルディアに襲いかかる。

 魔法の溜めに集中しているアルディアは回避行動も防御態勢もを取ることが出来ず、襲いかかってくる水の弾をそのまま受けることとなってしまった。

 サファイアドラゴンの加護があること、そして先にルービィが受けた魔法と比べ一撃の威力が小さいこともあり、致命的なダメージにこそなってはいないものの、次々と襲いかかる攻撃にアルディアは険しい表情を浮かべながら耐えていた。

「アルディア!」

 アルディアの状況を見たエスメラルダが咄嗟に水の防御魔法の紋様(ルーン)を描き、アルディアの援護にまわる。

 エスメラルダの防御魔法もあり、先ほどまでよりも攻撃のダメージが抑えられたものの、変わらず無数に、そして止むことのない魔法に耐えながらも、アルディアは魔法の溜めを続けていた。

 そして、ガブリエルの攻撃に耐えつつ一定の量まで魔力を溜め終えたアルディア。

 アルディアが溜めた魔力は、アルディアが掲げる銀のロッドの先端で、大きな光の玉となっていた。

 魔力を溜め終えたアルディアは、ガブリエルの攻撃を耐えつつも隙を見つけ移動する。

 今まで自身の攻撃に耐えるだけのアルディアが突然姿を消したことで、ガブリエルは攻撃を中断し、辺りを見渡しアルディアの姿を探す。

 アルディアを捜し辺りを見渡す課程で後方に振り向いたガブリエル。するとそこには、先ほどと同様、銀のロッドを天に掲げるアルディアの姿があった。

「そこか!」

 アルディアの姿を見つけ、槍を構えるガブリエル。

 しかしながら、ガブリエルが槍を構えたと同時に、アルディアもまた、銀のロッドを振り下ろし、溜めた魔力でつくった光の玉をガブリエルに向かって放った。

 自身に襲いかかる光の玉を見たガブリエルは、咄嗟に両腕を前に組み、防御の体勢を取る。

 アルディアの放った光の玉はガブリエルに直撃し、どんどんとガブリエルを押していく。

 ガブリエルもまた、

「おおおおおおおおおお!!!!」

 と声を上げながらアルディアの放った光の玉の攻撃に耐えていた。

 だが、今までの攻撃と異なり、オーバードライブ状態での溜め撃ちによる魔法。流石のガブリエルでもこの攻撃については一筋縄ではいかず、どんどんと押されていた。

 そんなガブリエルの様子を見て、エスメラルダ、ルービィ、ザフィーアは

(もしかしたらいけるのではないか?)

 と、内心希望を抱く。

 しかしながら、そんな希望は虚しく、ガブリエルは攻撃に耐えアルディアの放った光の玉を霧散させてしまった。

 そして、この攻撃が終わったと同時に、アルディアのオーバードライブもまた、効果が切れてしまったのだった。

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