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聖女物語  作者: 野ウサギ座
Chapter1 北の大陸
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第21話

 海底城の大広間にてトリトン、ポセイドンと交戦したアルディア達。

 トリトン、ポセイドンの連携攻撃に苦戦をしつつも、アルディアの『オーバードライブ』をはじめとし、アルディア達の応戦することで、トリトン、ポセイドンを撃破したのであった。

 トリトン、ポセイドンを撃破したアルディア達は、次に控えているであろう四柱帝ガブリエル戦に備え、少しの間、休憩を取ることとした。


 ―――海底城・大広間

「今、どれくらい時間が経っている?」

 大広間の壁にもたれかかりながら座り、エスメラルダに尋ねるザフィーア。

 エスメラルダは懐から懐中時計を取り出し、時計を確認すると

「えっと……、カスティードから出て大体4時間くらいかな?」

 とザフィーアに答えた。

「そうか……。全然時間はあるな」

「まぁ帰りの事も考えないとだから、20時間丸々使えるわけではないけどね~」

 エスメラルダは軽く笑いながらザフィーアに答えた。

「まぁ……、とはいえ体力回復させるだけの時間は十分だろう」

 ザフィーアはそう言うと、壁に頭を当て、上を向き、目を閉じた。


 一方、アルディアとルービィはというと、

「アルディア、凄かったね」

「ありがとう」

 こちらも壁にもたれかかりながら座り、会話をしていた。

 アルディアも回復したのか、起き上がり、意識も取り戻している様子であった。

「でも、やっぱり反動が辛いかな」

 アルディアはそういうと、右手を閉じて開いてを繰り返す。

「そーなの? まぁ完全に倒れてたしね」

 ルービィはアルディアにそう話す。

「うん。本当に疲れて眠たくなっちゃう感じが一気に来るって感じ……」

 アルディアもルービィにそう話す。

「なるほど~。じゃあ一気に決めないと危ないって感じだね」

 ルービィはそう言うと、顔を少し上に向け、フーッと一息つく。

「後は……やっぱり溜めにかかる時間もかな? 結局2発目のサイクロンも阻止できなかったしね」

 アルディアは切り傷まみれのルービィを見ながら、少しバツが悪そうにそう話す。

 ルービィはアルディアの様子を察したのか、

「アタシは大丈夫だよ!」

 と、笑顔でそう返す。

 そんなルービィの反応に、アルディアは

「……ありがとう」

 と、少し微笑み、礼を言った。

 するとエスメラルダが、

「その溜めの問題なんだけどさ、溜めた状態でガブリエルのところに向かえば問題ないんじゃない?」

 と横から声をかける。

 エスメラルダの提案に、

「あ~、確かに」

 と肯定的な反応をするルービィ。

「そうそう。道中のクリーチャーなら僕たちだけで十分だし、正直ガブリエルもこの先に居るのはわかってるわけだしさ」

 エスメラルダはアルディアにオーバードライブの溜め問題に関する提案を続ける。

 しかしアルディアは、

「ん~……」

 と少々渋い反応を見せる。

「気になる事でもあるのか?」

 アルディアの様子を見て、ザフィーアが声をかける。

「うん……」

 アルディアは少し困った様子で返事をする。

 そして続けて、

「オーバードライブを使う位の魔力を溜めた状態をキープするのって、難しいんだよね……」

 と話す。

 更に続けて、

「それにさ、オーバードライブを使う位の魔力を溜めちゃうとさ、他の魔法が使えないんだよね」

 と話をした。

「でもさ、他の魔法が使えなくても、ガブリエルに遭ったら直ぐにオーバードライブを発動させちゃえばいいんじゃない?」

 アルディアの話を聞き、そう提案をするエスメラルダ。

 しかしアルディアは、

「オーバードライブの効果がある間に倒せればいいけど、倒せなかった時、私動けないよ?」

 と答える。

「確かに、リスキーではあるな」

 アルディアの発言を聞き、そう話すザフィーア。

 そして続けて、

「相手は四柱帝。そもそも1回のオーバードライブ発動中に倒せるような敵ではないとしたら、あまり賢明な策ではないな」

 と話した。

 ザフィーアの話を聞き、エスメラルダは

「まぁ……確かに」

 と答える。

 するとザフィーアが

「まぁ、だが一つの策でもあるかもしれないがな」

 と、先ほどとは変わり、肯定的な意見も出す。

「アレ? 愚策じゃなかったの?」

 ザフィーアの肯定的な反応に、困惑した様子で尋ねるエスメラルダ。

「確かに賢明な策ではないとは思う。だが、四柱帝相手にオーバードライブを使わず有効打を出すのも難しいのも事実。賢明な策ではないにしろ、初手発動の策も視野に入れるのも手かもしれん」

「成る程ね……」

 ザフィーアの説明にそう返事をするエスメラルダ。

「勿論、初手発動の策を取るなら、効果が切れた後のアルディアのフォローも考える必要はあるが」

「まぁ、そうだよね」

 ザフィーアとエスメラルダがガブリエル戦の作戦を話していると、

「でもさ、アルディアがどーしたいかも聞くべきなんじゃない?」

 と、横からルービィが会話に入った。

 ルービィの意見に、

「確かに」

「結局オーバードライブ使って戦うのはアルディアだしね」

 と、ザフィーアとエスメラルダは納得する反応を示した。

「強力な魔法だからこその必要な時間と反動。欠陥魔法って言われてた魔法をあれだけ使える事自体、凄いことだもんね」

 エスメラルダは続けてそう言葉にする。

「まぁ、休憩がてら考えれば良いだろう……」

 ザフィーアはそう言うと、再び壁に頭を当て、上を向き、目を閉じた。


 ―――1時間後

「今、どれ位経った?」

 休憩の静寂を断つかのように、ザフィーアがエスメラルダに尋ねる。

 エスメラルダは懐から懐中時計を取り出すと、

「ん~、最後に確認した時から大体1時間くらいだね」

 と答える。

「そうか……」

 ザフィーアはそう言うと立ち上がり、

「そろそろ先に進もうか?」

 と一同に尋ねる。

「そうだね」

「OK!」

「私も大丈夫」

 エスメラルダ、ルービィ、アルディアもそれぞれそのように答え、立ち上がった。

 そして、一同は更に奥で待っているであろう、四柱帝ガブリエルの下に向かうため、歩き始めたのであった。


 ―――海底城・通路

 大広間を後にし、更に先に進んでいくアルディア達。

 大広間に向かうまでの通路とはうって変わって、こちらの通路ではクリーチャーと遭遇することは全くなかった。

 だが、先に歩みを進めていくたびに、何とも言えない妙なプレッシャーを感じるようになっていく。

 一歩一歩、歩みを進めるたびに強くなっていくそのプレッシャーから、一同は直感で感じ取った。

 "この先に、四柱帝ガブリエルが居る"

 と……。


 ―――海底城・神龍の間

 大広間から通路を歩き先に進むアルディア達。

 通路を進んだ先で、アルディア達は一つの部屋に辿り着いた。

 先ほどの大広間ほどの広さはない部屋ではあるが、そこそこの広さのある空間。そしてその部屋の装飾は明らかに今までの部屋とは比べものにならないほど厳かなものであった。

「この部屋は?」

 辺りを見渡し、そう言葉にするアルディア。

 すると、

「ここは俺の部屋だ」

 と、部屋の奥から声が聞こえた。

 その声に反応し、声のする方へ視線を向けるアルディア達。するとそこには、浅黒い肌に白鯨のような尾びれをした者が、玉座のような椅子に座っていた。

 玉座のような椅子に座っているその存在は、かつて一度、カスティードの海岸にて対峙をしたこともあり、ソレを目にした瞬間、一同は直ぐに理解をした。

 "ここは四柱帝ガブリエルの部屋である"

 と……。

「ガブリエル……」

 ガブリエルを目にしたアルディアは、ガブリエルの名を口にする。

「久しいな。半年ぶり、か?」

 ガブリエルはニヤリと笑いながら、アルディア達に話しかける。

 そして続けて

「まさかトリトンとポセイドンを倒して俺の下まで来る奴が居るとはな。俺の城に来れたのはあの海蛇サファイアドラゴンの仕業か?」

 と問いかける。

「……だとしたら?」

 ザフィーアはガブリエルを睨みながら答える。

「っていうか俺の城って……、ここ元々サファイアドラゴンと水魔達の城でしょ? 盗人猛々しいな……」

 エスメラルダもガブリエルの発言にツッコミを入れるかのように、そう話す。

「ふふ。水魔を人質に取って、俺の邪魔をしないようにしたのだがな。余計な事を……」

 ガブリエルはそう言うと、右手に三叉の槍を持ち、椅子から立ち上がる。

 そして、

「貴様らを殺った後、水魔達も皆殺しにする必要があるな」

 と、右手に持った槍の矛先をアルディア達の方へ向け、そう言った。

 ガブリエルが槍を向けると、アルディア達も身構える。

「ふふ。お前達もやる気だな。楽しませてくれよ? 何分、この2年間、一度も俺と対峙する者がいなかったのだからな」

 ガブリエルはそう言うと魔力を引き出し、アルディア達を威圧した。

 アルディア達はお互いにアイコンタクトをすると、アルディア達も戦闘態勢へと入った。

「……オーバードライブ」

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