取り憑かれた
果たしてあの水の悪神はどこからやって来たのか、全てが謎のまま終わらせてしまった。
だが何にせよ無事に平和が戻ってきそうだ。
「まあ無事じゃないんだけど」
そう、我らが麗しの女神さまは取り憑かれてしまいましたとさ。
黒い玉のようなものが浮遊して女神さまにべったりと引っ付いている。女神さまはうつむいて懇願してきた。
「…………とってください」
「むしろ融合してるみたいだけど無理に引き剥がして大丈夫か?」
「それもそうだけどさっきから耳元で何かつぶやいてきてる」
「なんだと?」
僕はそっと耳を傾けてみた。
〈ころす……ころす……うちゅうてききょうふでおまえをころす……〉
うちゅう、なに?ころしちゃうの?
「なんだこれ?どうなってんだ」
「わからないわ、殺すはなんとなくわかるけどうちゅうてききょうふのくだりがまだ翻訳できないの」
まあ水の恐ろしさはその質量だ、無限の質量と結びついて一体化して動くからこそ怖ろしいのであってここまでミニマム化したら太陽光もストレートに通してしまうだろう。
〈おまえころして……ははがみいきかえらせる〉
「死者を蘇らせるのか?流石に無理だろう」
〈できる!〉
「母神さまを生き返らせる?あなたまさか……」
〈めおとがみのちょうなん、うまれてすぐながされてそのままおおきくなった〉
そこで女神さまは何かに気づいたようだ。
「なんかごめんなさい」
〈ぜんもあくもめおとがみがうみしもの、ちょうなんであるわたしはうけいれるほかない〉
「知り合いか?」
「まあ何ていうか、大先輩?」
「それ、ダメなやつじゃん……」
「私達は戦う以外に分かり合う道がなかったのよ。これは神託よ、受け入れなさい」
「あんたがそう言うならそうなんだろう……なんかすごい疲れた」
一同は釈然としないままそこに立ち尽くした。