サイコパス
1対1の戦いで魚人の猛攻を止められず、あっさりと村人は屠られてしまった。
その後はもうなす術もなかった。
上陸した魚人達は軍隊のように統率がとれていた、無駄なく3対1になるように別れて行く。僕がさっきまで見ていた戦いでかかった時間はだいたい4,5秒くらい、そこからはもう圧倒的だった。
一体が高くジャンプして後ろの二体が左右に別れて攻撃する。猟銃を持ったおっちゃんが撃つが、やつらの散開する速さのせいで外してしまったようだ。
2発目を撃とうとする瞬間には爪で銃を弾かれてしまった。その瞬間に合わせて左右から高速で切りつけてくる。
攻撃の間合いに入ってから絶命するまでほぼ2秒かからないくらいだ。
そんな惨殺劇がそこら中で行われている。おそらく加護を持たない人達も蹂躙されていくだろう。
とまあ、自分だって今全速力で逃げていて、人の戦いなんてゆっくり観察していられる状況ではなかった。
僕は魚人達がまだ来ていない草むらに飛び込んだ。
そこからもう少し行くと原生林がある。だがまずいことに原生林に入って行くところを見られたようだ、息を潜めるのも空しく2匹の魚人が偵察に向かってきた。
「あったあったこの辺りにあると思ってたんだ」
原生林ならばしばしばある光景、野生のフジとクスノキが何十年も相撲のようなやりとりをしている個体が存在するのだ。
「イツキさまからもらったラーニングってさ、こう使うんだろ」
僕はフジとクスノキをみつめ握る。すると頭に声が響く。
「光合成、栄養分吸収をラーニング成功しました」
「巻きつきをラーニング成功しました」
「仁王立ちをラーニング成功しました」
「さて、とりあえず今はこんなもんでいいか」
ツルを加工して三股に広げ3つの石を巻きつきでしっかりと掴ませる、いわゆるボーラーという武器だ。
ぐーるぐると回してあさっての方向をキョロキョロしている魚人に投げつけた。するとうまく足を縛り上げるのに成功した。
「よっしゃあああ!」
ものすごい形相で笑いながら石を片手に走り寄り「カッパパンチ」で思い切り殴りつけた。
情けない声を上げながら許しを乞う魚人を何度も何度も殴る。
近づいてきたもう一体に石を投げて避けた先に銃の砲身を向けて撃ち抜いた。
「ギャアアアア!」
急所に当たったようでもがいている。そいつの首にツルを巻きつけ木に吊るした。当然爪は拝借した。
僕は興奮していた、自分を抑えずに思うがままに相手を屠っても誰も咎めない、この場においては正義ですらある。
罪の無い村人たちを蹂躙する悪いやつらをヒーローとして正義の側から裁いていい。最高じゃないか。
「いかん、新しい扉を開いてる場合じゃない、早く逃げないと」
他の魚人がこっちに向かってくるのを尻目に僕はわき目も振らずに走った。
「忍者」のジョブがいつの間にか「奮闘する敗北者」に変わっていた。なぜですか。




