↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/23

盗賊退治

 村から出ると、察知スキルの範囲を全開にして、村の周りを円を描くように周りながら、盗賊を探す。

 しかし、既に村から二十キロ程離れた所まで来ているが、見つかるのは弱めの魔物くらいで、いっこうに盗賊たちが見つからない。

 もしかして、盗賊の残党なんていないんじゃないかと、疑問に思ったときだった。

 察知スキルの範囲、ギリギリの所に、数人の盗賊の反応があった。

 昨日、ベヒモスを狩りに行った際、少し遠くに見えたが、確かこの先は小さな山があった筈だ。

 盗賊達の反応は、どれも強くは無いので、もしかしたら村を襲おうとした奴等とは別の盗賊かもしれないが、念の為、もう少し近づいてみる。


 その場所に近付くにつれ、盗賊の反応が増えてくる。

 その中に他の盗賊たちより少しだけ強いやつが2人いた。

 でも、とてもランク8の冒険者を倒せるような強さを持ってるようには感じない。

 コイツらは違うんじゃないか、とも思ったが、ミラやマリアみたいに、何か特別な力を持ってる可能性も捨てきれないので、とりあえず行ってみる事にした。


 山に入り、隠密スキルを発動して山の中腹辺りある、洞穴のような場所の近くへと到達し、側の茂みへと身を隠す。

 その入り口には、見張りであろう男の盗賊が三人いる。

 全員、此方に気付いた様子は無い。


 さて、どうしようか。

 一旦引き返して、エクスプロージョンで山ごと消し飛ばすのが一番手っ取り早いのだが、それだと中に居るかもしれない、盗賊に捕まった人達まで消し飛ばしてしまうし、何よりもつまらない。

 それに、ミラとサラから捕まってる人が居たら助けてほしいとお願いされてるので、その手段をとることはできない。

 となると、各個撃破していくしか無いのだが、気付かれて人質をとられたりしたら面倒だ。

 なら、隠密スキルを駆使しての暗殺が一番だろう。


 その辺に転がっていた手のひらサイズの石を数個拾う。

 それを手首の力だけで見張りの男の頭に投げ付ける。

 DEX(器用値)1000のわたしがこの距離で外す訳もなく、石は見張りの男の頭に命中。

 男の頭が吹き飛び、男は後ろに倒れて絶命した。

 突然の出来事に呆けた顔をしている残りの二人も同じようにして殺害する。


 そのまま数分程、身を潜めて待っては居たものの中から他の誰かが出てくる気配は無い。

 奥の方に数十人ほど、その更に奥に少し強い二つの反応がある。

 多分この二人が盗賊達の首領なのだろう。


 隠密スキルを解かないまま、堂々と洞穴の中へと入っていく。

 奥へと進むにつれて、次第に盗賊達の声が大きくなってきて、話してる内容が聞き取れるようになってくる。


「それにしてもあいつら遅いな」

「ああ、確かこの先にある村を襲いに行ったんだっけ。ついでに村の女で遊んでんじゃねぇの」

「かもな」


 どうやら、コイツらが村を襲おうとした盗賊の仲間で間違い無さそうだ。

 でも、コイツらにミラとサラの両親を殺せるような強さを持った奴は居ない。

 となると、さっき察知スキルで他の奴等より少し強い反応があった二人が能力持ちなのだろう。

 まあ、察知スキルの反応ではそこまで強くは無さそうなので、能力を使わせる前に殺してしまえばいいか。


「にしても、ボスたちは何であんな何もない村なんか襲いに行かせたんだ?」

「さあな、俺たちにはショウさんとシュウさんの考えなんか理解できねえよ。でも、あの人たちの指示で今まで間違ってた事なんて合ったか?」

「……いや、ねえな」

「だろ?この間だってあの人たちの指示に従ったから、姫様の誘拐なんて事に成功したんだ、今回だって何か考えがあるんだろうよ」

「だと良いんだけどな。どうも今回は嫌な予感がするんだよなあ」


 盗賊たちから少し離れた場所で、堂々と会話を聞いていると少し気になることがあった。

 それは会話の中に出てきたショウとシュウという名前。

 この名前、明らかに日本人の名前だ。

 察するに、そのショウとシュウとやらは、わたしのようにこの世界に召喚された人間なのだろう。

 何でその二人が盗賊なんてやってるのかとか、どうやってこの世界に来たのか、とかはどうでも良い。

 重要なのは、小説とかだと異世界に召喚される人間というのは、チートな能力を持ってる奴が多いということだ。

 王様に召喚された勇者三人も特別な力を持ってるみたいだし、マリアも将来は凄く強くなるような事を言っていた。

 この二人がわたしと同じ、チートな能力を持っていないという保証は無い。


 どうにでもなると思って緩めていた気を、引き締める。

 隠密スキルを使ってるので、手を出さない限り、気付かれる心配は無いので、そのまま近付いていって辺りを伺う。

 洞穴の中はサラス村の住人が全員、入れるほど広い。

 その広いスペースの中央で焚き火を囲んで話しているのが四人、隅っこの方で固まって酒を飲んでるのが十二人、盗賊に捕まったと思われる女達を犯しているのが八人、寝ているのが三人、合計二十七人と奥に居る二人。

 捕まってる人たちは助けなくてはならないので、できれば人質に取られる前に片をつけたい。

 一人だけなら人質にとられても、速攻で詰めより人質を傷つけられる前に殺すことが出来るのだが、複数人質にとられると片方を殺してる間にもう片方を殺されてしまうかもしれない。

 ミラとサラにお願いされたから、捕まってる人たちを見捨てる訳にはいかない。


 しかし、これだけの人数だと誰にも気付かれずに暗殺だけで済ませるのはちょっと難しい。何人かは殺せると思うが、突然仲間が死んだら、当然盗賊たちも警戒を始める。

 あの女たちが居なければ、姿を現して、堂々と正面から乗り込んで斬ることもできるんだけど、それも出来ない。

 かといって、無影一閃で盗賊達だけ一掃するのも無理だ。

 あれを使えばMPが空になって動けなくなってしまうため、奥に居る盗賊のボスと戦う事が出来なくなってしまう。

 ならば、気は進まないがやはりこれしかないか。


 全開にした威圧を盗賊たちに向けて放つ。

 それだけで全ての盗賊は気絶、中には呼吸が出来なくて悶え苦しんで死んでしまうやつもいた。

 雑魚の集団を相手にこれほど便利なスキルは他には無い。

 もっとも、これを使うと戦闘があまりにも簡単になってしまってつまらないので、積極的に使うつもりは無いんだけど。

 どうせなら、自分の手で直接戦った方が楽しい。

 そのうち、刀だけで万の兵士に挑むとかやってみたい。その構図を頭の中に描いただけで気持ちが昂ってくる。

 何処かで戦争が起こったりしないだろうか。戦争が起きれば嬉々として戦場に乗り込んで両軍を纏めて相手にして命のやり取りができるのに。


 ……ヤバイ。ちょっと落ち着こう。

 そんなことをしたら皆に迷惑がかかるから、やっちゃ駄目だ。


 どうも、ケルベロスと戦った後から、とにかく強い相手と戦いたいという気持ちが徐々に高まってきている気がする。

 虚弱体質だった地球でのわたしと違い、遥かに強いこの体になってお陰で、今まで表に出てこなかったわたしの悪い癖が、強敵と戦ったことで出始めているみたいだ。

 わたしのもの以外の有象無象なんて、どうなっても構わないが、一応は皆の願いを叶えるために、世界平和の旅をしてるんだ。自重しないと。


 にやけそうになっていた頬を叩き、気持ちを静める為に深呼吸をする。


「よし」


 気持ちも落ち着いた所で、死にかけてる盗賊に止めを刺す。

 やっぱり、無抵抗の相手を殺すのは楽しくないが、人質になりそうな人たちが居るんだから仕方ない、我慢しよう。


 奥の二人を除いた盗賊を全員殺して、捕まっていた人たちを解放する。

 しかし、捕まっていた女たちは精神が壊れているのか、一人を除いて目に精気は無く、虚ろな表情で、今はわたしの指示通り一ヶ所に固まっている。

 で、その一人というのが……


「ああ、私達を助けていただいてありがとうございます。勇者樣!夫も殺され、何度も死のうかと思っておりましたが、神の御告げを聞き、希望をもって今日まで生きてきた甲斐がありました!」


 泣きながら、わたしを拝んでくる金髪美人のエルフ。

 神の御告げだとか叫んでいてちょっと危ない人にしか見えない。

 その危ないエルフの言葉に、一塊になっていた女たちが反応をしめす。


「勇者樣?」

「助かったの?」


 口々にそう呟き、焦点が合っておらず、何も見てなかった目が死んだ盗賊たちを捉え、その目に光が灯り--爆発的な歓声が洞穴内に響き渡った。

 そして口々に枯れている声でわたしの事を称え始める。


 ……何これ。

 何でこんな事になってるの。

 村の人たちもそうだったけど、ちょっと頼まれて助けただけで、勇者認定なんていくらなんでも可笑しいでしょ。それにさっきまで、何も反応を示さなかったじゃん。

 洗脳?……そうとしか考えられない。

 いくら勇者スキルを持ってるからって、わたしが勇者なんて絶対にあり得ないし。

 でも、だとしたら一体だれが?

 それともこれが勇者スキルの効果なのか?


 この様子だと、勇者じゃ無いと否定しても聞く耳を持ってくれなさそうなので、取り合えず村の時と同じように、わたしの事を他言しないようにとだけ、言っておく。

 一応は全員が了承してくれた所で、大人しく待ってるように言い、奥へと向かう。

 それにしても、これだけ騒いだのに奥の二人がこちらに来る様子は無い。何故なのだろうか。


 その理由は奥へと進んで直ぐに分かった。

 わたしと奥の部屋との間を黒い壁が遮っている。

 試しに手を伸ばして、その壁に触れてみると、触れた瞬間に手が弾かれた。


「結界か」


 これが恐らく、あの二人のどちらかの能力なのだろう。

 試しに軽く殴ってみても、びくともしない。

 この世界の人だとこの結界を破るのは大変だろう。

 もっとも、わたしにはこの程度の固さなんて、関係ないけど。


「ふっ」


 結界に向けて回し蹴りを放つ。それだけでガラスが割れた時のような音を立てて、結界は崩れ去っていった。

 中に居た三人の視線、全てがわたしへと降り注ぐ。


 中にいるのは裸に剥かれて組伏せられ怯えている金髪の少女が一人と、少女を組伏せている、同じく裸の黒髪黒目の高校生位の少年が二人。

 顔立ちが似ているから兄弟か?

 まあ、どうでも良いか。


「おま--」


 何かを言おうとした少年の首を斬り飛ばす。

 そのまま、振り向き様に、何もない空間から銃を取り出した、もう一人の少年の腕を斬り飛ばす。


「ひっ、何で神様話が違っ--」


 最後に上から刀を振り下ろし、頭から股下まで斬り裂く。

 呆気ない、期待して本気でやったわたしが馬鹿みたいじゃないか。もう少し手加減すれば良かった。

 そういえば、最後に少年が何かを言ってたような気がしたが、何だったんだろうか。


 刀を鞘に収め、少女の方に近付く。

 見たところ、怪我は無さそうだ。


「ひっ」


 わたしが近付くと少女はひきつった悲鳴を上げ、怯えるようにして後ずさる。

 その姿に疑問を覚えるが、返り血で真っ赤に染まった自分の格好を見て納得した。

 どうみても、助けに来た人の格好では無い。

 誤解されても別に問題は無いので、着替えるつもりも無いけど。

 取り合えず、これで盗賊は討伐したし、捕まってた人たちも解放した。

 もう帰っても問題ないだろう。


「後、よろしく」

「えっ?」


 呆けている少女に後の事を押し付け、転送水晶を起動しようとアイテムボックスから取り出した所で--


「ま、待ってください!」


 --後ろから勢いよく抱きついてきた少女によって、転送水晶が手から滑り落ち--粉々に砕け散った。






主人公の現在の優先順位


ミラたち4人組の命>>4人の願いを叶えること≧戦いたいという欲求>>>>>自分の命>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>マリア≧その他の有象無象

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。