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旅立ち

短め。序章終わり

「ほ、本当にこんな部屋に泊まっても良いのでしょうか」

「凄まじいわね。どんだけ金を使ってるのかしら」

「私こんな部屋に泊まるのは初めてです」

「ふはははは、見ろ、ベッドがフカフカだぞ!」


 聞き込みをしながら、見つけた宿屋は一人一泊3万ギルという上級貴族族御用達の超高級宿。ここに泊まるために殆どの金を使ってしまったが悔いは無い。

 その大金に見合うほど設備は豪華で、部屋は広く、5人で一部屋でも十分な広さを誇っている。

 更には広大なお風呂にトイレまでついており、そして何より食事が食べ放題。流石は上級貴族御用達の宿屋だけあって、きちんと料理に調味料も使われており、地球のやつ程では無いが、上手い。わたし以外の4人は、こんな美味しい料理は食べたことが無いと、泣いて喜んでいた。この宿を出た後の食事がちょっと心配だ。

 それにしても、シャルロットは姓もあるし、どう考えても魔王領の貴族や王族っぽいのに調味料の掛けてある料理をた食べたことが無いのだろうか。 

 


「皆、先に風呂に入ってきて」

「マイカさんは入らないのですか?」

「後で入る」


 食事も終わり、お風呂タイムになったのだで、皆で先に入ってるように言う。

 皆で入るとゆっくりできそうに無いし。わたしは風呂にはゆっくり入りたいタイプなのだ。

 それにちょっと確かめたいこともある。


「分かりました」

「セリカとミラ、二人をよろしく」

「はい」


 我先にと風呂に駆け出したサラとシャルロットの面倒を二人に頼み、ステータス画面を出す。


 名前:舞華 Lv1000


 MP:1000

 STR:1000

 VIT:1000

 AGI:1000

 INT:1000

 DEX:1000


[スキル]

 二刀流 Lv100

 察知 Lv100

 刀術 Lv100

 行動制限解除 Lv100

 格闘 Lv100

 威圧 Lv100

 見切り Lv100

 自動回復Lv100

 状態異常耐性Lv100

 成長促進Lv100


 

 勇者Lv-

 採取Lv32

 料理Lv28


「やっぱり。何かあると思ったよ」


 表示されたステータスの2ページ目を見て、そこに見慣れないスキルがあるのを確認し、最初にステータスを見たときにその異常さに目をとられ、2ページ目に気付かなかった昨日の自分を恨む。


  勇者--それは世界が危機に瀕している時に現れる存在だ。危機に見舞われた人類を救い、弱者を救う正義の存在。断じてわたしのような自己中心的な人間ではない。


 思えば、最初からおかしかったんだ。

 《IDO》のゲーム開始時に何故かスキルが10個選べて、それを特に疑問に思わなかったり。偶々目についた、成長促進のスキルの性能がおかしかったり。

 この世界に来たときも、勇者として呼ばれた3人は将来性はあるが、今は特別な能力を持つだけの普通の人間だと聞いた。なのにわたしだけが最初から異常な性能をしている。


 それに、勇者の3人は、城でぬくぬくと生活しているなか、勇者を断った筈のわたしは何かに導かれるように、この世界で圧倒的弱者である奴隷を連れて、世界を救う為に旅に出る。

 この世界は一部のものたちを除いて、何もかもが低すぎる。だけどそれも全てわたし一人が頑張ればどうにかなることだ。

 レベルの低い人はわたしの奴隷になればいい。

 武器や防具、道具や料理の質の悪さも、わたしが増え続ける高ランクダンジョンの素材を片っ端から取ってくればいい。

 弱者である奴隷の開放もわたしがこの世界を支配してしまえばいいだけだ。わたしにはそれだけの力がある筈だ。


 ああ、本当に何で最初に気付かなかったんだろうか。

 最初に気付いていれば、もっと慎重に行動出来きた筈だ。

 ……いや、このスキルを持っている時点で、わたしがどう行動しようと、いずれはこうなる運命だったのかもしれない。


 なぜ、わたしなんだ。

 勇者なんてめんどくさいと言って断るような奴だぞ?

 誰かを救う何て興味も無い。

 世界平和なんてどうでもいい。

 わたしは自分と自分のものが幸せならそれでいい人間だ。

 勇者なんかになりたく無い。

 自分の好きなように生活したい。

 でも……


「二人はこの世界の人たちを救いたいっぽいんだよなあ」


 マリアの語った理由を聞いた時の二人の目は決意に満ちていた。

 二人は盗賊に襲われ両親を亡くしている。

 力が無くて大切な人を救えなかった。その事で自分を責めている。

 そして力が欲しいと願った。わたしもその気持ちは良くわかる。

 ただ、わたしと違うのは、わたしがその力で自分と自分のものを守れれば良いと考えてるのに対し、ミラとサラは優しく、力があるなら世界を、困ってる皆を救いたいと思っていることだ。

 シャルロットは分からないが、セリカはあの場に居たら、おそらくサラとミラと同じ想いになる筈だ。

 正直、わたしには理解できない想い。



「いやあ、いい湯だった」

「ちょっ、シャルロットちゃん、ちゃんと髪拭かないとダメだよ」

「ミラ、痛い、痛いってば」

「お姉ちゃん、私お風呂場で騒がないでっていったよね?」


 でも、あの子たちはわたしのものだ。わたしは自分のものは絶対に護る。そして、あの子たちの願いはなるべく叶えてあげたいと思っている。


 そうだ、悩む必要なんて無い。あの子たちが救いたいと言うなら、強くなりたいと願うなら、わたしはそれを叶えるだけだ。

 勇者とか平和とかどうでもいい。


「あっ、マイカさんお風呂空きました」


 わたしはあの子たちの願いを叶えて幸せにする。それだけだ。





 その晩は、全員で巨大な一つのベッドにまとまって眠ることになった。

 皆、疲れているのか、このベッドの寝心地が良いのか分からないが、夜行性だと言っていたシャルロットも含めて、横になるとすぐ眠ってしまった。


 そして、明けて翌朝の早朝。旅立ちの日になる。

 この宿屋での最後の食事だ、と皆して朝食を腹一杯詰め込んでから宿を出て、馬車を取りにまだ人気の無い冒険者ギルドへと来た。


「先ずは皆にこれを渡しておくわ」


 王都の裏口へ歩きながらマリアから渡されたのは、4人分の冒険者ギルドのギルドカードとわたしの分の商業ギルドのギルドカード、それと馬車の盗難防止用に、悪意を持って馬車に近付くと、自動で迎撃してくれる魔法具を貰った。


「ダンジョンにはパーティーに一人でも、ランク10の冒険者が居れば、どのダンジョンでも入ることは出来るから、そこの4人の分はランク1のままだからランクは自分で上げてちょうだい。流石にランク10のギルドカードはそんなに多くは作れないのよ。それとマイカには一応、商業ギルドのランク10のギルドカードを渡しておくわ。素材以外は冒険者ギルドでは買い取れないから、いらない武器や防具を見つけたり作ったりしたら、そっちに持っていってね。もしくは、露店を出して売ってもいいわよ」


 いや、露店を出す気は全く無い。

 わたしたちが行くのは人類が行ったことが無い場所だ。

 そんなところで採れるものを露店に並べてたら目立ちすぎる。とマリアに説明する。


「確かにそうね。それならギルドで買い取るのも目立ちそうね……分かったわ。もし何かを売るときは、昨日渡した通信符で私に連絡して。そうしたら転移水晶を使ってその場所に私が行って、直接買い取るようにするから」


 転移水晶って昨日、馬車を受け取った後にマリアが使ったあの水晶玉の形をした魔法具かな?

 あれ、便利そうだから欲しいんだよね。


「それ、欲しい」

「これはダメ。世界に1つしか無い貴重な魔法具なんだから」


 ダメ元で聞いてみたが、やっぱり断られてしまった。

 それがあれば移動が楽になるんだけどなあ。

 そのへんに落ちてないだろうか。


「それじゃあ、頼んだわよ」

「まかせて」


 話してる間に、王都の裏口にたどり着き、マリアから差し出された手を握る。

 そして、馬車に乗り込みゴーレムに行き先を告げる。

 最初の目的地は王都の南東20キロの地点にあるランク6のダンジョン。 調味料かあると良いなあ。


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