Prolog
薄暗い会場の静まり返った空気の中、一歩ずつ、青年が壇上へ向かう。
黒の統括礼装に身を包んだ銀髪の青年。
その背中を無数の視線が追っていた。
警察消防、自衛隊、政府関係者、医療機関。
そして――黎明。
いや…もう、その名ではない。
壇上中央で青年は静かに立ち止まった。
その目はどこか、かつての男によく似ていた。
後方席で車椅子へ深く腰掛けた男が静かにその姿を見上げている。
シュー……
微かに響く酸素音。
歳を重ねた銀髪。
だがその目だけは今も変わらない。
隣には黒髪の男。
こちらも年老いたはずなのに鋭さだけは消えていない。
青年がマイクの前へ立ち、大きく息を吸い込んだ。
そして静かな声が会場へ響いた。
「――国家災害統括特殊救助機関・暁」
空気が変わる。
“黎明”ではない。
誰もがその意味を理解した。
青年はまっすぐ前を見据えたまま続ける。
「初代総統を拝命します」
神代悠真
その名が会場へ広がると拍手の波が起こった。
後方、車椅子に腰掛けた蒼真は酸素マスク越しに静かに目を閉じた。
長かった。
本当に、長かった。
戦い続けた。
壊れながら、削れながら、それでも帰した。
仲間を。
命を。
帰る場所を。
その隣で蓮が小さく呟いた。
「……夜明けだ」
蒼真はゆっくりと目を開けた。
壇上には銀髪の悠真と隣には補佐官席へ立つ蒼志の姿。
壇上の奥には新たな暁の旗。
もう、自分達の時代ではない。
だからこそ。
蒼真は暁の旗を見つめながら少しだけ笑った。
「……やっと、朝になった」
その瞬間。
“怪物達の時代”が 静かに終わりを迎えた。
帰る場所を守る為に
ー国家災害統括特殊救助機関 ”暁” の継承者達ー




