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Log002:イニシエーション(Ⅱ)


目が覚めると、そこはログハウスの中だった。

窓はなく、代わりに暖炉とテーブルの上の燭台が灯りを務める。


それらが全て横倒しになっている。


(あれ……寝ている……)


気がつくと、体が起こせないぐらいに怠い。

ブランケットでさえ、柔道の授業を思い出す程に重い。


手も、見慣れたものより幼く、小さい。


(これって……)


誰かに憑依している。

身体は鉛のように重いが、動かせなくはない。


唐突に喉に鋭い異物感を覚え、咳き込む。

恐らく、憑依先の『少年』は風邪をひいているのだろう。


探索を諦めて元のベッドに戻る。

横になるだけでも辛さは大分マシにはなった。


音がするものといえば暖炉の薪が爆ぜるぐらいか。




静寂の中で自分の身に起きている事を整理する。


(そういえば、試練だと言ってたな)


この少年の意識を間借りしている現状を

『そういうものだ』と安易に飲み込んでしまっている。


魔法的な何かによって

小説でよく見る異世界転移(シチュエーション)に陥った。


この先入観から打破すべきである。


(……やっぱり文字が全然読めない)


窓辺に置かれた本を手にとって読んでみる。


しかし、模様とも判別し難いシミのようなものが並んでいるだけで

読めたものですらない。


しかし、体感覚からの異変を感じ取る。

困惑、羞恥、それとほんの一匙の衝動。




(……)


当たりであった。

どうやら、身体の持ち主の感情を探り当てた。


普通の人であれば、そんなものは読解の手掛かりとはならない。

しかし、彼はこの点において余人とは異なるセンスを持っている。


一旦視覚情報を捨てて、内側からの声を探り出す。


(……マジか、これ官能小説かよ)


丁寧に、身体の持ち主から湧き上がる記憶から

意味記憶だけ抽出して、文字の法則性を探り当てる。


幸いにも、集中力を高める自然音があったお陰で

割と短時間で模様の意味が理解できた。


と、同時に元の窓辺に戻しておく。




(それはさておき、確か課題は)


1ナナイが日本円に換算して何円か。

文字が判別できた以上は、この時点でゴールだと思っていた。


が、そうはいかない。


この家にあるものといえば、燭台に炊事用の盛り土。

居間と土手に区画が分けられ、殆どの道具が木などの自然物から作られている。


この家は、文明から離れた位置に存在していることを意味する。

当然、文字も先ほどの工◯本以外に見る事はできない。




(……駄目だこりゃ)


大人しく寝ていたほうが良いらしい。

どうやら自分は運が悪かったらしく、課題を達成できそうにない。


(身体も異常に怠いし、まあ仕方ないか)


これまでの緊張が解け、嘘のようにリラックスできた。

すると余計な考え事が泉のように湧いて出てくる。


家族のこと、あの『事件』のこと

自分が代わってあげれたらという後悔


あれ以降に見るようになった『異常存在』等




(あれ、そう言えばなんか身に覚えのないことも……)


さっきから不規則に聞こえる何か。

もう少しで掴めそうになるところで、別の音を聞く。


(足音だな)


妙に聞き覚えがある。

これは身体の持ち主からの確信。


誰かが帰ってきたらしい。


◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎(ただいまー)


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