表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

Log-001:イニシエーション


地下鉄の出口の階段を抜けると

数十分ぶりの太陽に照らされる。


南向きの大通りで

両側に建っているビル群から影が提供されない。


見慣れない都市に、春にしては強過ぎる暑気。


「ふぅ……」


既に開けられた封蝋付きの封筒を握り

青年は辺りを見渡す。


手紙の住所はここから約5分の

おそらくこのビル群のどれか。


(ええと、地図からだったら)


呆気なく目的地が見つかった。

ビル群の中でも一際高い、ガラス張り。


5分歩いて、ビル名も照合、勿論一致した。


キャリアアップ授業でやった『5分前行動』が

悉く無駄になった瞬間である。


(てっきり裏通りの小汚い雑居ビルと思ってたけど)


自動ドアは拒む事なく彼を迎え入れ

待ち構えたと言わんばかりにボタン押下と共に昇降機の扉が開く。


ガラス張りの外とは打って変わって

快適なエレベーターの旅。


封蝋の封筒から手紙を取り出す。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



我々の秘儀に参集せよ。


我々と共に試練を乗り越えよ。


全てを乗り越えし者に

我々は『一つの奇跡』を授けよう



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



然もありなん。


いくら詳細に契約条件が記載されていようが

『秘儀』の二文字で一気に胡散臭くなる。


それでも青年、稗島秋穂(ひじまあきほ)には

無視できない言葉があった。


(奇跡、よく分からないけど

 本当に奇跡で合っているなら冬太(とうた)も)


目的の階に着き、静かに扉が開く。


一歩目から一切音がしない。

照明は暖色系で統一され、木目まで見えるアクセントのある壁


品の良い絵画がいくつか飾られた

まるで異世界のようなフロア。


二つの防音扉の間にある受付へと向かう。

封蝋を確認したのか、防音扉へと案内される。


「一つ質問いいですか?」

「はい、なんでしょうか」

「あの……募集要項に『法衣』があったんですけど

 そういうの用意できなくて」

「大丈夫ですよ、それは任意でございますので

 それに、必ずとも必要とは限りませんので」


重い扉を両手で押して開く。

先程の営業スマイルの人に騙されたと認識した。


(うわ……)


印象は、ちょっと前に話題になった渋谷のハロウィン。

各々が、いかにもそれっぽい法衣を身にまとい、杖を持っている人もいる。


誰も入ってきた秋穂に興味がないので

ずっとテーブルに置かれたドリンクを片手に談笑を続けている。


会議室(コンベンションホール)と聞いていたが

これでは冠婚葬祭に使う大広間である。


『皆様、我々の秘儀に参集していただき

 誠にありがとうございます』


壇上に設けられたマイクからの声に一気に静まり返る。

何故か扉から鍵の閉まる音までする。


『我々は貴方達の意思を歓迎いたします』


誰が喋っているのかと前の方へ行ってみる。


司会の印象は彼らと異なり

まるで自分のような一般的な外行きの服装。


『しかしながら、我々の試練に耐えうるか試さねばなりません』


『今から全員に『参集』を行ってもらいます

 そして、ある一つの課題を与えます』


小声で入信儀礼(イニシエーション)だと呟くのが聞こえた。

誰も彼も期待しながら司会に注目する。


『1ナナイが日本円に換算して何円か

 これに回答してもらいます』


会場がどよめく。

確かに変な課題だ。


「おかしい、ペーパーテストとかじゃないんか」


小声の主は彼等の中でも一際『ガチ』な格好をしていた。

その後もブツブツと呪文のような何かを確認するように唱えている。


『それでは、試験開始です』


突然停電したように真っ暗になる。

その動揺は自分だけでなく、いろんな方向から驚きの声が上がる。


しかし、誰一人として見えない。

完全な暗闇は、次の習慣に落下と見紛うほどの幻覚に変わる。


叫び声は散り散りになっていく。

あまりの恐怖に強く瞑るぐらいしか出来ない。


(父さん……母さん……冬太……!)


どれだけ墜落したか分からない。

感覚が再び元の静かな暗闇に変わる。


恐る恐る目を開けると

丸太材ログが剥き出しの見知らぬ天井が映っていた。


続きます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ