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緊急入院⑥ 三月上旬 治療法の決定

 さて、消灯時間は決まっていて21時には電気が消える。そこで寝ようが寝まいが個人の自由だが、朝六時には電気がつきバタバタと騒がしくなる。


 看護師さんも容赦なく来てバイタル測定やら、採血やら、色々と処置を始めるので強制的に起こされることとなる。

 そうなると、それなりの睡眠時間を確保するには消灯時間くらいには寝る準備に入るのが理想なのだ。

 

 ただ、初日に関してはそんなサイクルなど当然知る由もなく。

 そして、治療の恐怖を考えると明日が来てほしくなくて、寝るという選択が中々出来なかった。

 

 しかし、さすがに色々ありすぎたので疲れ果てていたのだろう。慣れない固い枕とベッドで不快感を感じながらもウトウトとし始める。

 

 だが、ふと眠りに落ちそうになる際に邪魔してくるのは騒音だった。


 同室内での、いびき、独語、吸引の音。

 しかも、ベッドは廊下側でナースステーションに近い部屋だった為、何かと廊下からも音がバタバタ聞こえてくる。

 

 ウトウトしても音で覚醒してしまうを繰り返し、結局私は一睡も出来ず朝を迎えてしまった。

(入院時には耳栓必須だよ!覚えておこうね!)


 ちなみに前のベッドのじいちゃんは、朝四時くらいには覚醒して歌ったりしてた。その度に看護師さんに怒られてた。

 


 そんなこんなで、グッタリしている私のところに担当の看護師さんが来た。


「おはようございます。どうですか、眠れました?」

「いや……全く寝れなかったです」

「ですよね……すいません。今日には別のお部屋に移れるとは思うんで……」


 流石に看護師さんも察していたのか、部屋の変更の手配をしてくれていたようだ。ありがてえ。


「八時ぐらいから朝食で、その後に先生来られますんで」

「なんか全然食べられる気がしないんですけと……」

「無理なく、食べられるだけ食べて下さい。しばらく点滴も繋ぐので」


 点滴生活か。寝れなかった要因の一つに点滴の不快感もあるんだけどな……と思いつつも、ご飯が食べれないことには仕方がない。

 早く口の症状回復しないかなあと思っていると朝食が運ばれてきた。


 そして、その朝食を見た心の中の第一声。

 "あちゃー"である。


 まあ、仕事柄見慣れている。

 病院では移行食と呼ばれていたが、私達ではいわゆる"ムース食" "ペースト食"と呼んでいるものにほぼ相違はなかった。


 主食は全粥。

 おかずは、全部お惣菜の味のついたプリンのようなものと言えばわかりやすいだろうか。

 咀嚼をしなくてもよい。飲み込みやすい。私みたいに口の症状が出ている人の為の、致し方ない食事である。


 ただ、お察しの通り。めちゃ、マズイ。

 特に、松茸土瓶蒸し風とかいう格好つけたやつは嗚咽がするレベルで不味かった。

 どこに土瓶の要素がついてるのか聞いてみたい。"〜風"ってつけとけば許されると思うなよ?


 一口ずつ味見をしたが口が動かない云々以前に受けつけられず、お粥と練り梅を少し、あとヨーグルトだけを食べて終了。


 状態としては、寝たきりレベルの老人と変わらないんだなと思うとめちゃくちゃ悲しくなった。前のベッドのじいちゃんはムシャムシャパン食ってるし。


 病気の症状に加えて、環境の変化。不眠。食事形態。点滴の不快感。私のメンタルは次々と攻撃を加えられて再度ブレイク。

 となると、勿論私が血漿交換などという首ぶっ刺し治療に耐えられるはずもなく……


 そこで、先生登場。


「おはようございます。ご調子はどうです?」

「全然眠れなくて……眠気と倦怠感がとにかく凄いです……」

「環境の変化もありますからねえ……そんな状態で申し訳ないのですが、治療方法のお返事を頂きたいのですが。血漿交換をするとなると、今から手配しないと出来ないので……」


 正直、ギリギリまで迷ってた。というより、色々と決断をする気力みたいなものがなかった。

 そして、反射的に出てきた言葉はこちら。


「点滴治療の方でお願いします……」

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