BATTLE:006【決着! タッグバトル!!】
「ターンエンドだ」
ゴウキのターンが終わり、続いてカイトのターンである。
「俺のターン、メインドロー!」
しかし、【インセクト・ハーム】のアタックアビリティによってフォースが回復しない。
「手札を1枚フォースチャージして、更に追加ドロー!」
回復しなかったフォースと未使用のフォースが1枚ずつ。
バトルフェイズを開始する際にはフォースを1枚消費しなければならないため、このターン中はフォースを消費してガーディアンを召喚することはできない。
「だが、やりようはある!」
だがカイトの瞳に、諦めの感情などなかった。
「手札からドメインカード【ディヴァイン・サンクチュアリ】を発動!!」
【ディヴァイン・サンクチュアリ】
【起】(COST:自分の手札のSF【2】以下のガーディアンカードを1枚選んでジャンクゾーンに送る)
┗あなたのターン、コストを支払うことで発動できる。そうしたら、この効果でジャンクゾーンに送ったガーディアンカードのLPの半分の数値だけ、あなたは自分のアタックガーディアンをリペアする。
「【ディヴァイン・サンクチュアリ】の効果発動! ディヴァイントライブの力の源である手札を捨てる事で、リペアさせる!」
リペアとは、DGの値を減少させる効果のこと。
DGが減少すればその分だけ、LPが増加する。
カイトは横目でイクサの手札を見る。
カイトの視線に気づき、イクサは自分の手札を見る。
タッグプレーヤーが共有できるのは、チャージゾーンとジャンクゾーンと、そして……手札。
(なるほど、そういうことか!)
イクサはカイトに頷き、自分の手札を1枚選んでジャンクゾーンに送る。
「俺が手札を1枚捨てるよ、カイト!」
「ああ。お前のガーディアンの力、しっかり受け取るぜ!」
カオストライブはアタックアビリティを1つしか持たない代わりに、LPが平均以上に高く設定されている。
イクサが捨てたのは【カオス・ソード】。
SF【2】で、LPは2500。
通常、SF【2】のガーディアンの平均的なLPは2000である。
LPが大きければ、当然回復する数値もより大きい。
「よって、【ディヴァイン・シールダー】のLPは1250回復する!」
「なんだと?!」
ゴウキは目を見開いた。
【ディヴァイン・シールダー】
DG【500→-750】
LP【500→1750】
「サイコロを振る!」
カイトが振ったサイコロの目は……【2】
【ディヴァイン・シールダー】
【1】【3】【5】……相手のアタックガーディアンに300のダメージを与える。
【2】【4】【6】……相手のアシストガーディアンに1000のダメージを与える。相手がバトルフェイズ中にカウンター効果を発動しなかったら、あなたは自分の山札からカードを1枚ドローする。
「フォースを1枚消費して、バトル!! 【ディヴァイン・シールダー】のアタックアビリティにより、【ミラージュ・スパイダー】に1000のダメージを与える!」
【ディヴァイン・シールダー】は飛び上がり、【ミラージュ・スパイダー】に自身の盾を投げつけた。
〈ハァァァ!!〉
〈キシャアァァァァ!!〉
盾が【ミラージュ・スパイダー】に命中した。
【ミラージュ・スパイダー】
DG【0→1000】
LP【1000→0】
【ミラージュ・スパイダー】はジャンクゾーンに送られた。
「【ミラージュ・スパイダー】、撃破!! そしてバトルフェイズ中にカウンター効果が発動されなかった事により、カードを1枚ドローする!」
カイトはカードを1枚、ドローして手札に加えた。
「ターンエンドだ」
カイトのターンが終了したことにより、【インセクト・ハーム】のアタックアビリティの効力が消え、フォースが1枚回復した。
「俺のターン、メインドロー! フォースチャージして、更に追加ドロー!!」
さて、どうするか。
イクサは手札を見る。
たとえ体制を立て直せたとはいえ、流石にもう下手に攻撃はできない。
勝利に急げば急ぐほど、自分の首を絞めてしまう結果になるだろう。
しかし早くしないと、もしかしたらナミに何か危害が加わるかもしれない。
そうやって焦りが生じ、マトモに思考することすら難しい。
すると、
「なあ、イクサ。今、ちゃんとカードゲームを楽しめてるか?」
「……え?」
カイトに唐突に話しかけられ、イクサは目を丸くする。
やがてカイトの言葉を理解し、眉間に皺を寄せる。
「楽しめるわけないだろう!」
「そうか? 俺は割りと楽しんでるぜ。この負けるかもしれない状況をどう覆すか、そう思ったらワクワクしないか?」
「何をそんな悠長な……早くしないとナミが――」
「へいへい、それは分ーってるよイクサ。早乙女さんを助けたいのは俺も同じなんだから」
「だったら、なんでそんなこと……」
「ん〜? そんなの、まーたお前が何か難しいことを考えてる顔してるからだよ。ほれ!」
カイトはイクサの眉間を指で小突く。
「こーんなに皺寄せてさ。そんな難しいことでもないだろ。今の俺達がやることは只一つ。このバトルを勝つ! それだけ考えてりゃ十分だ」
「このバトルを、勝つ……」
「そうだ。勝てなかったら、元も子もないだろ」
カイトは「フーッ」と一息吐く。
「カードゲームってのにはな、理屈なんていう難しいものは必要ないんだ。勝つのに必要なのは3つだけ」
そう言うと、指を三本立てる。
「1つ、カードを信じること! 2つ、バトルを諦めないこと! そして3つ、ゲームを楽しむこと!」
カイトは小さく笑う。
「カードゲームってのは楽しんだもん勝ちだ。だから純粋に楽しめばいい」
そしてイクサの肩に手を置く。
「それでも苦しい時は、周りをよく見ろ。隣には俺がいるんだ、困った時こそお互い様、だろ?」
そう言って、自分の手札からカードを1枚選んでイクサに突き出す。
「カイト……」
イクサは、自分の力を過信しすぎていたかもしれない、そう思った。
今は二人で協力しなければいけないにも関わらず、自分自身の力のみでどうにかしようとしていた。
カードゲームを、全く楽しんでいなかった。
カイトの言うように難しく考えることはない。このバトルに勝つ。それだけで良い。
相手が連携してきている以上、こちらも互いの意識を合わせなければならない。
カイトと同様に、まずはゲームを楽しもう。
「……カイト、ありがとう」
「何がだ? 俺は当たり前のことを言っただけだぜ?」
カイトは心底不思議そうに首を傾げる。
その様子に、イクサは小さく笑う。
ああ、これがカイトだな。
そう思う中で、消えかけていた闘志が戻ってきた。
「カイト。このバトル、必ず勝つぞ!」
イクサはカイトが突き出していたカードを受け取り、覚悟を決める。
「ああ。んじゃまあ、まずはこのターンから制することにしようぜ?」
どうやら二人共、完全にスイッチが入ったようだ。
イクサはカイトから受け取ったカードを見つめる。
カイトから借りた力。勝つために手にした、仲間の力。
「サモンフェイズ!」
自分のフォースとカイトのフォースを消費し、カードを掲げる。
「フォースを2枚消費して、アタックガーディアン【ディヴァイン・ジェネラル】を召喚!!」
大斧を持った青い甲冑の戦士が出現した。
しかし【ディヴァイン・ジェネラル】はカオストライブではないため、魂の継承はできない。よって、【カオス・シューター】と【カオス・ロアー】はジャンクゾーンに送られてしまった。
因みに、それまで下にアンダーカードを置いていたガーディアンカードがジャンクゾーンに送られると、アンダーカードも一緒にジャンクゾーンに送られる。
【ディヴァイン・ジェネラル】
SF【2】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【ディヴァイン】
DG【2000】
LP【2500→500】
「【ディヴァイン・ジェネラル】のポテンシャルアビリティ発動!!」
【ディヴァイン・ジェネラル】
【ポテンシャルアビリティ】
【自】(あなたのセットフェイズ開始時)
┗1ターンに一度、あなたの手札が8枚以上ならば、このカードは1000リペアする。
【ディヴァイン・ジェネラル】
DG【2000→1000】
LP【500→1500】
イクサとカイトの手札はそれぞれ4枚ずつ。合わせて8枚。
手札の共有であるからこそ、この効果が最大限に活かせる。
「ダイスステップ、サイコロを振る!」
イクサのサイコロの目は、【5】。
「【カオス・チャージャー】のアシストアビリティにより、フォースを支払わずにバトルフェイズ!」
【ディヴァイン・ジェネラル】
【1】【2】【3】【4】【5】【6】……手札が8枚以下なら、相手のアタックガーディアンに1000のダメージを与え、9枚以上なら、250のダメージを与える。
「【デスドラザウルス】に1000のダメージを与える!」
【ディヴァイン・ジェネラル】は大斧を【デスドラザウルス】に向かって投げ飛ばした。
〈フンッ!!〉
大斧が【デスドラザウルス】に命中した。
〈グギャアァァァ!!〉
【デスドラザウルス】
DG【0→1000】
LP【1500→500】
「これで形成逆転、ターンエンド!」
そして、【ミラージュ・スパイダー】によって封じられていたイクサのフォースが1枚回復する。
「チッ、何だか知らないけど、あまり調子に乗らないことね。私のターン、メインドロー!!」
ダイナのターンだ。
「フォースチャージして、追加ドロー! 更に手札からアシストガーディアン【ジュラシック・アーミー】を召喚!!」
背中に刀や銃を背負った、小さな恐竜が出現した。
【ジュラシック・アーミー】
SF【0】
GT【ノーマル/アシスト】
Tr【ジュラシック】
DG【0】
LP【600】
「【ジュラシック・アーミー】のアシストアビリティを発動!!」
【ジュラシック・アーミー】
【アシストアビリティ】
【起】(COST:自分の手札を1枚選んで、裏状態で自分のチャージゾーンに置く)
┗あなたのターン、コストを支払うことで発動できる。この効果で置いたカードは、自分のエンドフェイズ時に表状態にする。この効果は1ターンに一度しか発動できない。
「このカードを、チャージゾーンに裏向きで置くわ」
フォースを裏状態でチャージゾーンに置いた。
これで次のターン、ゴウキはSF【3】のカードが召喚できることになる。
「さあ、サイコロを振るわよ!」
ダイナのサイコロの目は、【6】
【デスドラザウルス】
【2】【4】【6】……相手のアタックガーディアンに、500のダメージを与える。
【1】【3】【5】……相手のアタックガーディアンに、250のダメージを与える。
「フォースを1枚消費して、バトル! 【ディヴァイン・ジェネラル】に500のダメージを与えるわ!!」
【デスドラザウルス】が【ディヴァイン・ジェネラル】を踏み潰した。
〈グオォォォォ!!〉
〈グッ!!〉
【ディヴァイン・ジェネラル】
DG【1000→1500】
LP【1500→1000】
しかし、まだジェネラルは【デスドラザウルス】よりLPが500高い。
まだまだ大丈夫だろう。
「ターン、エンドよ」
「ダイナ、上々だ。奴らは勢いづいてきたようだが、やはりまだ甘い。俺のターン、メインドロー!」
ゴウキは手札にカードを加える。
「お前達では、我々の連携は崩せない。フォースチャージ! 追加ドロー!!」
加えたカードを見て、ニヤリと笑う。
「それをこれから教えてやろう。フォースを3つ支払い、アタックガーディアン【ワーム・ストライク】を召喚!!」
〈キチキチキチィ!!〉
耳障りな羽音を響かせる巨大な蟲が現れた。
【ワーム・ストライク】
SF【3】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【インセクト】
DG【0】
LP【2500】
「じわりじわりと、命が削られていく恐怖に絶望するがいい。サイコロを振らせてもらおう!」
サイコロの目は、【4】を示した。
【ワーム・ストライク】
【1】【2】【3】……相手のアタックガーディアンに500のダメージを与える。
【4】【5】【6】……相手のアタックガーディアンに【寄生能力】を付加する。
「フォースを1つ消費し、バトルだ」
〈キチキチキチィ!!〉
【ワーム・ストライク】は【ディヴァイン・シールダー】の背後に飛び付く。
そして、針状の尾を【ディヴァイン・シールダー】に突き立てた。
〈うぐぉ?!〉
【ディヴァイン・シールダー】の体内に何かが注がれていく。
……おぞましい光景だ。
【ディヴァイン・シールダー】
DG【-750】
LP【1750→875】
「なっ、なんでLPが減っているんだ?!」
「これこそが、【ワーム・ストライク】が【ディヴァイン・シールダー】に付加させた寄生能力だからだ! トライブアビリティ発動! 行動不能の恐怖!!」
【ワームストライク】
【トライブアビリティ】
【自】(相手のアタックガーディアンが寄生能力を付加された時)
┗相手のアタックガーディアンは以下の効果を得る。
【寄生能力】
【永】
┗1ターンに一度、自分のアタックガーディアンのLPは半分にダウンする。
「クククッ。相手のLPが高ければ高いほど、この効果は絶大だ」
「くっ、そんなの……次のターンに別のガーディアンを召喚すればいいだけの話だ!!」
「ほう……。ならばターンエンドだ」
「俺のターン、メインドロー!」
「この瞬間、寄生能力が発動する!」
【ディヴァイン・シールダー】
DG【-750】
LP【875→437】
「くっ、フォースチャージして、更に追加ドロー!!」
カイトは手札にカードを加える。
「フォースを3つ消費し、アタックガーディアン【ディヴァイン・パワード】を召喚!!」
イクサのフォース1枚とカイトのフォース2枚を消費して、剛腕を備えた青い甲冑の戦士が現れた。
【ディヴァイン・パワード】
SF【3】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【ディヴァイン】
DG【-750】
LP【3000→3750】
「サイコロを振るぜ!」
カイトのサイコロの目は、【1】
【ディヴァイン・パワード】
【1】【3】【4】……相手のアタックガーディアンに1000のダメージを与える。
【2】【5】【6】……相手の山札からカードを5枚、ジャンクゾーンに送る。
「フォースを1枚消費して、バトルフェイズ! 【ワーム・ストライク】に1000のダメージ!」
【ディヴァイン・パワード】の鉄拳が【ワーム・ストライク】にヒットする。
〈ハアァァァア!!〉
〈グギュルルゥ!〉
【ワーム・ストライク】
DG【0→1000】
LP【2500→1500】
「これで俺はターンエンド!」
「よし、俺のターンだ。メインドロー!」
イクサのチャージゾーンにはフォースが3枚。
フォースチャージすれば、4枚となる。
「フォースチャージして、追加ドロー!! フォースを4枚消費して、アタックガーディアン【カオス・スマッシャー】を召喚!!」
黒い甲冑に身を包んだ戦士が出現した。
「【ディヴァイン・ジェネラル】とはトライブは違うけど、共に戦ってくれた仲間だ! その気高き魂は、【カオス・スマッシャー】に受け継がれる!! 魂の継承!!」
【カオス・スマッシャー】に【ディヴァイン・ジェネラル】の能力が受け継がれた。
【カオス・スマッシャー】
SF【4】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【カオス/ディヴァイン】
DG【1500】
LP【4000→2500】
「サイコロを振る!」
イクサのサイコロの目は【4】
【カオス・スマッシャー】
【1】【2】【3】【4】【5】【6】……手札が8枚以下なら、相手のアタックガーディアンに1000のダメージを与え、9枚以上なら、250のダメージを与える。
【4】……相手の山札からカードを10枚、ジャンクゾーンに送る。
「【カオス・スマッシャー】と【ディヴァイン・ジェネラル】のアタックアビリティが発動!! デッキからカードを10枚ジャンクゾーンに送り、【デスドラザウルス】に250のダメージを与える!!」
【カオス・スマッシャー】の手に【ディヴァイン・ジェネラル】の大斧が出現した。
大斧は【デスドラザウルス】に投げ、手から念動波を出してデッキからカードを10枚、ジャンクゾーンに送った。
大斧は【デスドラザウルス】に命中した。
〈グオォォォォ!!〉
【デスドラザウルス】
DG【1000→1250】
LP【500→250】
「ターンエンド」
「くっ、私のターン……メインドロー!」
ダイナは苦虫を噛み締めた表情を浮かべる。
「ダイナ、案ずるな。我々の勝利は絶対だ」
「う、うん……」
ゴウキに諭され、ダイナは深呼吸をする。
「……フー。手札を1枚、フォースチャージ。そして追加ドロー!!」
追加ドローして手元に来たカードを見た瞬間、ダイナの表情が、一変した。
二つの目が、冷たさを秘める。
「恐竜とは、生態系の頂点に君臨し、進化し続けたモノ達。それは、現代に甦っても尚、変わることはない!! フォースを3枚支払い、アタックガーディアン【ヴォルケーノ・レックス―PHASE:01―】を召喚!!」
赤々とした、まるで燃えているかのような恐竜が、出現した。
【ヴォルケーノ・レックス―PHASE:01―】
SF【3】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【ジュラシック】
DG【1250】
LP【3000→1750】
「さあ、ヴォルケーノ。【ジュラシック・アーミー】を食しなさい! トライブアビリティ発動、自然の摂理!!」
【ヴォルケーノ・レックス―PHASE:01―】
【トライブアビリティ】
【自】(このカードを召喚にしたアピアステップ時)
┗あなたは自分のアシストガーディアンを1体選んでジャンクゾーンに送り、自分の山札の上からカードを7枚をめくる。その中から【PHASE】と名の付く【ジュラシックトライブ】のガーディアンカードを1枚選んでフォースを支払わずに召喚できる。めくったカードはジャンクゾーンに送る。
〈ヴァァァァァァ!!〉
【ヴォルケーノ・レックス―PHASE:01―】は、後ろに控えている【ジュラシック・アーミー】に狙いを定め、食べ始めた。
〈グアァァァァ!!!?〉
【ジュラシック・アーミー】の断末魔が木霊する。
「尊い犠牲によって、ヴォルケーノは進化する! デッキの上からカードを7枚をめくる!」
7枚のカードをめくると、ダイナはニヤリと笑った。
「このカードをノーコストで召喚するわ。出でよ、【ヴォルケーノ・レックス―PHASE:02―】!!」
先程よりも赤く、進化したヴォルケーノ・レックスが出現した。
【ヴォルケーノ・レックス―PHASE:02―】
SF【6】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【ジュラシック】
DG【1250】
LP【6000→4750】
一気にSF【6】のガーディアンが場に登場した。
イクサ達の顔が蒼白になる。
「そんな……」
「嘘だろ……」
「フフッ、これで終わりだと思わないことよ。【ジュラシック・アーミー】の死は、決して無駄ではない! ジャンクゾーンに送られた時にアシストアビリティを発動するわ!!」
【ジュラシック・アーミー】
【アシストアビリティ】
【自】(このカードが【ジュラシックトライブ】のカード効果によってアシストゾーンからジャンクゾーンに送られた時)
┗あなたは自分の山札からカードを2枚ドローできる。
「よってカードを2ドロー。サイコロを振るわよ」
ダイナはサイコロを振った。
【3】
なぜかそれが、イクサには死刑宣告のように感じられた。
【ヴォルケーノ・レックス―PHASE:02―】
【1】【3】【5】……相手のアタックゾーンとアシストゾーンに存在するガーディアンに2000のダメージを与える。相手がバトルフェイズ中にカウンター効果を発動しなかったら、あなたは自分のフォースを1枚選んで表状態にする。
【2】【4】【6】……あなたのフォースを任意の枚数選び、ジャンクゾーンに送る。そうしたら、その枚数だけ相手のフォースをジャンクゾーンに送る。相手がバトルフェイズ中にカウンター効果を発動しなかったら、あなたは自分の山札の一番上のカードをチャージゾーンに表状態で置く。
「全てを焼き尽くすヴォルケーノの灼熱の炎!! 喰らいなさい!!」
ヴォルケーノが放つ炎弾が【カオス・スマッシャー】と【カオス・チャージャー】に命中する。
〈ぐあっ!!〉
〈うぐっ!!〉
【カオス・スマッシャー】
DG【1500→3500】
LP【2500→500】
【カオス・チャージャー】
DG【0→2000】
LP【1000→0】
LPが0になったことにより、【カオス・チャージャー】がジャンクゾーンに送られてしまった。
「これで貴方は次のターン、SF【5】のカードは召喚できないわね!!」
自信満々に言うダイナに対し、イクサは小さく笑う。
「そうでもないよ」
「なんですって……?」
「【カオス・チャージャー】はアシストアビリティだけでなく、ポテンシャルアビリティも持ってる。そしてそれは、ジャンクゾーンに送られた事で発動する!」
【カオス・チャージャー】
【ポテンシャルアビリティ】
【自】(このカードがジャンクゾーンに送られた時)
┗あなたは自分の山札から【カオストライブ】のカードを2枚まで選び、表状態でチャージゾーンに置く。
「俺はデッキからこの2枚のカードを選択し、チャージゾーンに置く!」
「そ、そんな!?」
驚愕に顔を染めるダイナに、ゴウキが声をかける。
「落ち着け、ダイナ。そんなもの、フォースを封じればいいだけのこと。焦ることはない」
「そ、そうよね。……フー」
ダイナは再び深呼吸をする。
この深呼吸は彼女の癖なのだろうか。感情が高まるのを抑える時によく行なっている。
「私はこれでターンエンドよ」
「俺のターン、メインドロー!」
続いてゴウキのターンだ。
「フォースチャージし、追加ドローする」
カードを手札に加え、1枚のカードを握る。
「【PHASE】の名を持つのはジュラシックトライブだけではない。昆虫もまた、古代より進化し続けてきた種族。フォースを3つ支払い、アタックガーディアン【ジェノサイド・コッコローチ―PHASE:01―】を召喚!!」
黒光りする巨大なゴキブリが出現した。不快感MAXの容姿である。
【ジェノサイド・コッコローチ―PHASE:01―】
SF【3】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【インセクト】
DG【1000】
LP【3000→2000】
「ジェノサイドは自分のフォースを1枚封じることで、召喚できる。ポテンシャル発動!」
【ジェノサイド・コッコローチ―PHASE:01―】
【ポテンシャルアビリティ】
【永】
┗あなたは自分の裏状態のフォースを1枚選択することでこのカードを召喚できる。この効果で選択したフォースは次のあなたのターンのエンドフェイズ時まで表状態にできない。
「そして……」
ゴウキはフォースを1枚裏返した。
「フォースを1枚消費する事で、デッキからカードを7枚までめくり、その中に【PHASE】と名のつくガーディアンを、ノーコストで召喚できるのだ! トライブアビリティ発動! 行動不能の恐怖!!」
【ジェノサイド・コッコローチ―PHASE:01―】
【トライブアビリティ】
【起】(COST:あなたは自分のフォースを1枚選び、裏状態にする)
┗あなたのターン、コストを支払うことで発動できる。あなたは自分の山札の上からカードを7枚めくり、その中に【PHASE】と名の付く【インセクトトライブ】のガーディアンカードがあれば、そのカードをフォースを消費せずに召喚できる。めくったカードはジャンクゾーンに置く。
デッキからカードを7枚めくり、ゴウキは小さく笑う。
「ククッ。さあ、恐れおののくがいい。出でよ、【ジェノサイド・コッコローチ―PHASE:02―】!!」
先程よりも、更に巨大で数段パワーアップしたようなジェノサイド・コッコローチが出現した。……キモい。
【ジェノサイド・コッコローチ―PHASE:02―】
SF【6】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【インセクト】
DG【1000】
LP【6000→5000】
「サイコロを振らせてもらおう!!」
出た目は、【6】
【ジェノサイド・コッコローチ―PHASE:02―】
【1】【3】【5】……相手のアタックガーディアンとアシストガーディアンに2000のダメージを与える。相手がバトルフェイズ中にカウンター効果を発動しなかったら、裏向きのあなたのフォースを1枚表にする。
【2】【4】【6】……自分の手札を任意の枚数だけ捨てる。そうしたら、その枚数だけ相手のフォースを指定する。指定したフォースは、次の相手ターンのエンドフェイズ時まで表状態にできない。相手がバトルフェイズ中にカウンター効果を発動しなかったら、あなたは自分のフォースを2枚まで選び、表状態にする。
「戦宮カイト。貴様はこれで終わりだ! 俺は手札を4枚捨て、フォースを1枚消費してバトルだ!!」
「くっ……」
ジェノサイド・コッコローチがカイトのフォースを封じようとする。
「そうはいくか! フォースを1枚消費して、カウンターカード【セットチェンジ】発動!!」
「なにっ?!」
カウンターカードを発動させたのは、カイトではなくイクサだ。
【セットチェンジ】
FORCE【1】
【カウンター】
【自】(カウンターステップ時)
┗相手が発動したアタックアビリティの効果対象を変更する。ただし、ダメージ効果は変更できない。その後、あなたは自分の山札からカードを1枚ドローする。
「手札が共有されるってことは、こういう小技もできるってことだよね?」
「っ……確かに、可能だ」
ゴウキは拳を強く握り締めてイクサを睨む。
カウンターカードの効果処理を行われる。
「このカードの効果により、俺はジェノサイド・コッコローチの効果対象を無矢ゴウキ……お前自身に変更する! そして1ドロー!」
「そんな、バカな!!」
効果対象が変更になったことで、ゴウキのフォースが4枚封じられた。
「ぬぅ……こんなはずでは!!」
「さあ、どうする?」
イクサの問いに、ゴウキは苦虫を噛み締めた表情で告げる。
「くっ、……ターン、エンドだ!!」
「っよし! イクサ、サンキュー!!」
「いや、借りを返しただけだよ」
「ん? 借りって?」
「……いや、なんでもないよ」
イクサは小さく笑い、カイトと互いの拳を軽くぶつけた。
「ちゃんと決めろよ」
「おうともさ! 俺のターン、メインドロー!!」
カイトのターン。
「フォースチャージして、更に追加ドロー!」
ドローフェイズと追加ドローで手にしたカードを手札に加えてサモンフェイズ時。
「俺はフォースを6つ消費して、アタックガーディアン【ディヴァイン・ナイト】を召喚!!」
【ディヴァイン・ナイト】
SF【6】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【ディヴァイン】
DG【-750】
LP【6000→6750】
青い甲冑を身に纏った騎士が現れた。
「そして、トライブアビリティを発動!!」
【ディヴァイン・ナイト】
【トライブアビリティ】
【起】(COST:自分の手札からカードを4枚選んでジャンクゾーンに送る)
┗あなたのターン、コストを支払うことで発動できる。そうしたら、あなたはこのターンはフォースを消費せず、ダイスステップを無視してバトルフェイズに移行する。相手のアタックガーディアンにX000ダメージを与える。(Xの値はバトルフェイズ開始時の自分の手札の枚数)
【ディヴァイン・ナイト】が誇る大火力。
「手札を捨てるのは、俺だ!」
そう言って、イクサは自分の手札を4枚、つまり全ての手札をジャンクゾーンに送った。
カイトの手札は5枚。つまり……
「合計で5000のダメージを与える! 喰らえ、蓄積と解放!!」
「な……にぃ!?」
【ディヴァイン・ナイト】の剣が光り輝き、ジェノサイド・コッコローチを一刀両断にした。
〈我が光の剣によって消え去るがいい!!〉
〈キィィィィ!!〉
【ジェノサイド・コッコローチ―PHASE:02―】
DG【1000→6000】
LP【5000→0】
LPが0になったジェノサイド・コッコローチは、消滅した。
「そ、んな……バカなぁぁ!!」
「無矢ゴウキ、ジェノサイド・コッコローチ撃破! ターンエンド!!」
イクサはカイトからターンを受け取り、ドローフェイズを開始する。
流れは完全にこちらにある。このまま勝負を決めるべきだろう。
「俺のターン、メインドロー!」
違う、このカードじゃない。
イクサは眉間に皺を寄せる。
チャージフェイズ中の追加ドローに賭けるしかない。
「フォースチャージして、追加ドロー!!」
恐る恐るカードを見る。
イクサは目を見開いた。
――来た!!
勝負を決める切札を、イクサは引き当てたのだ。
ダイナは「うぅ」と唸りながら、イクサを睨みつける。
「どんなカードを引き当てたかは知らないけど、このターンを耐えればまだ!」
ゴウキが既に敗北した今、ダイナに残された選択肢はただひとつ。イクサの攻撃に耐えて次の自分のターンでイクサを倒すことである。こうなると、ダイナとカイトは互いの真正面に対戦プレーヤーがいなくなり、引き分けとなる。
「このターンで絶対に決めてみせる! フォースを6つ消費して、【守護龍 カオス・ドラゴン】を召喚!!」
混沌の彼方より飛来した、黒き龍が出現した。
「そして、魂の継承!!」
カオス・ドラゴンに、【カオス・スマッシャー】と【ディヴァイン・ジェネラル】……全ての仲間の能力が受け継がれる。
【守護龍 カオス・ドラゴン】
SF【6】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【カオス/ディヴァイン】
DG【3500】
LP【7000→3500】
「ダイスステップ、サイコロを振る!」
サイコロの目は、【6】である。
【守護龍 カオス・ドラゴン】
【1】【2】【3】【4】【5】【6】……手札が8枚以下なら、相手のアタックガーディアンに1000のダメージを与え、9枚以上なら、250のダメージを与える。
【4】……相手の山札からカードを10枚、ジャンクゾーンに送る。
【6】………相手のアタックガーディアンにXのダメージを与える(Xの値は自分のジャンクゾーンに存在するカオストライブのカード×500)
「これで一気に決める! 俺のジャンクゾーンのカオストライブのカードは全部で8枚!!」
カオストライブは魂の継承によって、本来ならジャンクゾーンに送られるガーディアンカードがジャンクゾーンではなくアンダーカードとなるため、能動的にジャンクゾーンのカードを増やせられない。
ここまでカードが増えたのは、他でもないカイトのおかげだろう。ディヴァイントライブの効果でイクサが手札を捨てていたのは、全てこのためである。
「くっ…驚かせるな! 私のヴォルケーノのLPは4750、8枚なら合計ダメージは4000でしょ!!? それじゃあ、ヴォルケーノは倒されないわよ!!」
「忘れたのか? カオス・ドラゴンは、全ての仲間の魂を受け継いでいるんだ! そして、俺が振ったサイコロの目は、【6】!!」
「全ての……仲間? 【6】の目……あ、ああぁ……まさか……」
「そう。【ディヴァイン・ジェネラル】の【6】のアタックアビリティも発動している! そして、俺達の手札は合計で5枚。よって、さらに1000のダメージを与える!!」
4000+1000、合わせて5000のダメージが、ヴォルケーノを襲う。
「これで終わりだ!!」
カオス・ドラゴンから放たれた一撃が、ヴォルケーノに命中した。
〈グギャアァァァァ!!〉
【ヴォルケーノ・レックス―PHASE:02―】
DG【1250→6250】
LP【4750→0】
攻撃が決まり、ヴォルケーノは消滅した。
「か、勝ったの……?」
「ああ……。俺達の勝ちだぜ!!」
イクサとカイトは互いにハイタッチする。
◇◇◇◇◇
喜び合う二人を見ながら、ダイナは溜め息を漏らした。
「……負けちゃったわね、ゴウキ」
「ああ。まんまとやられたな。さて、作戦は失敗、もう人質は必要は無いからな。奴らに電話するとしよう」
ゴウキは携帯を取り出して通話ボタンを押すと、
〈頭ぁ……助けて下せぇ……〉
なんともまぁ、情けない声が聞こえてきた。
「どうした?」
〈ちょっと脅しのつもりで襲おうとしたら、カードバトルでボコボコにされましたぁ〉
「バカか、お前達は……。っと、待て、もしかして……全員負けたのか?」
〈あいぃ……。お恥ずかしながら……〉
「そうか……。すぐに帰還しろ」
〈了解しました……〉
――ピッ、と切った。
「どうやら、聖野イクサの周りには、強いカードマスターが集まる傾向にあるようだな」
ゴウキは楽しげに笑う。
「なに笑ってるのよ。私達、負けちゃったのよ? 作戦は失敗だし、ボスになんて言われるか……」
「そうだな。だが、面白い収穫だった」
ゴウキは、イクサとカイトを見つめる。
「今年の全国大会は、相当荒れるかもな」
その声は、確信に満ち溢れていた。
「あ、そうだ。無矢ゴウキ!!」
すると、イクサがゴウキに怒りを込めて声をかけた。
「ナミは無事なんだろうな!?」
「それは保障しよう。もっとも、彼女への心配は杞憂だったようだがな」
「え?」
「いや、なんでもない。そこまで心配ならば、今から早乙女神社に向かえばいい。俺達はこれで失礼する」
ゴウキは路地裏から去り、ダイナはイクサに声をかける。
「次は絶対に負けないから!!」
そう言うと、ゴウキに続いて路地裏を去った。
◇◇◇◇◇
取り残された、イクサ達二人。
「イクサ、どうする?」
「一応、早乙女神社に行くよ。ナミが心配だから」
「そうか……。じゃあ、俺も付き合うぜ、乗り掛かった船ってやつだ」
互いに頷き、イクサ達は早乙女神社に向かうことにした。
ここからそう遠くはない。
軽く走れば、五分以内で着く距離だろう。
「なあ、カイト」
走りながら、イクサはカイトに話しかける。
「なんだ?」
「カイトの言う通り、ゲームの後半は本当に楽しめた。余計な雑念が生まれないくらいに」
「だーから言ってんじゃん。恐いだとか失うだとか、そんなことなかっただろ?」
「……そうだね。でも、それを味わえたのは他でもカイトのおかげだ」
ストレートに言われた言葉に対して、カイトは少し照れる。
「ま、まあ、そんなに感謝するなら? しかも迷いが晴れたなら? もちろん入部――」
「ごめん、それはもう少し考えさせて」
「……優柔不断め」
互いに顔を見合わせて「プッ」と笑う。
――早乙女神社――
そのまま到着。
「ナミ!」
「早乙女さん!」
イクサ達が駆けつけると、
「な〜にぃ〜?」
ナミは呑気にみかんをムシャムシャ食べていた。
「俺の心配を返せや、コラァ!!」
イクサの心の奥底から沸き上がる怒りに、ナミは思わず戸惑う。
「え、え、何が?」
なぜイクサが怒っているのか、そうしばらく思案していると、何かに思い至ったのか、ニヤニヤし始めた。
「え? ん? もしかして、イクサ……し・ん・ぱ・い、してくれたのかなぁ〜?」
「…………黙秘権を行使します」
「沈黙は肯定と見なします」
「……さすがにウザイぞ」
イクサとナミがいがみ合っていると、カイトが二人をなだめる。
「まあまあ二人とも、そう喧嘩すんなって。それより早乙女さん、なんか変な男達に襲われなかった?」
「襲われかけた」
「「なにぃっ?!」」
「でも、カードバトルで追い払ったよ」
ナミは巫女服の内ポケット(あるの?)からデッキを取り出して見せた。
「言ったでしょ? 私もバトル・ガーディアンズをやってる、って。前回は解説役だったけど、ここら辺で一番強いって自負してます……えへん!!」
「へー……」
胸を張るナミに、カイトの目から闘志の炎が宿った。
「ここら辺で一番強い? へー、フーン」
「戦宮くん、なんか文句でも?」
カイトはデッキを構える。
「そういうセリフは、カードバトル部・会計である俺を倒してから言ってもらおうか!!」
「おうおう、望むところなのだよ!!」
メラメラと燃える二人。
どことなく似た者同士だなと、イクサは思う。
そこでふと辺りを見渡す。
「おいナミ、境内の掃除はやらなくていいのか?」
結構、落ち葉とかで汚れている。というより、掃除したような跡が一切見当たらない。
「あ、イクサやっといて」
「はあ!?」
ナミからホウキを手渡され、呆然とする。
一方で二人は既にバトルの準備を始めており、イクサの入る隙がない。
(まあ、今回ばかりはいいか)
唯一無二の幼馴染みがこうして無事だったんだ。
掃除ぐらい、してやるとしよう。
そう思いながら、イクサは境内の掃除を始めた。
【号外! フィニッシュカード特集!!】
カイト「よーし、勝ったぁ!」
イクサ「ナミの態度には辟易したがな」
カイト「とか言って、安心してるんだろ?」
イクサ「………。今回のフィニッシュカードは、【ヴォルケーノ・レックス】だ」
カイト「……はいはい。ま、ヴォルケーノはフィニッシュカードじゃないが、一応紹介するぜ」
イクサ「このカードは召喚時にアシストガーディアンを1体ジャンクゾーンに送らなければならない」
カイト「それだけじゃない。このカードは【PHASE】の名を持ち、【ジュラシック・アーミー】とのコンボで次のPHASEにへと成長してより強力なガーディアンになるんだ!」
イクサ「さて、次回はカイトとナミのバトルか」
カイト「イクサは掃除、頑張れよ!!」
イクサ「不本意だがな」
カイト「ってなわけで、次回は俺視点でお送りするぜ!」
次回もお楽しみに☆




