BATTLE:005【激闘! タッグバトル!!】
予備校の勉強が忙しくて中々更新できませんでした。
すみません……。
あれから帰宅して、イクサが第一にやったことは、デッキ考察だった。
通常、トライブにはそのトライブ固有の個性があるが、だとしてもこのカオストライブは他のトライブとは色々と異質である。
各アタックガーディアンのカードにはアタックアビリティの目の数がたった1つしかなく、効果を受け継いでいくことでカード単体の能力を徐々に上げていくのだ。
それ故に、弱体化の恐れがあるため序盤はあまり攻撃しない方が良く、魂の継承で少しずつガーディアンを強化して中盤から攻めるスタイルになる。
そのためには、序盤での攻撃に使用しなかったフォースをどれだけ防御面に回せるかが、重要となる。
つまり、アシストガーディアンやカウンターカードによる補助がバトルの展開に大きく左右されるのだ。
シンヤのデッキは、かなりのパワーデッキであり且つトリッキーな動きをしていた。フォースの回復を封じつつ、連続攻撃をしかけてくる。
【カオス・巫女・ナイト】のカウンターアビリティが無ければ早々にやられていただろう。
その【カオス・巫女・ナイト】のライフは1700と、決して高い数値とは言えない。
1回のゲームでは精々2回程度しかカウンターアビリティを発動できないだろう。
プレイヤーの少しの判断ミスが、敗北に直結する可能性すらある。
次からはそこを気を付けてバトルをしよう。イクサはそう決めてカードを1枚1枚確認していく。
「えーと……あ」
確認している途中でイクサは【補給部隊】のカードを思い出し、懐から取り出した。
【補給部隊】は、バトルフェイズを開始する際に消費するフォースを0にしてくれる、単純ながらも強力なアシストアビリティを持つカードだ。
これで得られるアドバンテージは、攻守共に計り知れないだろう。
なんとなく、イクサが【補給部隊】のカードをデッキにかざした次の瞬間、
「なっ…なんだこれ……?」
突如、デッキから黒い煙が吹き出た。
そして、【補給部隊】のカードを覆う。
やがて煙が消えたが、カード名を見て目を見開いた。
【カオス・チャージャー】
カードにはそう書かれており、イラストも変わっていた。
トライブも、メタルからカオスに変わっている。
「そんな…馬鹿な」
目を擦り、もう一度カードを凝視する。
やはり、変わったままである。
「……いや、こういう不思議体験は今更な気がする」
今までのカオストライブ関連の出来事全てが常軌を逸することの連続だったため、今はもう特に驚かない。
イクサは【カオス・チャージャー】のカードをデッキに入れ、帰り途中のカードショップで購入したデッキケースにデッキを装填すると、そのまま寝ることにした。
明日、カードショップでカードバトルすることを楽しみにしながら。
☆☆☆
一夜明け、学校。
イクサが教室に到着すると、カイトは机に突っ伏して倒れていた。
「だ、大丈夫かカイト?」
「カードバトルやりてえよ……」
地を這うかのような声で紡がれる言葉の内容に、イクサは溜め息を漏らす。
「……放課後まで我慢できないの?」
「待ちきれねえよ……」
その顔はまるでゾンビのように萎れていた。
「はあ……これは、放課後が大変そうだなぁ」
「やるぞ…俺はやるぞ。放課後はバトル・ガーディアンズ祭りだぁ!!」
「……はいはい」
ローテンションがいきなりハイテンションになったりと、忙しい奴。
カイトを見ながらそう思いつつも、イクサは小さく笑った。
☆☆☆
再び時が経って放課後。
特に何かあるわけもなく、そのまま夕方となった。
本日、ナミは境内の掃除があるため、既に先に帰宅している。
よって現在、イクサとカイトは二人でカードショップに向かっている。
「なあ、イクサ」
カイトがイクサに話を振ってきた。
カードショップまでまだ大分距離があり、このまま互いに黙っているのも何か気まずいのでイクサはカイトの話に耳を傾けることにした。
「なに?」
「お前、やっぱり諸星にカードバトル部を襲わせたのは生徒会だと思うか?」
「……うーん」
イクサは頭を少し傾げて腕を組んで考えるが、なんとも言えないといった表情を浮かべる。
そんなイクサの様子に、カイトは眉間に皺を寄せる。
「なんだよ、煮えきらないなぁ」
「いやだって、情報が少なすぎるし、生徒会が黒幕って言うのもカードバトル部の部長さんの憶測に過ぎないわけで。……ていうか、そういうカイトはどうなの?」
「え、俺?」
「そう。カイトは生徒会が黒幕だと思うのか?」
話を振られたカイトも「うーん」と考えると、答えが出たのか口を開いた。
「俺は、東條部長を信じる。だから生徒会が黒幕……とは断言しないが、でも、疑ってはいるぜ」
「……他人任せなのか?」
イクサは落胆したような目でカイトを見つめる。
「他人任せとは違うんだよなぁ、なんか。部長は根拠が無いようなことは言わないし。部活の一員としての連帯感……か?」
「いや、俺に言われても。そもそも俺は部活とか入ったことないからそういうのピンと来ないし」
「だったらさ、カードバトル部に入ってみようぜ……な?」
「え……」
カイトからの誘いの言葉を貰ったイクサは、思わず足を止めた。
イクサの脳内に、あの時のユキヒコの冷たい目が浮かぶ。
あの目を思い出すと、遊び半分でカードバトルをする自分が、カードバトル部の中ではとても場違いなように感じてしまうのだ。
カイトも足を止め、イクサを振り返った。
「どうした、イクサ?」
「……いや、俺は、カードショップとかでカードバトルするよ。今日みたいに」
「えー、勿体無い。カードショップでも確かにバトルはできるけどよ、部活なら、地区大会や……全国大会で、もっとレベルの高い奴らとバトルできるんだぜ! な、ワクワクするだろ?!」
「……いや、ごめん」
「え…?」
「大会に出る以上はやっぱり、それなりの実力が必要だと思うんだ。俺にはまだカイトみたいに豊富な経験がない初心者だし」
「いや、それは、これからいくらでも伸ばしていけるし、そんな重く考えなくたって」
イクサは首を横に振る。カイトが自分を歓迎してくれていることは分かる。少し前の自分だったらきっと二つ返事で承諾していただろう。
だが、イクサは感じられずにはいられない。カイトと自分の間に明確に存在する薄く強固な壁を。
不透明なその壁を口で言い表すことはできない。それでも、イクサとカイトでは、カードゲームに対する熱意に食い違いがある。
イクサはただ、あくまでお遊びとしてのカードゲームを楽しんでいる。何の組織にも所属していないからこそ、バトルに対する責任感もなくただ自由に楽しめている。
一方でカイトは、カードゲームを楽しむ以上に、部活に所属する者としての責任感を持ってバトルに臨んでいる。非公式な部活を正式な部活にするためには大会優勝などの実績を残すことが必要不可欠だ。故に、そこにはイクサのような自由なカードゲームの楽しみ方は存在しない。
「俺、恐いんだ」
イクサは少し寂しそうな声を出す。
「俺、今すごくカードゲームが楽しいんだ。それはきっと、勝敗にこだわらずに純粋にバトルを楽しめるからだと思う。だからそれを失いたくないんだ」
「……なんか、色々めんどくせえな」
カイトは眉間に皺を寄せて頭を掻く。
そして、イクサの横に並び肩に手を置く。
「恐いだとか失うだとか、そんなわけないだろ? そう思っちまってる時点でお前はまだまだ全然カードゲームを楽しめてねえよ!」
「それってどういう……」
カイトはそのままイクサの前を歩き、振り返る。
「俺が教えてやるよ。カードゲームはどんな時だって楽しめるってことを。失うだとか恐いとか、そんな感情を抱く暇すら与えてくれないってな」
「……」
「ほら、じゃあさっさと行こうぜ。早くしないと席が埋まっちまうからな」
そう言うと、カイトは意気揚々とカードショップに向かって歩き出す。
イクサも歩こうとした、次の瞬間、
「おっと」
「悪いが、それ以上先には行かせない」
「………え?」
突如、男女の二人組が両サイドからイクサの腕を取り、拘束した。
『っ?!』
カイトがイクサに駆け寄ろうとすると、イクサを拘束している片割れの青年が、ナイフのようなモノをイクサの首に突きつける。
「っ!」
途端にカイトの動きが止まる。
「何者だ、あんたら……?」
カイトの言葉に、謎の二人組は不敵に笑う。
「俺の名は『無矢 ゴウキ』」
「私の名前は『麻生 ダイナ』」
二人の名前を聞いたカイトとイクサは眉間に皺を寄せる。
謎の二人組の名前は、どこかで聞いたことがあると感じたからだ。
「我々の目的は、聖野イクサが所有する守護龍ただ1つ。大人しく渡すのなら、これ以上の手荒な真似をするつもりはない」
「なっ!?」
青年――ゴウキの言葉を聞いたイクサは目を見開く。
どうしてゴウキが守護龍のことを知っているのか。
一方で、理不尽な要求をしてくるゴウキに対して、カイトは怒りの表情を顕にする。
「ふざけんな! カード1枚でこんな仕打ちありかよ!」
「私達のルールではありなのよ」
クスクス笑う少女――ダイナの嘲笑うかのような表情が、カイトの怒りを助長させる。
そこでカイトはふと、ゴウキとダイナの右腰のベルト部分にデッキケースが取り付けられていることに気づいた。
デッキケースを見たあと、二人に拘束されているイクサを見る。
首元にナイフを突きつけられているため、口を開かないが、不安そうな顔でカイトを見つめていた。
そこでやっと、カイトは怒りを引っ込めて冷静になろうとする。
(今俺がやらなきゃいけないことは、コイツらの理不尽なやり方に怒るんじゃなく、イクサを助けることだ。幸い、相手はデッキケースを持ってるということは少なくともカードマスターなはず。だったら、少し奴らに“餌”を投げてやるか)
「あんたらが自分達のルールを押し付けるって言うなら、俺にだって考えがあるぜ」
ブレザーの内ポケットからデッキケースを取り出し、ゴウキとダイナに構える。
「俺と、いや、俺達とカードバトルしろ!」
「……なに?」
ゴウキは怪訝そうな表情でカイトを見つめる。
カイトの行動の真意を見極めるためにイクサに突きつけていたナイフを一旦離す。
カイトはゴウキに言う。
「あんたもデッキを持ってるなら、こういう揉め事はカードゲームで解決するのが道理だとは思わないか?」
「……まあ、確かに。それも一理ある。だが……」
再びナイフをイクサの首筋に突きつけ、軽く刃先で首筋の皮膚を切り取る。
ツーと一筋の血液が少し流れる。
「こうした方が手っ取り早いと思わないか? カードゲームで無駄に時間を浪費しなくて済む」
「そうそう。私達、暇じゃないのよねぇ」
二人の言葉に対し、カイトは「ふーん」と少し笑う。小馬鹿にしたような表情で。
「そうやって勝負事から逃げて、さては俺に負けるのが恐いのかぁ?」
「……悪いが、そのような安い挑発に乗るつもりは―――」
「―――なんですって?」
ゴウキの言葉を遮り、ダイナはカイトを睨む。
――餌に食い付いた。
カイトは内心でほくそ笑む。
「あんた……今、何て言った?」
「こういう暴力で脅すような奴はカードゲームが弱い腰抜野郎って言ってんだよ。聞こえなかったか?」
「ふ…ふふ……ずいぶん生意気なことを言ってくれるじゃないの」
「お、おいダイナ。あんな挑発に乗る必要はない。我々の目的はあくまでも守護龍の奪取だ」
声をかけるゴウキを、ダイナが思いっきり睨む。
「うるっさいわね! いいじゃないの、せっかくボスが始末したあの男のレアカードを使ってデッキを強化したんだもの。試運転にはちょうどいいわ!!」
「だから待てと」
「もうゴウキは黙ってて! このガキは言うにこと欠いて、私達を腰抜野郎って言ったのよ?! 第一、こんな奴に私達が負けるはずないじゃないの!!」
すっかり怒りで興奮状態のダイナを見て、カイトは思わずガッツポーズを取りそうになるのを我慢する。
ゴウキの方は釣れなかったが、代わりに相方の方が凄い勢いで釣れた。
とりあえず、相手のペースだった流れを握ることはできた。
あとは、もう少し。もう少し軽く突ついてゴウキの手に負えないレベルまでダイナを怒らせればいい。
「え、別に無理して付き合う必要はないんだぜ? どうせ俺達の圧勝だろうしな」
「っっ〜〜!! ゴウキ!! バトルするわよ!!!」
「……もう、好きにしろ」
ゴウキは溜め息を吐くと、イクサを解放してカイトの方に向かってイクサの背中を押した。
イクサは首から流れる少量の血を拭いながらカイトに駆け寄る。
「ごめん、カイト。助かった……」
「イクサ……」
カイトはイクサに小声で言う。
「逃げるぞ」
「……え? でも、バトルは」
「あんな刃物で脅してくるような奴らとマトモなバトルができると思うか?」
「……思えない」
「だろ? 分かったら、さっさと逃げるぞ」
「う、うん……」
「ところで聖野イクサ」
二人が逃げようとしていると、不意にゴウキがイクサに声をかけてきた。
イクサはビクッと肩を揺らしてゴウキの方を向く。
「な、なんですか……」
「今日は早乙女ナミと一緒じゃないんだな」
ナミは境内の掃除があるため、今日は一緒にいない。
イクサは首を傾げる。
「それが何か?」
「実はな。早乙女神社に、俺の仲間が待機しているんだ。俺がGOサインを出せば、奴らはすぐさま神社を襲撃するだろう。か弱い巫女さんがどうなっても知らないぞ?」
「「っ……」」
イクサとカイトは顔を見合わす。
ゴウキとダイナの魔の手は、ナミにまで伸びていたのだ。
ゴウキは底冷えするような低い声で二人に言う。
「俺達に喧嘩を売ったんだ。逃がすつもりはないぞ?」
☆☆☆
イクサとカイトが連れて来られたのは路地裏の奥。
そこには、巨大なテーブルが置かれていた。
「な、なんだこのテーブル……?」
イクサはテーブルをまじまじと見つめる。
よく見ると、何か配線のようなものが見える。
「これはまさか……3Dバトルシステムか?!」
カイトが目を見開いて、テーブルを見つめる。
3Dバトルシステムという聞き覚えのない言葉に、イクサは首を傾げる。
「なにそれ?」
「あ、ああ……そういやイクサは知らないんだったな。3Dバトルシステムってのは、孤高グループが開発したバトル・ガーディアンズ用の次世代システムさ。機械がカードの中のバーコードを読み込むことによって、ガーディアンを3Dビジョンによって実体化させ、よりスリリングなバトルを実現させたんだ。でもこのシステムは地区大会や全国大会にしか実装されていないはずなんだが……」
カイトの疑問に、ゴウキとダイナが答える。
「こんな玩具、我々のボスの力があればいくらでも手に入る」
「そうそう。私達のボスは、色々と人脈があるってことなのよ」
先ほどから彼らが口にする『ボス』という言葉。
それが、二人をイクサ達に仕向けた者なのだろうか。
「イクサ……もしかするとこいつらは……」
「うん……。諸星にカードバトル部を襲わせた犯人の手下、かも……」
確証はないが、なぜかそう確信できる。
「さあ、話はここまでにして、バトルを始めましょう。ギッタンギッタンに捻り潰してやるわ」
ダイナはデッキケースを構え、イクサとカイトに目を向ける。
「で。最初はどっちから?」
「どっちもくそもない。言っただろう、俺達とバトルしろって」
カイトの言葉に、ダイナは眉間に皺を寄せる。
「それってつまり……タッグバトルってこと?」
その言葉に頷く。
「ああ、そうさ。手っ取り早いだろ?」
「フンッ、あんだけ大口をほざいておいて、タッグバトルだなんて。いくらシングルで勝てないからと言って」
「違うな」
カイトはダイナの言葉を遮り、イクサの肩に腕を乗せる。
「コイツはまだバトル・ガーディアンズを始めたばかりの初心者でね。色々とアドバイスするにはタッグバトルの方が丁度いいんだ」
「カイト……」
カイトはニコッとイクサに笑い、サムズアップする。
「本当に楽しいカードゲームには、恐いだとかいう感情の入る余地がないことを見せてやるよ」
その言葉を聞いて、不思議と心の内から闘志が沸き上がってくる。
イクサは鞄を開いてデッキケースを取り出し、中に収納されたデッキを手に取る。
デッキからも強い力を感じる。
「さて、話が済んだのなら早く始めるとしよう」
ゴウキはコインを取り出し、親指で宙に飛ばした。
コインは空中でクルクル回る。
「裏と表、お前達はどっちを選ぶ?」
「……表だ」
ゴウキはコインを手の甲でキャッチする。
コインを見て、小さく笑う。
「おめでとう、表だ」
その言葉を合図にするかのように、イクサ達は配置に着く。
イクサの正面の相手はダイナ、カイトの正面の相手はゴウキ。
ゴウキはイクサ達に向かって言う。
「今回のタッグマッチはビギナーズルールで行うとしよう」
ビギナーズルール、それは、バトル・ガーディアンズのルールを一部制限して簡略化することで初心者にも遊びやすいように定められたルールのことである。
「ビギナーズルールにおけるタッグマッチは、あくまで四人でターンを順々に回していく形式を取る」
公式サイトに記載されていた通常のマスターズルールにおけるタッグマッチ形式は、ペアで交互にターンを回していくタイプのものである。
「通常のマスターズルールでのタッグバトルの勝利条件は相手ペアのガーディアンのどちらか1体を先に倒すことだが、このビギナーズルールでは相手タッグ全てのアタックガーディアンを倒した方が勝ちとなる。自分と相手のガーディアンがそれぞれ1体ずつ倒れた場合は引き分けだ」
ゴウキの説明に被せるようにダイナが話に加わってくる。
「ターンを回す順番は、さっきのコイントスの結果を反映させて、聖野イクサ→私→ゴウキ→戦宮カイトの順よ。最初の第1ターンは全員アタックガーディアンを召喚し、バトルは行えない。そして攻撃は向かいのプレイヤーのアタックガーディアンにしかできない。いいわね?」
「分かった」
イクサはゴウキとダイナの言葉に頷く。
「俺達が勝った場合、お前達は大人しく守護龍のカードを渡す。逆にお前達が勝った場合、我々は大人しく引き下がろう。早乙女ナミに関しては、バトルの勝敗に関わらずバトル終了時に待機している仲間を下がらせる。それでどうだ?」
「それで、構わない」
フェアな要求ではない。しかしイクサはそれに承諾しなければならない。ナミの身の安全のためにも。
イクサはゴウキの言葉に了承すると、早速デッキをシャッフルしようとする。
「おい、イクサ待て」
だが、カイトに止められた。
「なんだよ、一体」
「シャッフルは必要ない」
「え? いや、でも……」
「まあ、見てなって」
カイトは自分のデッキをメインデッキゾーンに置く。すると、
――ウィィィイン
デッキが光に包まれた。
「な、なにが起きているんだ……?」
「今、機械が俺のデッキのカードをスキャンしてるんだ。そんでもって、デッキは機械によって自動的にシャッフルされる。このバトルでは、機械がスキャンした以外のカードは使えないから、イカサマもできない。凄いシステムだろ?」
「う、うん……」
科学の進歩って凄い……イクサはそう思った。
イクサもカイトに続き、自分のデッキをメインデッキゾーンに置く。
――ウィィィイン
同様に光に包まれ、スキャンとシャッフルが完了したようだ。
デッキからアタックガーディアンが自動的に1枚排出され、カードを4枚引く。
手元に置かれた初期手札5枚を見る。
特に手札交換の必要は無い。
全員、準備が完了した。
「「「「ダイス・セット!!」」」」
タッグバトル、スタート!!
「まずは俺の先攻、メインドロー! フォースチャージして、更に追加ドロー!!」
手札にカードを加える。
「フォースを1つ消費して、手札から【カオス・シューター】を召喚!」
イクサはカードを3Dバトルテーブルのアタックゾーンに置いた。
すると、カードは光に包まれ、
〈……フンッ!〉
【カオス・シューター】
SF【1】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【カオス】
DG【0】
LP【1500】
黒い甲冑に身を包み両手に銃を持った戦士【カオス・シューター】が3Dビジョンによって実体化した。
初めて体感する3Dバトルシステムに、イクサは感動にも似た感情を抱く。
「た、ターンエンド」
「なら、私のターンね」
ダイナのターンとなった。
「私のターン、メインドロー! フォースチャージして、追加ドロー!!」
追加ドローしたカードを手札に加え、このターンに使うカードを選択する。
「フォースを1枚消費して、手札からアタックガーディアン【エッグ・ザウルス】を召喚!」
〈ギャウ!!〉
【エッグ・ザウルス】
SF【1】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【ジュラシック】
DG【0】
LP【1100】
卵の殻を帽子のように被った、小さな赤い恐竜が出現した。
「エッグ・ザウルスのポテンシャルアビリティを発動!」
【エッグ・ザウルス】
【ポテンシャルアビリティ】
【自】(このカードを召喚したアピアステップ時)
┗あなたの裏状態のフォースを1枚まで選び、表状態にする。
「フォースを1枚、表状態にして回復し、これで私のターンは終了」
――ん?
イクサは首を傾げる。
最初の第1ターンは攻撃できないのなら、回復したフォースを使って【補給部隊】のように強力なSF【1】のアシストガーディアンを召喚すれば無駄がない。なのに何もしないでターンを終了したことに、イクサは疑問に感じたのだ。
「俺のターンだ、メインドロー!」
そう考えていると、続いてゴウキがカードをドローした。
「フォースチャージして、更に追加ドロー!!」
手札にカードに加え、
「フォースを1つ消費して、アタックガーディアン【インセクト・ビギナー】を召喚!」
ゴウキは1枚フォースを消費してアタックガーディアンを召喚した。
〈キィィィィ!!〉
【インセクト・ビギナー】
SF【1】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【インセクト】
DG【0】
LP【1000】
羽根を揺らして空に舞い上がる蛾のようなガーディアン。
「インセクト・ビギナーのポテンシャルアビリティを発動!」
【インセクト・ビギナー】
【ポテンシャルアビリティ】
【自】(このカードを召喚したアピアステップ時)
┗あなたは自分の手札を1枚選んで自分の山札に戻してシャッフルし、フォースを1枚選んで表状態にする。
「よって、手札を1枚デッキに戻して、フォースを1枚回復する。そして!」
ゴウキは自分のフォース1枚とダイナのフォース1枚を裏返す。
「フォースを2枚消費して、手札からアタックガーディアン【インセクト・ハーム】を召喚!!」
【インセクト・ハーム】
SF【2】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【インセクト】
DG【0】
LP【2000】
黒くおぞましいゴキブリのようなガーディアンが現れた。
イクサはゴウキがガーディアンを召喚する際にダイナのフォースを使用したことに目を剥いた。
「なっ……そんなのあり?!」
驚いているイクサに対して、カイトが解説する。
「タッグバトルでは、パートナー同士の手札・ジャンクゾーン・チャージゾーンは共有されるんだ」
手札・ジャンクゾーン・チャージゾーンの共有。
タッグバトルは、正にパートナー同士のコンビネーションが問われるということだ。
「話は済んだか? なら、俺はターンエンドだ」
「よし。俺のターン、メインドロー!」
カイトのターンだ。
「フォースチャージして、更に追加ドロー!! そしてフォースを1つ消費して、手札から【ディヴァイン・シールダー】を召喚!!」
〈ハアァァァ!!〉
【ディヴァイン・シールダー】
SF【1】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【ディヴァイン】
DG【0】
LP【1000】
巨大な盾を持ち、青を基調として白く淵が塗られた甲冑を着た戦士が出現した。
「ターンエンドだ」
再び、イクサのターンである。
「俺のターン、メインドロー!」
ドローしたカードを見る。
――よし。
「フォースチャージして、更に追加ドロー!!」
ドローしたカードを手札に加える。
手札に加わったのは【カオス・チャージャー】。
早速使ってみることにする。
「フォースを1つ消費して、手札から【カオス・チャージャー】を召喚!!」
〈フンッ!!〉
【カオス・チャージャー】
SF【1】
GT【ノーマル/アシスト】
Tr【カオス】
DG【0】
LP【1000】
アシストゾーンに、樽を抱えた黒い甲冑を身に付けた大男が現れた。
「さらに、フォースを1つ消費して、【カオス・ロアー】を召喚!!」
〈ウオォォォォ!!〉
【カオス・ロアー】
SF【2】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【カオス】
DG【0】
LP【2500】
「【カオス・ロアー】のポテンシャルアビリティにより、このカードはSF【1】として扱う!」
【カオス・ロアー】
【ポテンシャルアビリティ】
【永】
┗自分フィールド上のアタックゾーンに【カオストライブ】のカードがあるなら、手札のこのカードはSF【1】として扱える。
「そして、魂の継承!!」
【カオス・ロアー】に【カオス・シューター】の魂が受け継がれる。
現在、【カオス・ロアー】のアタックアビリティは2つ。
当たる確率は1/3である。
しかし、もし攻撃が成功すれば、相手に大ダメージを与えられ、一気にバトルの流れをこっちに傾けることができるだろう。
ハイリスクハイリターンの賭けに、イクサは悩む。
やがて覚悟を決め、アシストゾーンに手をかざす。
「【カオス・チャージャー】のアシストアビリティ発動!!」
イクサは賭けに出た。
【カオス・チャージャー】
【アシストアビリティ】
【永】
┗あなたのターンのバトルフェイズ開始時に発生するフォースの消費は0になる。
3D化した【カオス・チャージャー】は、自身が抱えている樽を【カオス・ロアー】に投げ渡す。
樽は割れ、中のエネルギーが【カオス・ロアー】に注がれる。
サイコロを振ると……【4】
【カオス・ロアー】
【弱体化】
【カオス・ロアー】の身体からエネルギーが消えてしまった。
賭けは失敗に終わった。
「ターン、エンド……」
「フフフ、どうやら賭けは失敗のようね。私のターン、メインドロー」
ダイナのターン。
「カードを1枚フォースチャージして、更に1枚追加ドロー。手札からアタックガーディアン【デスドラザウルス】を召喚!!」
【デスドラザウルス】
SF【2】
GT【ノーマル/アタック】
Tr【ジュラシック】
DG【0】
LP【1500】
〈グワァァァァ!!〉
漆黒の恐竜が、出現した。
「デスドラ……ザウルス…」
カイトは苦虫を噛み締めた表情を浮かべる。
シンヤが使ったカードであり、カイトを苦しめたカードだ。
「元はあの男のカードだけれど、やっぱりガーディアンの力を発揮するのは使う人間次第よね」
ダイナの言葉に、イクサは思わず聞く。
「あの男って、まさか諸星シンヤのことか?!」
「ええ、そうよ。私たちのデッキは、諸星シンヤのレアカードを導入した事で数段パワーアップしているの」
「じゃあ、やっぱり……諸星のアレは事故じゃなく」
「そう。全てはボスがやったこと。まあ、私達に使われて、このカードも喜んでいるんじゃないかしら?」
ダイナはニヤリと笑う。
「更に、ドメインフェイズ時! 手札からドメインカード【ジュラシックフィールド】を発動!!」
ダイナのフィールドが、まるで恐竜時代の荒野のように変形した。
「さあ行くわよ。【デスドラザウルス】のトライブアビリティ発動!!」
【デスドラザウルス】
【トライブアビリティ】
【起】(COST:フォースを任意の枚数選び、ジャンクゾーンに送る)
┗あなたのターン、コストを支払うことで発動できる。そうしたら、このカードはジャンクゾーンに送ったフォースの枚数だけこのターンのバトルフェイズ中にアタックアビリティを複数回発動できる。
「自然の摂理!!」
ダイナは自分のチャージゾーンにあるフォース1枚とゴウキのチャージゾーンにあるフォース1枚をジャンクゾーンに送った。
チャージゾーンを共有しているため、ゴウキのフォースもコストにできるのだ。
「そしてチャージゾーンからカードがジャンクゾーンに送られた時、このカードの効果が発動される……。【ジュラシックフィールド】の効果発動!!」
【ジュラシックフィールド】
【自】(【ジュラシックトライブ】の効果によってフォースがジャンクゾーンに送られた時)
┗1ターンに一度、ジャンクゾーンのカードを1枚選び、表向きでチャージゾーンに置く。
ジャンクゾーンのカードが、チャージゾーンに置かれた。
「さあ、サイコロを振るわよ」
サイコロは勢いよく回転し、やがて止まった。
【2】
【デスドラザウルス】
【2】【4】【6】……相手のアタックガーディアンに500のダメージを与える。
【1】【3】【5】……相手のアタックガーディアンに250のダメージを与える。
「フォースを1枚消費してバトル! 【デスドラザウルス】の500の攻撃が二回。しかも貴方の【カオス・ロアー】が弱体化した事で、総ダメージ量は2000!!」
「くっ」
3D化した【デスドラザウルス】が【カオス・ロアー】に噛みついた。
〈グワァァァァ!!〉
〈グガッ?!〉
【カオス・ロアー】は為す術なく苦しんでいる。
「まずは一回目」
【カオス・ロアー】
DG【0→1000】
LP【2500→1500】
〈グギャアァァァ!!〉
〈グッ!!〉
【デスドラザウルス】は口にくわえた【カオス・ロアー】を吹っ飛ばした。
「これで二回目」
【カオス・ロアー】
DG【1000→2000】
LP【1500→500】
「ターンエンドよ」
ライフは一気に500。流石にマズイ状況である。
このままでは、負ける可能性すらある。
「では、俺のターンだ。メインドロー!」
ゴウキがカードをドローした。
「手札の1枚をフォースチャージして、更に追加ドロー。そして、アシストガーディアン【ミラージュ・スパイダー】を召喚!!」
【ミラージュ・スパイダー】
SF【0】
GT【ノーマル/アシスト】
Tr【インセクト】
DG【0】
LP【1000】
〈キキィィィィ!!〉
赤黒い大蜘蛛が、アシストゾーンに出現した。
「サイコロを振らせてもらう!」
ゴウキが振ったサイコロの目は……【4】
【インセクト・ハーム】
【3】【4】【6】……相手のアタックガーディアンに500のダメージを与える。バトルフェイズ中に相手がカウンター効果を発動しなかった場合、あなたは自分の手札を1枚ジャンクゾーンに送り、相手のフォースを1枚選択する。選択したフォースは、次の相手ターンのエンドフェイズ時まで表状態にできない。
【1】【2】【5】……相手のフォースを2枚まで選択する。選択したフォースは、次の相手ターンのエンドフェイズ時まで表状態にできない。
「フォースを1枚消費して、バトル! 【インセクト・ハーム】のアタックアビリティにより、【ディヴァイン・シールダー】に500のダメージを与える!!」
【ディヴァイン・シールダー】
DG【0→500】
LP【1000→500】
「くっ!」
「これだけでは終わらん。手札を1枚ジャンクゾーンに捨て、貴様のフォースを1枚選択する」
【インセクト・ハーム】は口から変な粘液を吐き出し、カイトのフォースに命中させた。
見る見る内に粘液が固まり、フォースが封じられた。
「選択したフォースは次のお前のターンのエンドフェイズ時まで表状態にできない。そして、このターンのエンドフェイズ時、今度は【ミラージュ・スパイダー】のアシストアビリティが発動する!」
【ミラージュ・スパイダー】
【アシストアビリティ】
【自】(あなたのターンのエンドフェイズ時)
┗あなたは自分の手札を1枚ジャンクゾーンに送り、相手のフォースを1枚選択する。選択したカードは次の相手ターンのエンドフェイズ時まで表状態にできない。
「聖野イクサ! 俺が選択するのは貴様のフォースだ!!」
「えっ?!」
【ミラージュ・スパイダー】の糸が、イクサのフォースを拘束する。
「言ったはずだ。チャージゾーンのカードは共有される、と。アタックアビリティの効果はあくまで目の前の相手にのみ有効だが、アシストアビリティはそうではない!」
「そんな……」
イクサとカイトのアタックガーディアンのLPは共に500、そして互いにフォースを封じられてしまった。
ゴウキが声高々に宣言する。
「断言しよう、聖野イクサ、戦宮カイト。貴様らは我々の術中にかかった袋のネズミ……勝利など、ありはしない!!」
ゴウキの言う通り、イクサ達は彼らの連携攻撃に翻弄されている。
このまま行けば、二人のアタックガーディアンはあっという間に倒されてしまうだろう。
一体、どうすればいいのか……。
【号外! フィニッシュカード特集!!】
カイト「無矢ゴウキ、麻生ダイナ……。強敵の登場だな」
イクサ「向こうは息もピッタリ、対してこっちは初めてのタッグバトル……コンビネーションもいまいち」
カイト「それだけじゃない。破壊のジュラシック、拘束のインセクト……俺達のフィールドは崩壊の危機にある」
イクサ「だが、俺達だって黙って負けるわけにはいかない!!」
カイト「ということで、今回のフィニッシュカード特集はお休みだ。察してくれ」
イクサ「カイト、絶対に勝つぞ!」
カイト「おう!!」
次回もお楽しみに☆




