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第1章 第九話 青龍の力

燃え盛る炎、崩れ落ちる建物、そして逃げ惑う人々の悲鳴――。


ウカビルが全速力で駆け込んだ街並みは、さっきまでの平穏が嘘のように無残な戦場へと変わり果てていた。


「くそっ!」


「ハハハハ! 逃げ惑え、無力なクロノス人どもめ!」


No4のクアトロのような白い仮面をかぶった兵士たちが、手に持った武器で容赦なく民を蹂躙していく。


彼らの首筋や衣服には、「No.120」「No.105」といった数字が刻まれていた。


おそらく仮面軍の末端兵士だろう。


個々の実力はそれほど高くはないが、圧倒的な数が空から次々と降り注いでくるため、街の警備隊だけでは到底防ぎきれていなかった。


「やめろーーーッ!!」


ウカビルは叫びながら、目の前で仮面兵に襲われそうになっていた母親と小さな子供の間に猛然と割り込んだ。


「あァ? なんだガキが……ぶっ殺してやる!」


仮面兵(No.114)が凶器を振り下ろしてくる。


「舐めるなァ!!」


ウカビルは自主特訓の成果か、振り下ろされた凶器を避け、空中で回転しながら相手の頭部へ蹴りを入れる。


ズガァン!!


「がはっ……!?」


強烈な一撃を喰らった仮面兵は、そのまま横の壁へと吹き飛び、意識を失って崩れ落ちた。


「よっと...」


華麗に着地し、隅にいた母親と子供の元へ駆け寄る。


「大丈夫ですか!? 動けるなら今のうちにシェルターへ!」


ウカビルが声をかけると、母親は涙を流しながら「ありがとう、ありがとう……!」と子供の手を引いて必死に走り去っていった。


「さぁ……! 次だ!」


ウカビルはすぐさま次の戦場へと視線を走らせる。


街の至る所で、同じように傷つき、怯えている民たちが大勢いた。


「俺がやらなきゃ……みんなを守るって、決めたんだ!」


ウカビルは果敢に仮面軍の群れへと突撃していった。


一人、また一人と、襲いかかる雑兵たちを泥臭く、しかし確実に叩き伏せていく。


一対多数の乱戦の中、ウカビルは一歩も引かずに逃げ遅れた民を救い続けた。


だが、戦場はそう甘くはなかった。


「ほう、一般人の中に少しは骨のある奴が混じっているようだな」


不意に、背後からこれまでの雑兵とは明らかに違う、重苦しいプレッシャーが漂ってきた。


ウカビルがハッと振り返ると、そこに立っていたのは、一回り大きな体躯をした仮面兵だった。


その肩口には「No.13」の数字が刻まれている。


(強い……! いままでの奴らとはオーラが違う……っ!)


「我々仮面軍をなめるなぁぁぁぁあ」


No.13が凄まじい速度で踏み込み、大剣を激しく振り下ろしてきた。


「くっ……!」


ウカビルは間一髪で大剣を避けるが、巻き起こった風圧だけで頬がピリピリと痛む。


間髪入れずに放たれる連撃。ウカビルは防戦一方になり、じりじりと後退を余儀なくされる。


稀に混じっているという、No.10付近の上位兵士の実力は伊達ではなかった。


「グハハ! 守ってばかりでは俺は倒せんぞぉ!」


「うるせぇ……! 俺が負けるかよぉぉぉ!!」


ウカビルは防戦の中で、自分の内奥にある『青龍セイリュウ』の力を必死に呼び覚まそうと集中した。


岩場での特訓、手のひらに集めようとした感覚。


あの時の感覚を、この実戦の極限状態で必死に手繰り寄せる。


(集まれ……俺の力……ノヴァを、みんなを守るための力を……!)


その瞬間、ウカビルの両拳に、徐々にバチバチと鮮やかな青い電流のようなオーラが流れていく。


「……っ、これだ!!」


力が漲るのを感じたウカビルは、No.63の大剣の振り下ろしを鋭く見切り、最小限の動きでかわした。


大剣が地面に突き刺さり、一瞬の隙が生じる。


「何っ!?」


「終わりだ」


ウカビルは青龍を纏った拳を、No.63の胸元へと突き出した。


特訓の成果、そして実戦の中で掴みかけた「力の制御」――その手応えを確かに感じながら、全力の拳が炸裂する。


ドゴォォォン!!


凄まじい青い衝撃波が巻き起こり、No.63の巨体がまるで砲弾のように遥か彼方へと吹き飛んでいった。


「はぁ、はぁ、はぁ……!」


息を荒くしながら、ウカビルは自分の両手を見つめた。


(できた……! あとちょっと、あとちょっとで、この青龍の力を完全に制御できるかもしれない……!)


民を次々と救い、さらに強い敵をも撃破したことで、ウカビルの胸には「これなら戦える、みんなを守れる」という確かな喜びと希望が湧き上がっていた。


だが、その希望の光を打ち破るように、上空から鼓膜を震わせるほどの凄まじい大爆発の音が響き渡った。


「な、なんだ!?」


ウカビルが驚いて見上げると、遥か上空に停泊している仮面軍の巨大戦艦、その外殻の一部が激しく炎上し、爆発しているのが見えた。


それは、ウカビルが心配し、焦がれるノヴァが、たった一人で戦艦内部を突き進み、命がけで暴れ回っている破壊の痕跡だった。

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