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第1章 第三話 仮面軍襲来

ウカビルがノヴァと先生に運ばれて保健室へ行ったあと、訓練所には重苦しい空気が流れていた。


残されたクラスメイト達は、ウカビルが放った信じられない力について、ザワザワと噂話をしている。


「おい、見たかよさっきのウカビル……」


「あのルシフェルを押し返すなんて、ありえないだろ」


そんな声を無視して、ルシフェルは一人、自分の両腕をじっと見つめていた。


ウカビルの一撃をガードした腕は、まだプルプルと震えていて、痺れが全く取れない。


時の使者の中でも、ルシフェルの実力は圧倒的にずば抜けている。


同世代では誰も自分に追いつけないと確信していたのに、時の使者でもないただのクロノス人であるはずのウカビルに、一瞬とはいえ完璧に競り負けた。


「ありえない...」


ルシフェルは悔しそうにギュッと拳を握りしめると、何も言わずに一人で訓練所をあとにした。


 *


学校の放課後、夕日が差し込む廊下を歩いていると、ノヴァとルシフェルがばったりと会った。


「あ、ルシフェル! お疲れ様。今から帰り?」


ノヴァがいつも通りの笑顔で声をかけてきた。


「うん....ねぇノヴァ。……ウカビルの様子はどう」


ルシフェルは視線を少しそらしながら、いつもの冷たい声で聞いた。


授業が終わってからウカビルのことが気になっているのかもしれない。


「うん、さっき保健室に様子を見に行ってきたよ。先生が言うには、ただの筋肉痛みたいなものだって。まだベッドでぐっすり寝てるけど、命に別条はないみたい。あはは、本当に心配させちゃうよね」


ノヴァは少しホッとしたように笑ったあと、急に真面目な顔になってルシフェルを見つめた。


「ねえ、ルシフェル。昨日の一撃、あなたはどう思った? 私、ウカビルが毎日一生懸命に特訓してたのは知ってたけど……あんな凄まじい力、今まで一度も見たことない...」


ルシフェルは窓の外の夕日を見つめながら、静かに口を開く。


「……わからない」


二人がウカビルの謎の力について話していた、その時だった。


ウウゥゥゥゥゥーーー!!!

ウウゥゥゥゥゥーーー!!!


学校中、いや、街全体に地を這うような大きな警戒アラームが鳴り響いた。


「っ!? このアラームは……この星への敵襲!?!」


ノヴァは瞬時に表情を変え、窓から外を見て、

ルシフェルの赤い瞳が、街の方向を鋭く睨みつけた。


「行くよ、ノヴァ。急いで装備を整えるわよ。時の使者として」


「うん!」


二人は一度、時の使者の武器が保管されている自分たちの部屋へと急いだ。


ルシフェルが手に取ったのは、黒く不気味な輝きを放つ一本の剣。


その刀の名は【宇宙災厄の一振り コズミックディザスター】。その名のとおり、一振りするだけで宇宙規模の大災害を引き起こすことができるエネルギーを秘めている時の使者の中でもルシフェルだけに与えられた伝説の剣。


そしてノヴァが手にしたのは、美しくも激しい光を宿した剣。


その刀の名は【ブラスターエクリプス】。

太陽なような圧倒的な光により、周囲の光を全て吸収し、切りつけた相手は消滅する。

太陽のような存在であるノヴァにしか扱うことのできない伝説の剣。


それぞれ相棒となる剣をしっかりと腰に構え、二人は学校を飛び出した。


アラームが鳴り響く街の中心部へと向かって、圧倒的なスピードで駆け抜ける。


ノヴァの実力もルシフェルにはやや劣るが、

小さい頃から負けじと努力を積み重ねたお陰で

背中を任せられる存在へと成り上がった。


走りながらノヴァが隣を並走するルシフェルに話しかける。


「数日前、行方不明だったみんなが急に戻ってきたばかりなのに、今度は街が襲われるなんて……。一体何が起きているんだろうね...合同任務なんて久々だけど、絶対に街の人を守ろうね!」


「ええ。だけど、アラームの鳴り方が異常よ。かなりの手練れが街を荒らしている可能性があるわ。気を引き締めて」


「うん。どんな敵だろうと、私たちの剣で絶対に止めなきゃ!」


街に近づくにつれ、不気味なほどの静けさと、時折聞こえる短い悲鳴が響いてくる。


二人が街の広場にたどり着いた瞬間、目の前の光景に息を呑んだ。


綺麗な街並みのあちこちに、何人ものクロノス人が血を流して倒れている。


その惨状の真ん中に、一人の男がぽつんと立っていた。


その男は、顔全体を不気味な【白い仮面】で覆い、近くにいた街の人の胸ぐらを掴み上げている。


男が首を傾げたとき、その首筋にハッキリと刻まれた【4】の数字が夕日に照らされた。


「おい、お前も知らないのか? この星でドロップの奴を消した『強い力を持った奴』の居場所をよぉ。本当に使えない雑魚ばかりだなまったく」


男は低く不気味な声で呟くと、掴んでいた街の人を容赦なくゴミのように放り投げた。


「あーイライラしてくるぜ雑魚ばっかりでよぉ」


男の体からは、周りの空気がひび割れるような圧倒的な殺気とプレッシャーが放たれている。


「ドロップは元とはいえ、俺ら『仮面軍』の一員なんだよ。そいつを倒した生意気な特異者がこの近くにいるはずなんだがねぇ……。仮面軍No.4であるこの俺様、クアトロ・ヴァイス様が早く見つけないと、この街の奴らを全員殺すぞぉぉおお」


クアトロ・ヴァイスがクツクツと笑いながら振り返ると、剣を構えているルシフェルとノヴァに視線を向けた。


「あぁん?」


クアトロ・ヴァイスは仮面の奥の目を細めた。


「なんだぁ?可愛いお嬢さんたちが現れたなぁ。そんな物騒なものを構えて、お前たちは一体何者だよ? 俺様に何か用か?」


クアトロ・ヴァイスは二人のことを時の使者とは知らず、完全に子供扱いして余裕の笑みを浮かべている。


「人を探すために、こんな酷いことをするなんて許せない……! 私たちはこの星を守る!」


ノヴァがブラスターエクリプスを強く握りしめる。


「ここから先には、一歩も行かせない」


ルシフェルもコズミックディザスターの柄に手をかけ、仮面軍の冷酷な刺客を鋭く睨みつけた。


時の使者と仮面軍No4の激突が今始まる!

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