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第1章 第十六話 滅びゆく世界

キングスタングが言い放った言葉は、単なる脅しではない。


彼が指を鳴らした瞬間、上空の超巨大なエネルギー弾が狂暴な唸りを上げ、惑星クロノスの大気圏を突き破って落下を開始した。


「そ、そんな……! 逃げ場なんて……どこにもないよ……ッ!」


ウカビルは絶望に顔を青ざめさせた。ノヴァの手を握りしめるその手は、震えが止まらない。


「フハハハハ!さらばだ!!クロノス人よ!!」


キングスタングは、地上で身を寄せ合う二人を一瞥することすら辞め、冷酷にその場から浮上すると、滅びゆく星に背を向けて宇宙の彼方へと去っていった。


そして_____


エネルギー弾が地表に激突した――。


ズガァァァァァァァァァァン!!!!!!!


視界のすべてが白光に染まる。


大地は粉々に砕け散り、マグマが噴出し、海は一瞬で蒸発していく。


惑星クロノスが内側から大爆発を起こし、星そのものが宇宙の塵へと変わっていく。


激しい衝撃波と熱線が迫り、ウカビルとノヴァは覚悟を決め、目を閉じた。


(これまで、なのか……。せめて、最後はノヴァと一緒に……)


――しかし、どれだけ待っても、肉体を引き裂くはずの衝撃も熱さもやってこなかった。


「……え?」


ウカビルが恐る恐る目を開けると、そこには信じられない光景が広がっていた。


足元にあったはずの緑豊かな大地はどこにもない。


眼前に広がっていたのは、粉々に砕け散ったクロノス星の残骸が静かに漂う、暗黒の宇宙空間。


そして自分たちの周囲には、宇宙の真空と爆発の衝撃を完璧に遮断する、眩い【高エネルギーバリア】が展開されていた。


混乱するウカビルとノヴァの目の前で、ゆっくりと一人の影が浮上してくる。


見紛うはずもない、その姿。


「……ル、ルシフェル……なのか!」


ルシフェルがバリアを張り、二人が生き残った安堵も束の間。


信じられない光景が目の前で繰り広げられた。


「……ッ!?」


ウカビルは絶句し、ただ沈黙した。


ノヴァが、目の前でルシフェルの愛刀【コズミックディザスター】に貫かれた。


「がはっ!?!·····ルシ·····フェル」


衝撃で思考が停止する間もなく、ルシフェルは止まらない。


次の瞬間、ルシフェルはウカビルの体をも容赦なく貫いた。


「ぐぁぁぁぁぁぁぁあ」


激痛が走る。


視界がかすみ、命の灯火が消えようとしたその時、ルシフェルが、冷酷な笑みを浮かべて言い放った。


「これから始まるんだよ。私の計画が……」


その言葉がウカビルの意識に深く突き刺さる。


だが、次の瞬間だった。


沈黙するノヴァの身体が、暗黒の宇宙の中で突然、眩い光を放ち始めた。


それは破壊の光ではなく、すべてを包み込むような、温かくも神聖な光だった。


「ノ……ヴァ……?」


ウカビルは意識が遠のく中でその輝きを目にし、そのまま深い闇の中へと落ちていった。


「みんなを...救うには...これしかない...ごめんね...ウカビル...さようなら...」


ノヴァはウカビルへ別れを伝え最後に意識を失ったウカビルへそっとキスをした。


そして辺りは眩い光に照らし出された。


     * * *


「……ここは……」


どれほどの時間が経ったのか。


ウカビルが意識を取り戻すと、そこは静寂に包まれた展望台の上だった。


体を起こし、恐る恐る街を眺める。


そこには、爆発で消滅したはずの惑星クロノスと、今までとなんら変わらない街の風景が広がっていた。


地面にはノヴァの愛刀しているブラスターエクリプスがあった。


「いったい……どうなってるんだ……?」


混乱する頭を抱えながら、ウカビルは震える手で街を見下ろす。


住人たちも、みんな起き上がる。


「ノヴァ?」


ウカビルは必死でノヴァを探し回った。しかしどこにも彼女の姿はなかった。


ノヴァの剣を強く手に取った瞬間、ノヴァの思いが、記憶が頭の中に入ってきた。


ノヴァは自らの命を輝かせ、新たなる星――「新惑星クロノス(ノヴァ)」となって、この星と住人たちを再生させたのだ。


しかし、その対価として、ノヴァはもう二度と「元の彼女」として戻ることはない。


ウカビルは何も言わず、ただ虚空を見つめ続けた。


愛する人の命と引き換えに守られたこの星で、彼は一体何を思い、これからどう立ち向かえばいいのか。


(ノヴァ……お前は……)


かつての街並みは変わらないのに、最愛の人がもうどこにもいないという現実に、ウカビルの心に静かな絶望が深く刻まれた。

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