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9.命を捧げるの意味

「さて、カリエがこちらの世界に居る理由とかは話し終えたから、そろそろ僕のお願いについて話すよ」


 そう言って、神様は表情は引き締めてから口を開きましたわ。


「君も知っている通り、カリエはオズウェル・バースランドと恋に落ち、そして嫉妬に狂ったアンジェリークに短剣で刺されて死んだ。

 その後、色々とあってカリエは禁術により動く死体として蘇った。

 これが、まともな事だと思うかな竜宮木そあら」


(そう言うという事は、まともな事じゃありませんのね。

 確かに人をゾンビとして蘇らせるなんて、それも禁術なんて呼ばれる御業ならロクな事じゃないのは目に見えてますわ)


 わたくしの言葉に、神様は頷く。


「そう、ロクなもんじゃないよ。

 向こうの世界で禁術と呼ばれる物は色々あるけど、そのすべてが酷いものだよ。

 そしてカリエを動く死体として蘇らせるのに使われた禁術、亡者転生については鬼畜で外道としか言いようがないよ、ほんとに」


(鬼畜で外道、という事はダークファンタジーな物語に出てくる多くの人間を生贄に捧げると言った事ですの?)


「いや、生贄は出ないよ。

 禁術を発動させる術者が、死後に冥府の女主人の傀儡になるという契約を交わすだけで行える手軽な術だよ。

 それに条件さえ満たせば動く死体は人間として完全に蘇る事が出来る。

 問題は、その禁術を広めたのが冥府の女主人自身という事と、その動機だけどね」


 そう言って、神様は忌々しそうに口を開きましたわ。


「かつてあった話をしよう。とあるカップルが居て、ある日女性は流行り病に掛かり死んでしまった。

 男性は嘆き悲しんだ。そしてどうにかして女性を取り戻そうとして亡者転生の禁術を行った。

 女性は動く死体として蘇り、そして男性は女性を二度と失わないと誓った」


(……だいたい察しましたわ)


「うん、簡単に予想出来るよね。もう悲惨だったよ。

 動く死体として蘇った女性は禁術の影響で心も体も次第に怪物へと成り果てていき、男性は常に聞こえる冥府の女主人の呼び声に次第に狂っていく。

 怪物へと化していく女性は隠れて人々を襲い、その街は多数の死傷者が出た。そして、男性は残った理性で女性を止めようとして、そんな時に常に聞こえる冥府の女主人から告げられる。

 彼女を人間に戻す方法がある」


 神様は、ただ淡々と口を動かす。

 感情を込めず、ただ淡々と。


「戻す方法は、その時は何だったんだろうね。冥府の女主人が禁術を使った人それぞれに色んな方法を提示するみたいだし。

 ただ、男性は冥府の女主人から訊いたその方法を訊いて、そして女性と対峙してやり遂げた。

 女性から受けた攻撃によって致命傷を受けながら何とか彼女を人間として蘇らせた男性は、女性が自分のしてきた事に絶望の表情を浮かべている様子に声を掛けようとした。

 その瞬間に女性は地面から溢れ出た無数の手に捕まれて冥府へと引きずり込まれた。

 目を見開き呆然とする男性の耳元に、冥府の女主人から最後の言葉を告げられたんだ」


 ―――今回も、良い暇つぶしになったわ。


 神様は、深いため息を吐いた。

 

「冥府の女主人は、人間が不幸のどん底に堕ちて絶望に壊れていく様を見て楽しむためだけに亡者転生の禁術を人間達に広めたんだ。

 そのせいで多くの人が殺し合い、希望から絶望へと落されていった。

 だけど向こうの世界の神様は手を出せなかった。冥府は彼女の領分。彼女が冥府に居る限り、彼女は誰にも傷つけられることは無い」


(邪神ですわ……おもっきし邪神ですわね、ほんと)


「そうだね。そしてその冥府の女主人の広めた禁術によってカリエは動く死体として蘇った。

 もうすでに彼女の心には禁術の影響は出ているんだ。竜宮木そあら、心当たりはあるだろう」


 そう言われて、無人島でのカリエさんとの出来事を思い出しますと、確かに思い当たる節がありますわね。

 そもそもカリエさんは心優しく、暴力や暴言などの人を傷つける事を忌避する人ですわ。

 それなのに彼女は私の顔面にグーパン入れてきましたり、飛び掛かってきましたわね。

 つまりカリエさんはどんどん怪物へとなっていくという事……。


「このままだと、カリエは怪物となってしまう。それは望むべき事じゃない。

 だからカリエを人間として蘇らせる。そのために竜宮木そあら、ここで魂だけの存在となっている君には今から異世界の冥府へと赴いてカリエを連れ帰って貰いたい」


(連れ帰る、ですの?

 無人島にカリエさんは居ますわよ)


「確かにカリエの肉体は無人島にある。

 けれど魂は別なんだ。カリエの魂は冥府に囚われている事を自覚しないまま現世の肉体を動かしている。

 例えるならラジコンみたいな物かな。そして魂が冥府にあるという事は、それは冥府の女主人の所有物という事。

 彼女の魂が冥府にある限り、僕や他の神様がカリエを人間として蘇らせたとしても、魂が冥府の女主人の所有物である限り肉体も女主人の物として扱われて冥府に没収されてしまう」


 そうして、神様は一拍の間を置いて口を開きましたわ。


「うん、ぶっちゃけよう。

 竜宮木そあら、君は冥府の女主人からカリエの魂を盗み出すための、()わば鉄砲玉になって欲しいのさ」


(ぶっちゃけすぎですわ神様!?

 というより命捧げるってそういう意味ですの!?)


「ちなみに流石に生身で冥府に乗り込めなんて無茶は言わないよ」


(という事は、神様的な加護や魔法みたいな物を―――)


「僕の力で生み出したチャカとポン刀、それが君の装備だよ」


(ファンタジーに極道もんを捩じり込んで来ましたわよこの神様!?)


 わたくし、どうやら冥府にカチコミを掛けるようですわ。


 ……御壮健な父方と母方の御爺様方から訊いた昔話を思い出しますわね。

 二人は父と母が結婚する前までは、よく喧嘩していたとか。父方の御爺様の刀の切味は凄まじかったと母方の御爺様が笑いながらウォッカを煽ってましたわ。

 その後、当時六歳だったわたくしに物騒な昔話をしていた御爺様方は、それぞれの御婆様方に子供の教育に悪い話をするなって怒られてましたわね。


 ………。


 わたくしのおうち、ちょーぶとうはで御ハーブ。





なお、父方と母方の両方の会社は合法的です。

竜宮木そあらの両親が結婚した後、二つの家は共に手を結んで商売をしております。

みかじ……警備事業、みつ……運送事業、などなど幅広い事業展開、一部の業界では荒かせ……大きな収益をあげています。


あと、警察や大物政治家とも仲が良いです。

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