ビーチと温泉とバカンスバトル 2 シュタインベルクのターン
びっくりした、目の前が真っ暗になって、
気づいたらサイマーに抱えられている。
温泉に長く入りすぎたんだ、きっと…。
トゥルカナと向かい合って温泉に浸かってたから。
トゥルカナは色っぽいし、見つめられてるだけで僕は頭が沸騰しそうだった。
本当に筋肉すごくて、身体中傷だらけで、戦士の身体。
僕のヒョロヒョロした身体が恥ずかしい。
サイマーが僕をベッドに横たえてくれる。
まだ頭がクラクラして動けない。
濡れた服を脱がしてバスローブまで着せてくれてる。
恥ずかしいけど、動けないからしょうがない。
裸でいるわけにもいかないし。
シュタインベルク
「サイマー……………ごめんね…。
サイマー
「ん………、気にしないで。
それよりじっとしてて。」
シュタインベルク
「あ…りがと。」
サイマー
「君は暑さに弱いんだから、無茶しちゃダメだよ。」
サイマーは優しく頭を撫でてくれる。
シュタインベルク
「サイマーは…いつもやさしいね…。」
サイマー
「誰にでも優しいわけじゃないよ…
シュタインベルク…僕は…………。」
サイマーの手のひらが僕の頰を包んだ。
その時、扉がバンっと叩かれた。
トゥルカナ
「おい、水と氷。持ってきた。」
サイマー
「あ……ああ……、すまないな。」
サイマーはパッと僕から手を離す。
僕は冷たい水を飲んで、氷で体を冷やすとやっとクラクラが治った。
シュタインベルク
「治ったみたい。」
サイマー
「良かった。」
トゥルカナ
「腐ったチビオレンジどころじゃないな、
もう、ジャム、チビオレンジマーマレードだな。」
シュタインベルク
「うるさいな、貴様からオーク汁が出て、それにやられたんだよ!」
サイマー
「よせ、シュタインベルク、まだ暴れちゃダメだ。」
トゥルカナ
「なら、もうひと勝負どうだ!
えーーーっと…………
そうだ、どっちが長く起きてられるか勝負だ!」
シュタインベルク
「いいだろう!その勝負受けてたとう!」
サイマー
「ちょっと待った。トゥルカナ、どういうつもりだい?
シュタインベルクは疲れてるんだよ、寝かせてやれよ。」
トゥルカナ
「王への道がそんなに甘いわけがないだろう?」
シュタインベルク
「そうだよ、サイマー。
僕は絶対に負けはしない!」
サイマー
「しょうがないな、じゃあ僕も参加するよ。」
オルタ姫
「まあ!面白そうじゃない!
どうせならみんなでやりましょうよ!」
入り口から姫がニコニコ笑いながら入ってきた。
その後ろで手下達も笑っている。
…………………………………
姫は浜辺のデッキに簡易ベッドを作らせ、
ソファやテーブルも設置、
お酒と夜食もたくさん準備した。
浜辺には大きな焚き火、その周りでワイワイ話しながら、
眠くなった人はベッドで寝るという仕組みらしい。
空は満点の星空、それぞれキャンプファイヤーでマシュマロを炙って食べたり、
ふざけて夜の海ではしゃいだりみんな楽しんでいる。
オルタ姫
「わたし、こういうのに憧れていましたのよ!
星空の下で眠るなんて、なんて素敵でしょう!」
手下
「ええ、プチ野宿ですわね!」
オルタ姫
「お父様とお母様には絶対内緒にお願いしますね!皆さま。」
姫はすごく楽しそうだ。
何不自由ないように見えて、王位継承者…。
色々と苦労も多いんだろうな。
僕も焚き木のそばに座ってぼーっと火を見つめていた。
なにかがキラッと足元で光った。拾って見ると小さな石。
あれ、これは珍しいな。
夜だから色はわからないけどくねっと曲がって面白い形している。
ツルツルっとして手触りがいい。
トゥルカナ
「寝てないだろうなあ、チビオレンジ。」
トゥルカナがドスッと僕の横に座った。
うわっ……胸がドキドキする。
シュタインベルク
「寝るかよ、オーク野郎。」
トゥルカナ
「なんだ、それ?」
シュタインベルク
「拾った石ころ。」
僕はトゥルカナに見せるとその石を手にとって触っている。
トゥルカナ
「面白い形だな。」
シュタインベルク
「あ…ああ。」
トゥルカナ、今日はあんまりつっかからないな。
いつも僕の事毛嫌いしてるのに…。
トゥルカナ
「俺、島でお前にヤシの実飲ませてやったよな……。
これ、欲しい。」
シュタインベルク
「え…………。」
トゥルカナ
「俺にくれ。」
シュタインベルク
「た、確かに借りがあるし…、胸糞悪いけどしょうがないな…。
お前にやる。」
知らなかった、トゥルカナが石好きなんて。
貴族の男子
「おーい、トゥルカナもシュタインベルクも飲めよ!」
シュタインベルク
「ああ、ありがとう。」
僕は飲み物を受け取ってグイッと飲んだ。
シュタインベルク
「お、美味い…。」
ミルクとチョコの味がする。
途端にお腹が熱くなって、頭がホワンとする。
僕は美味しくてごくごく一気飲みした。
トゥルカナ
「あっれ………、これ………。」
大好きなトゥルカナが3人に見える。
しかも3人はゆらゆら揺れだした。
なんだかめちゃくちゃ眠たい。
トゥルカナ
「お、おい………。」
もっとトゥルカナを見ていたいのに瞼が重い……。
僕はトゥルカナを睨みつけながら必死で閉じようとする瞼をこじ開ける。
だが勝てない、トゥルカナの姿がぼやけて、
僕の瞼は無常にもがっしり閉じた。
…………………………………
僕はその時飲んだ酒をこの後ずっと後悔した。
なにせ、朝にはトゥルカナがいなくなっていたからだ。
辺境の前線で大変なことが起こったらしく、
トゥルカナはすぐにここを発ったらしい。
それから2年も会えないなんて思いもしなかった。
つづく