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花結び  作者: そらねこ
5/6

はなむすび


「はぁ


はぁっ


はぁっ」



前世の記憶?をなぞり、あの気持ちを再び味わうことに集中していた意識が、また、こちら(・・・)に戻ってきた。




…胸が苦しい。

…足が痛い。



どれ程走り続けているだろう。

流石にペースは落ちている。


背後の蓮華は女性なので、俺よりもっとペースダウンしている。




「?」


突然、右手に違和感を感じた。




「っ!


うわぁぁぁっ!」


確認した瞬間に、慌ててそれ(・・)を放り出した。



カシャンカシャーン!


果物ナイフは勢いよく地面に落ちた。



何故!?

どこから!?


刃先には血がついていて、間違いなく、それは、

蓮華を刺した(・・・・・・)果物ナイフ(・・・・・)だと思った。

俺の右手は突然、それを握っていたのだった。





「暁ぃ!アンタにもあの痛みと苦しみを味合わせてやるわぁぁぁ!!!!」


振り返ると、果物ナイフを拾い上げた蓮華が再び勢いよく追って来始めた。



恐怖で俺も再び猛烈に駆けた。






「え!?わっ!」


ドサッ!


突然、足元を何かにくるまれたようになり、大きく転んだ。


「…っ、ヤバい、早く逃げな…


えっ!?!?!?!?!?」


え!?女性(・・)!?

発した自分の声に驚き、言葉は途中で途絶えた。


俺の声では無かった。

星志の声でも無かった。


体を起こすと、自分が暁でなくなっているのが分かった。

今は、星志とも違う女性の体で、着物を着ていた。

髪は頭上で結い上げられているようだ。


ざぁぁぁぁっ


「!」


頭の中に、突風が駆け抜けたように感じた。


突如、理解(・・)した。



自分は暁の前の人生では、この女性、お花、だったのだと。





カシャーンッ!


背後でナイフが落ちた音がした。


そうだ!早く逃げなきゃヤバ…

思い出して、咄嗟に立ち上がり、つい後ろを振り返った。



「…え!?」


着物の裾をまくり、走り出そうとしていた足が止まった。

背後にいたのは、蓮華ではなかったのだ。

金髪で澄んだ水色の瞳の、まさに、人形のような美しさの女性だった。着ているのもドレスで、よく似合っていて、本当にお人形のようだ。



「…っ!」


ざぁぁぁぁっ!


再び、頭の中を突風が駆け抜けた。


頭の中に、目の前の彼女の人生(・・)の映像が流れ始めた。



ヨーロッパのどこか。

彼女はあまり階級の高くない貴族の娘として生まれた。だが、その美貌ゆえ、高い階級の貴族から求婚を受けた。本音は断りたかったが立場上それが出来ず、14歳で結婚した。

夫は容姿も性格も悪く、とても愛せる相手ではなかった。

そして、嫁ぎ先の両親や親族からは、実家の位が低い事で馬鹿にされ、苛められ続けた。

驚くほどの美貌を持っているのに、笑顔とは無縁といってもいいほどの、とても暗く、辛い人生だった。



「…」


「…」


私達は、黙って、お互いを見つめている。


恐らく、彼女は、お(・・)の人生を(・・・・)見ている(・・・・)のだろう。

彼女の頭の中に、私の人生の映像が流れているのが分かる。


お花は貧しい農家の娘として生まれた。お花も14歳で嫁いだ。

夫はとても志が高く、誠実で真っ直ぐな人だった。お花はそんな夫を心から愛し、誇りに思っていた。貧しいが、心から幸せだった。

ところが、夫が思想の進んだ人間だった故に、それを恐れた弱い人間から罠に嵌められ、無実の罪で死刑に処された。お花も罪を問われ、夫は無実だという証言を貫き…。


「No!!!

Stop!!!」


彼女は突如悲鳴を上げ、走り出した。


「あっ、待って!」


恐らく、私の処刑の映像(・・・・・)を見たのだ。見せしめのための酷いものだった。



「待って!

私は大丈夫よ!

私は最期まで、心は屈しなかった!

最期まで、自分の誇りを貫いたの!」



「help!!!!!!」


彼女はパニックに陥ってしまったようで、無我夢中で走る。

着物で走りにくく、私はどんどん引き離される。



「待って…!」



数10メートル程走った時だろうか。


その異変は再び起きた。



「!」


前方を走る彼女の髪色や質や長さが変化していく。体型や服も。



「…どうして…」


走る足を止め、そう呟いた時。


「ふぉっふぉっ。

お主がこれまで沢山の人生を歩んできたように、彼女(・・)も沢山の人生を歩んできていることに不思議は無かろう」


「!?」


再び、あの謎の声がした。



「ここは、時の流れがめちゃくちゃな空間なのじゃ」


「…時の流れがめちゃくちゃ??」


「ある場所では一瞬で30年分の時間が巻き戻り、別のある場所では、一瞬で100年分の時が進み…。とにかく、滅茶苦茶じゃ。まさに、カオス」


「カオス???」



…。


それっきり、また声は止んだ。



前方には、燕尾服を着た男性が立っていて、私を見つめている。



私は彼に向かって歩いて行きながら、頭に流れ始めた彼の人生の映像を見た。

私の姿も、お花から、お花の前の人生の時の姿へと変化していた。




私達はそうやって、時には歩きながら、時には走りながら、自分とお互いのこれまでの(・・・・・)沢山の人生(・・・・・)を見た。






「…ほぉっほぉっ

お主にとっての、あるひとつの不思議な(えにし)に気付いたようじゃのぉ」


私の心に、ある閃きが起こった時、再びあの声がした。


「はい…」


頬に涙がつたった。



前世の映像を見る時にも、星志の能力?は働くようで、映像に出てきた自分と彼女(・・)以外の人の色が見えた。

そして自分の方の人生には、毎回、優しく澄んだエメラルドグリーンのような緑色の人がいた。暁の時には妻、お花の時には夫、それ以前には、姉や、師匠や、自分の息子や…、いつも、私を支え、優しさや愛などといった大事なものを教えてくれた存在。



「お母さん…。」



気付くと私の姿は、星志に戻っていた。



そう、いつの人生でも自分にとって大事な存在となってくれてたのは、今の人生でのお母さんだったと、分かったのだった。



「今までも、ずっと、側にいてくれてたんだ…」


母が私を包み込む、あの絶対的な優しい眼差しも、

それに対して私が感じる絶対的な安心感も、

そのどちらの真の意味も、分かった気がした。


それは長い長い年月をかけ続いてきた、私達の信頼の証なのだろう。





「ふぉっほぉっ。

不思議なものじゃのう」



「とっても…。



それから、あなたは、黒猫さんね?」


何故か不意に、それが分かった。



「そうじゃ。

この間の公園の。

あの黒猫の体を借りた者じゃ。


ほっほっ」



…黒…。


心に引っ掛かるものが浮かんだ。




数メートル離れたところを、渡辺さんが歩いている。


私と渡辺さんはこれまで、自分とお互いが、これまで幾度となく繰り返してきた輪廻転生を見ていたらしい。


私の人生は、幸せや楽しいばかりではないが、愛や喜びを知る事が必ずあった。


だが、渡辺さんの人生は、辛く苦しいものが多かった。心からの笑顔や、愛に満たされた事がないといってもいいくらいに。


そして、渡辺さんのこれまでは、周りの人が、黒い色の人が多かった。

愛を感じても、裏切られたり利用されたりしていた。





「…あれ?」


数メートル先に、あの果物ナイフが落ちている。


いつの間にかまた同じ場所に戻ってきたのだろうか。



私の心にまた、渡辺さんに対して、愛しさや巨大な恐怖心といった感情が浮かんだ。

それは、星志として生まれ変わっても、まだ、暁の感情を引きずっているんだと分かった。


愛している感情。

手に入れたいと強く焦がれる欲求。

殺してしまった罪悪感。

殺人の恐ろしさ。

罪がバレ、逮捕されることへの恐怖。

いつ警察が逮捕にくるのかという、心配と緊迫感。


それらがごちゃ混ぜになり、私の心(記憶?)の奥にある。




渡辺さんも、そうなのだろうと思った。


私と出会ってから、モヤモヤた気持ちを抱えていたらしい。

そして、それは、私の事を大嫌いだという感情だと確信した、というような事を言われた。


突然命を断たれた無念。

刺された痛み、死んでいく苦しみ、恐怖。


暁へ対して、巨大な怨みを持ったことだろう。


それらの感情を引きずって、渡辺さんとして生まれてきたのだ。





たっ


渡辺さんが、果物ナイフに向かって走り出した。




「ほぉ。

お主、自分が本当はどうしたいか、分かったようじゃの」



私は分かった。


渡辺さんも分かったのだろう。



果物ナイフの刃先を私に向けて走ってくる。



「…よくも…!

よくも前世で私を…!」



サクッ


果物ナイフは簡単に腹部に突き刺さった。


体中に物凄い衝撃が走った。




「…!」


渡辺さんが飛び退くと、私は全身の力が抜けて、床に膝がつき、そのまま倒れた。



ナイフが刺さったままなので、出血はじわりと滲み出てくるような感じだ。血液って、すごい熱量を持ってるんだなと思った。お腹が熱い。


間違いなく、星志の人生で一番痛い。





「…なんで…!

なんで…!」


渡辺さんは、床に正座して、頭を抱えて、泣いているようだ。独り言と嗚咽が聞こえる。




「ご…


ごめん ね、


渡辺 さん…」



声を出すのもお腹に響いて、とんでもない激痛が走る。

でも、どうしても伝えたかった。


「一回 じゃ…、


怨みは、晴れないでしょ?



私はあの時、

力の弱い女性の貴女を、


力で押さえ付けて、

何回も何回も…」



どれ程の苦しみを味わわせたのだろう。



「気が晴れるまで、好きにしていいんだよ?」



これから更に何回も刺されるなんて、絶対に嫌だった。

でも、決めたのだ。




「…!」


渡辺さんは、顔を上げて、目を丸くして私を見つめた。


そして。



「バカじゃないの!?」


すごい剣幕で怒鳴った。



「なんで逃げないのよ!


まじ意味わかんない!


気持ち悪すぎでしょアンタ!」


泣きながら、渡辺さんは喚いている。



「気が晴れないじゃない…!




アンタが逃げないから…、



刺しても全然気が晴れないじゃない!」




「ほっほっほっ。


それがお主()の今までの沢山の人生で学んできたことの答えじゃのう」



不思議な声の調子は、相変わらずのんびりしている。



「星志は、愛を感じる事で学んだ」



そうだ…。

私は、渡辺さんを愛しいと思う気持ちに気付いた。

叶うことが難しかったため、愛情は、暁の中でいつの間にか歪んでしまって別の感情に変化してしまっていた。だが、それを紐解き、再び、愛に変えた時、私は渡辺さんから逃げるのではなく、受け止めたいと思ったのだった。



「渡辺さんは…

一体、どれほどの

苦しみを抱えてるのかな…?


私が半分受け取りたいの、


そしたら、


少しは楽に

なれるよね?」




「…っ」



渡辺さんは再び顔を手で被った。



「月姫は、苦しみを感じる事で学んだ」



「…私は、愛を感じる事で学んだ…

それは、幸せな事が多かった…。


でも、渡辺さん…、月姫…が学んだのは、苦しみを感じる中でだなんて…。

月姫は苦しんで、可哀想だよ…」



「そうじゃのぉ。


だが、その学びのおかげで、今、前世から続くとても強力な呪いのようなものを、浄化することができたのじゃ」


「…呪い?」


「他人への強き負の思いは呪いのようなものじゃ。

それで相手を不幸に陥れることもできるのじゃぞ」


「…そうなんだ…」


「確かに、月姫は苦しんで可哀想かもしれない。

でも、それが実を結び、こんなにすごい事を達成できたのじゃ


考えてもみい。

自分の命を、自分勝手な理由で突然奪った相手の事を許せるなんて、すごいことだと思わぬか?」



「…月姫…


私を、許してくれたの…?」



月姫は顔を上げた。



「許すも何も、星志に怨みはないじゃない。


それが分かっただけよ」



「…本当だ…。

すごい…!


それって、すごいことだね…!」



「…それに、冷静に考える事が出来たら、気付いたのよ。


蓮華があそこで死んでも、悔いはなかったなって」



「…!」



「あなた、逮捕されなかったんでしょ?」



「…うん」



「別にその事に対しても、あなたを責める気持ちは湧かないわ、冷静になれるとね。

その事実により、その程度の、そういう人生だった事がハッキリするから」


「…?」



「誰も、私が消えたけど、探さなかったって事。


私は、失踪した時に周りから探してもらえるような生き方をしてなかったの。

それは蓮華自身である私が一番分かってる。


私は、他人を心から信じられなかった。

信じて裏切られるのが怖かった。

だから、他人を自分から遠ざけて生きていた。

そんな生き方、何も楽しくなかったわ。


あの人生を続けたかったか、冷静な自分に問うと、あそこで終わって全然良かったとすら思える」



「…それは、

分からないよ?月姫…」



「?」



「実は、暁は、あれから2年後に不治の病で死んだの。

警察が捜査していたけど、

2年じゃ、暁まで辿り着けなかっただけかもしれないよ」


「…それは、可能性の話でしょう?」


「誰も探さなかったのも、

可能性の話だよね?」



「…それは…。




でも、あの時、私もあなたも、あんなに叫んだわよね?

あの時はまだ早い時間帯だったから、歓楽街のあの近辺は、人通りは少なかった。でも、開店の準備をしてる店主は沢山いたわ。

私達の異常な声は外に漏れてた筈だけど、誰も、助けに来なかったわよね?警察に通報した人もいないようよね。警察は来なかったんでしょ?」


「普通の人間は、

自分の身を守る行動を

本能的にとるよね?


皆、本能に従ったまでじゃないのかな?」


「…確かに、あの辺りの人達は、自分の身を守る事で精一杯な人が多かったと思うわ。周りと積極的に関わろうとする人はいなかったようだと思う」


「…全ては…、可能性の話だけど…。

…私が伝えたいのはね、

事実がどうかということじゃなくて…。


自分を責めたり、

卑下したりしないでほしいの…」


「…え?」


「周りを信じられなかったって言ってたけど、

そういう風になった理由があるんでしょ?

いっぱい、辛いことがあったんだよね?」


「…!」


「蓮華は、精一杯、頑張って生きてた。


だから、彼女の生き方を、

否定したり卑下したりしないで…

認めてほしいの。


蓮華の人生を否定することで…、

私を許す気持ちが生まれるのなら…、

私は恨まれたままの方が良いよ…!」


「…!」



「…」



「蓮華の人生を…


認める…」



月姫は瞳を閉じた。

ポロポロと、閉じた瞼から涙が溢れてくる。





「…ありがとう、星志…。


私、蓮華の分まで、月姫の人生を、後悔のないように生きていく…!」



月姫のこんなに生き生きした表情を見たのは初めてだった。


涙がキラキラと輝いていて、本当に綺麗だった。



「月姫、本当、凄いねぇ…。


良かった…。


…っ!ゲホッゲホッ…」


「…星志!!!!」


吐血した私に、月姫が慌てて駆け寄ってきた。



「大丈夫だよ、月姫。

なんか、気持ちいいから…」


なんだか、眠りに落ちる寸前って感じ。

頭がぼんやりして、瞼が重い。


「星志!

しっかりして!」


「大丈夫だよ、月姫。

眠たいだけ…」


「寝ちゃだめよ!星志!しっかり起きて!」


「大丈夫、ちょっと、うたたねするだけだから…。


おやすみ、月姫…」


「星志!

星志!」


「…」


「星志!」


「…」


「…うたたねなんて、嘘つき!



息…

してないじゃない!」



「…」



「星志!


星志ぃぃぃぃぃ!





うわぁぁぁぁぁぁぁぁん。


ごめんなさい…


ごめんなさい…


ほしぃぃぃぃ」




「お主には、許す以外にも、分かったことがあるのじゃろう?」



「…えっ!?


ちょっと、あなた!

星志を助けて!」


「救えるのはわしじゃない。

お主じゃ」


「え!?」


「星志を救えるのはお主しかおらぬ。


だから、頑張って、ちゃんと思い出すのじゃ」


「なんのこと!?」


「先程、無意識の中で、思い出した事で、頭の中で光輝いた事があるじゃろう?

落ち着いて、それを引っ張ってくるのじゃ」


「頭の中で光輝いた…




待って…!

そういえば、あの時…

何だったか…

何か思い出した時に頭の中に光が…。


あれは確か…

確か…」




「…」




「………




◇▼○■!




…そうか!

分かったわ!


さっき、閃いた時は何だか分からなかったけど、これは

魂の名前の片割れ(・・・)で、私の魂の名前…!



そして、もうひとつの片割れの魂の名前は、◆△●□

…これは星志の魂の名前(・・・・・・・)



…そうよ。

思い出した…。


私達は、元々同じ魂だった(・・・・・・・・)

それが2つに分かれ、私と星志それぞれの人生を歩き始めた…!




私達の元々の魂の名前は…

◆◇△▼○●□■」


ピカーーーーーーーーーーッ!


「きゃっ!


胸の奥から光が…!」



「よく思い出したのう。

お主はその為に、辛い人生を歩んできたんじゃろう?


魂の名前など、普通ならば、再び魂が1つになる時でなければ思い出せないことじゃ。

この偉業を成し遂げるには、相当の魂の修行を詰まないとならぬ。

お主はこれまでの様々な苦行に耐え、その結果、星志の方に大きな愛を教え、それで自分を救い、更に魂を洗練したのじゃ」



「私の光と星志の光が繋がった…!」


「お主()は元々1つの同じ魂。

今、死のうとしている星志は、その体から魂が抜け出てていっている状態なのじゃ。

同じ魂を持つお主なら、星志の体へ自分の魂を分け与えられる。


魂にも血液型のようなものがあっての。

血液型とは比べ物にならないシビアな適合性がなければ、輸血…いや、輸魂というのかの?それは出来ない。

それは、全く同じ魂でないと、出来ない事なのじゃ」



「星志の減った魂を、私の魂を分け与えて補う…!



それって、私の魂が減ってると思うんだけど、なんだろう。

すごく、心地いい…

魂が減るってこういうことなの?



目を閉じたら眠ってしまいそうなほど…」



「心地良いのは当然じゃ。


魂は本来、1つのもの。

それが分かれてる状態なのだから、人間が常に胸の奥に寂しさを抱えているのは当然なのじゃ。


1つの魂の持ち物だったものを、二人で分け合って、2つに分裂した。自分が持つことになったものは相手は持っていない。逆に相手が持つことになったものを自分は持っていない。

魂が分かれている間は、元々持っていたものが欠けている状態なのだから、物足りなく思うのは当然なのじゃ。


魂が再び1つに繋がるということは、欠けているものが補われる事で、それは魂が分かれてからずっと探していたものを見つけれた状態。

これ以上に気持ちが満ち足りる事があるじゃろうか?



…と、少し、喋りすぎたが、いつの間にか眠ったようで良かったわい」



「…すぅ


すぅ…」


「…すー


すー…」




「ほぉっほぉっ。

これはまた綺麗じゃのう。


魂と魂が繋がったところの結び目が、美しい花結びじゃわい」



花結び=蝶々結び

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