押収されたレーザー銃
その日、ロレンツォ教会の周りは騒々しかった。何台もの警察車両がロレンツォ教会を取り囲み、その異様な事態にやじ馬たちが何事かとその警察車両の取り囲むように集まっている。
緊張した面持ちで、外を固める警官たち。そして、教会の中ではさらに緊張した警官が神父と対峙していた。
「見ろ。この写真を。これはお前だろう」
ここにもセルジオが撮った写真が広まっていた。
差し出された写真を神父が覗き込み、少しにやっとした。
「確かに、私のようですが」
たじろぐ様子も無く、神父は答えた。一方の警官の方からは緊張感が漂っていて、落ち着きもない感じで、ごそごそと胸ポケットに手を突っ込み、何かを取り出そうとしている。
警官が取り出したのは、あすかが地下に向かってレーザーを構えている写真だった。
「この女はどこにいる?そして、この女が使ったこの武器は何だ?」
神父にその写真を示しながら、警官が問う。神父はちらりとその写真を見た後、警官に視線を向け、この捜査の目的をたずねた。
「この捜査の目的は何ですか?」
「この女がこの店を損壊したことによる捜査だ。この女とこの武器をここに出せ」
「と言う事は、この娘を実力で逮捕する自信があると?」
その言葉は誰が発したとしても、相手を威圧するに十分な言葉であったであろう上に、神父の表情には聖職者とは思えぬ凄味があった。
その凄みに押され、一度警官は一歩引き下がったが、真っ赤な顔をして、再び神父に迫る。
「貴様、警察を脅す気か?」
「何をおっしゃいます。脅すも何も、いつも、マフィアには関わらないではないですか?危ないものには関わらないのでしょう?」
「貴様!まずは貴様を逮捕するぞ」
的を射た神父の言葉に警官はいきり立ったようだったが、実際に力に訴えるため、神父に近づくと言うような行動を取る気配は無かった。
「まずはこの武器だ。令状はあるんだ。中を捜索するぞ」
その警官の言葉に、背後に控えていた警官たちに緊張が走る。誰もあすかを相手にしたくはない。中に入るとなると力での衝突となるのは火を見るより明らかだ。
そんな時、教会の奥に通じる扉が静かに開いた。警官たちは中からあすかが出てきて、襲われるのではと恐怖し、今すぐにでも逃げ出せる体勢に警官たちみなが入った。
警官たちが注目する扉の中から現れたのはもう一人の神父だった。
その手にはあすかが使っていたレーザー銃が握られていた。
「これですか?」
その神父は警官たちに近寄ると、手にしているレーザー銃を差し出しながら言った。
「そ、そ、それだ!こちらに渡せ」
声を上ずらせながら、神父に向かって命令した。
「どうぞ、お受け取りください」
神父がレーザー銃を差し出しながら、警官たちのところに歩み寄って行く。警官たちはそれを受け取りに行く様子もなく、少しずつ後ずさりしているようにも見えた。
そんな警官たちの反応を意にも介さず、神父は警官たちに近寄り続け、間合いまで近づくと、さあとばかりにレーザー銃を警官に差し出した。
差し出された警官は恐る恐るレーザー銃を受け取ると、まじまじと眺めはじめた。興味を誘うレーザー銃に近くにいた警官たちも集まってきた。
レーザー銃を手にしていた警官が本物かどうかを確認するため、教会のドアに銃口を向けた。取り囲んでいた警官たちが、銃口の先の空間から立ち下がって、その威力を確かめようと目を凝らす。
警官がトリガーを引くと、銃口の先から一直線にちらちらとその光跡を浮かび上がらせながら、ドアを焼切って行く。
「本物だ」
警官たちから驚きの声が上がった。
レーザー銃を手にしていた警官の顔つきがにやりとした。
さっきまでのおどおどした態度とは打って変わって、強い口調で神父たちに続く要求を出した。
「よし。次はあの女だ。早く出せ!」
「残念ですが、ここにあの子はいません。もうここに戻って来ることもありません」
「いない。なら、中を探しても問題ないだろう」
レーザー銃を手にした警官はレーザー銃を構えながら、扉の奥に進もうとした。
「そうですか。どうぞ、お調べになってください。ただ」
神父のその言葉に、警官たちの足が止まった。その言葉によくない言葉が続く。そう警官たちはみな想像し、固まっている。
「ただ?」
「生きて戻っては来られないかもと、言いたかっただけです。それを覚悟でお調べになると言う事ですよね」
やはり、よくない言葉が続いた。
レーザー銃を手にしていても、自分たちが無傷で勝てるのか確信は持てていない。
今回の作戦の第一の目的がレーザー銃の押収である以上、これ以上危険を冒す必要性は低く、多くの警官たちは今すぐにでも、この場から立ち去りたいのが本音である。
「分かった。ここにはいない。戻って来る事があったら、警察に出頭するよう伝えておいてくれ」
警官たちはその言葉を残し、身体を反転させ、引き上げ始めた。
教会から外に出た警官たち。外の明るい日差しを浴びるた警官たちの顔と言う顔に安堵感が浮かんでいた。
そんな警官たちを神父たちは教会の中から、見送っている。
最後の一人が出て行くと、神父たちはドアを閉めた。
「壊されましたね」
神父の一人が言う。
レーザー銃で破壊されたドアの穴から、外のまばゆい光が差し込んでいる。
「仕方ないですね。
直しておきましょう」
「しかし、よかったのですか?あれを渡して」
その言葉に、たずねられた神父が鼻で笑うような仕草をした。
「かまいませんよ。
コピーしようと分解しても、できないばかりか、そこで壊してしまうでしょうし。彼らも面子が立たなければ、引き上げられませんでしょう」
「それはそうかも知れませんが、向こうが使う事だけを考えた場合、その銃口が我々に向かえば危ないのでは?」
「あすかがあれを使って、モニカを倒したことが明らかになってしまいましたからね。奴らはクラウディアを倒すために欲しいのでしょう。
しかし、残念ですが単にあれを使っても、クラウディアを倒す事はできませんよ」
「そうなんですか?
でも、あすかはあれで二体のヒューマノイドを倒したのでしょう?」
「たしかにあれで倒した訳ですが、それなりに使わなければ役に立たないと言うことですよ。ヒューマノイドの装甲は丈夫ですから」
そう言うと、その神父はドアの向こうに消えて行った。




