セレンの一撃
セレンはあすかの存在に気付くと、建物の屋上を次々と飛び移り、あすかの近くまで接近し、建物と建物の間にある細い隙間に、セレンが飛び降りた。
セレンはその隙間から、何事も無かったかのように通りに出ると、あすかの方に向かって歩き出した。
普通の人間が飛び降りられる高さではなかったが、セレンには容易なことである。
その時、すでに通りではコルレオーネファミリーのソルジャーたちはあすかの手によって、葬られていた。
身を潜めていた人々が姿を現し、遠巻きにあすかを取り囲んでいる。
そんな中、セレンが行く手を阻む邪魔な人々を手で排除しながら、あすかに近づいてきたため、人々の間にざわめきが起きた。
その気配にあすかが振り向く。
人を押しのけて、やって来る者がいる。
あすかが一度しまったピストルを取り出した。
新たな抗争の予感に、人々があすかから離れ始めた。
人々が遠ざかり始めた通りを悠々と逆にあすかに近づいて来るセレンの姿が、あすかの目に映った。
「セレン」
あすかがつぶやくと同時に、構えかけていたピストルを下げた。
「私の名を知っているのか?」
あすかのつぶやき声を聞き取ったセレンが、ぽそりと言った次の瞬間、セレンは戦闘モードに入った。
一瞬の内にあすかの目の前に移動した。
あすかの目が見開く。
セレンがすかさず、あすかの頭部に右足で蹴りを入れた。
あすかのピストルも火を噴く。
ほぼ同時。
あすかのピストルはセレンを支えている左足の外装を打ち破った。
一瞬の制御が止まった事で、セレンはバランスを崩したが、蹴りはあすかを捉えた。
あすかがその衝撃で飛ばされ、建物の壁に激突する。
「きゃー!」
遠巻きに事の成り行きを注視していた人々から悲鳴が上がる。
あすかは建物の壁に上半身を任せながら、倒れたままぴくりとも動かない。
「あの女を傷つけはしたが、一撃でお終いか?
あっけなかったな
しかし、一瞬にしてあの女はあすかの前に現れたが、これは一体どう言うことだ?」
通りの向こうに止まっているバイクの横にセルジオが立って、全てを見ていた。
当然、ビデオも回している。
「うん?
あれは?」
セルジオがズームしているビデオ映像の中に映るあすかを見てつぶやいた。
倒れてめくれたスカートの隙間から、あすかの足に何かが装着されているのを見つけた。




