作戦成立
セルジオはそんなカタラーニのボスの表情など気にしていないかのように、淡々と話の続きを始めた。
「もちろん、協力いただく引き換えに、ガンビーナ側から資金が提供されます。
囮の役とはすなわちコルレオーネに攻められる役をお願いするからです」
「はあ?」
カタラーニのボスに怒りの表情が一瞬浮かんだ。
だが、相手はコミッションの意向を伝えに来た男である。
怒鳴るわけにもいかず、まだじっとこらえて、話を聞いている。
「人的被害は出しません。カタラーニさんの施設をコルレオーネが少し破壊します。
それをいかにも全面戦争で多大な被害が出ているかのような誇張した記事にして、世間に報道してもらいます。
実際の被害は微々たるもので、破壊された施設を修復しても、お釣りが来るようなお金がガンビーナからきますので、損はしません。
カタラーニさんはその事で、ベルッチファミリーに救援を求めてください。
その際に、あのあすかも現れたと言ってください」
「あすか?なぜ?」
「ベルッチファミリーからしてみれば、あすかは一筋縄では勝てそうにない敵です。
そして、ベルッチファミリーにも恐るべき女のソルジャーがいる。
チェーザレはあすかに痛い目にあっているため、あすかがいると流せばチェーザレは必ずその女のソルジャーを送り込みます。
この二人につぶしあってもらいます」
「しかし、そんな都合よくあすかはやって来るかな?」
「大丈夫です。すでにあすかをおびき寄せる方法は掴んでいますし、チェーザレにはあなたの方から、そう連絡してもらいます」
カタラーニのボスは腕を組んで、目を閉じた。
今休戦協定中のベルッチファミリーを陥れることになる。
裏切り?
同盟ではない。ただの休戦である。
なら、勝てそうな方につくべきだろう。
ベルッチファミリーには勢いがある。しかも、あの女のソルジャーはおそるべきものであるが、五大ファミリーの二つが組んでいる方に分があるのではないだろうか。
カタラーニのボスが、結論を語ったのは数分後だった。
目を開けると、セルジオをしっかりと見つめ、大きく頷いた。
「分かった。協力すると伝えてくれ」
セルジオと二人は椅子から立ちあがり、にこやかに握手を交わした。




