表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/101

警察署にて

 そこは多くの窓から差し込む外の日差しと、天井に取り付けられた照明で、かなり明るく広いフロアだった。そのフロアにはそこで働く者たちとそこにやって来る者たちとを隔てるカウンターが設けられ、空間を内と外に分けていた。

 カウンターの上には暴漢から内側の者たちを守るため、強化プラスチックでできた衝立まで設けられていた。

 内側でカウンターの前に座るその男は目の前のカウンターに目をやることも無く、新聞を読んでいた。


 「最近はマフィアの抗争が多いなぁ。

 ベルッチがエルカーンを攻めてから、戦争状態じゃないか」


 新聞を読みながら、男がぶつぶつ言っている。


 リリリーン。リリリーン。


 男の横に置かれた電話が鳴ったが、男はちらっと見ただけで、電話を取る素振りも見せず、新聞に目を戻した。


 「しかし、この子はなんで、こんな戦いに絡んでいやがるんだ?」


 男は新聞に載っているあすかの話を読むことに熱中しており、衝立の前に人が立った事にさえ気付いていない。

 男の前に立った女は全く自分の事に気づかず、新聞から目を離そうとしない男に業を煮やし、衝立をどんどんと叩きだした。男は新聞を下げ、前を見て、ようやくそこに一人の中年の女が立っていることに気付いた。


 前に立っている女はカテリーナと言った。

 男が面倒臭そうに、カテリーナにたずねる。


 「どうしました?」


 「娘が、娘のルチアーナがさらわれました。

 娘を助けてください」


 カテリーナの表情からは、真剣に助けを求めている事がうかがい知れた。

 一方の男は厄介な事になりそうだと感じ、関わりたくなさそうな表情がありありと浮かんでいる。


 「で、誰に、どこに、とか分かりますか?」


 「はい。ガンビーナファミリーです。

 借金が返せないのなら、娘を売り物にすると言っていました」


 男はやっぱりと言う感じの仕草をしながら、カテリーナに言った。


 「だめだね。ここは警察だ。マフィアには関わらない」


 「警察だから、来たんじゃないか!

 警察なんでしょ!」


 カテリーナは必死の形相になっていた。

 ふうと男は首を横に振った。

 その時、男にさっきまで読んでいた新聞記事が目に入った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ