あすかの危機
あすかが車の側面から銃撃を加える。
あすかが放つ銃弾の前に、何の抵抗も見せず車のウインドウガラスは瞬く間に砕け散り、車内のソルジャーたちに銃弾と共に襲い掛かる。
きらめくガラス片とほとばしる真っ赤な液体が入り混じった空間が、車内に出来上がった。
そんな頃、建物に激突して停車していた先頭の車から、ソルジャーたちが出てきて、あすかに狙いをつけていた。
あすかが銃弾を防ぐため、たった今銃撃を加えた車の側面に身を潜める。
もはや、その仲間の車に生存者がいないだろうことは明白だった。
ソルジャーたちが、あすかが盾にしている車に、躊躇なく銃弾の雨を降らせる。
身を潜めているあすかの頭上を銃弾が飛んでいく。
あすかは身をかがめたまま車の側面を移動し、車の後側に身を移した。
その場で、あすかは手にしていたマシンガンを捨て、もともと手にしていたピストルに弾を補充した。
あすかがピストルを手に、飛び出す。
ソルジャーたちもその視界に、あすかの動きをとらえた。
すぐさま銃口があすかに向けられる。
あすかの動きは速い。
走る。
ジャンプ?
止まる?
奇妙な動きをしながら、あすかが銃を撃っていく。
あすかが持つピストルから、小さな火の花が3つ花開いた。
マシンガンを構えていた3人のソルジャーたちが、あすかのピストルの花に応えるかのように、額から真っ赤な、そして細長い花弁を咲き散らして、のけぞりながら地面に倒れこんだ。
ソルジャーたちの銃弾があすかを傷つける事が出来なかったのに対し、あすかの銃弾は一発必殺だった。
この戦いはあすかの勝ちだった。
「こっちも化け物か?」
バイクの男がつぶやく。
その瞬間、男の視界の片隅で変化が起こった。
ザザッ。
どこかに潜んでいたソルジャーがあすかの背後に飛び出した。
その手にはピストルが握られている。
「まだいたのか」
この戦いはすでに終結したものと思っていたバイクの男が、目を見開きながら言った。
銃器を持つ男に、あすかは至近距離で背後を取られた。
男がトリガーを引いた時点で終わる。
バイクの男の頭の中に、今の状況から起こりうる結末が、そう浮かび上がった。




