あすか vs ベルッチファミリー
ベルッチのソルジャーたちの乗る車のエンジンが、低いうなり声を上げ、速度を増してあすかに襲いかかろうとする。
その音にあすかが気付き、振り返る。
今のあすかの手に武器らしい物はない。
あすかがポケットに手を入れたかと思うと、ピストルを素早く抜き取り構えた。
ソルジャーたちの車とはまだ距離があるが、刻一刻と近づいて来ている。
ソルジャーたちのマシンガンが、火を噴き始めた。
あすかが銃弾をかわそうと横に移動しながら、ピストルのトリガーを引いた。
「無駄だ。
その距離では当たらない」
バイクの男がそう思ったその瞬間、ソルジャーたちの乗った先頭の車のフロントガラスが真っ赤に血塗られながら、砕け散った。
あすかの放った銃弾は先頭の車の運転手の額を撃ちぬいていた。
運転手を失った車がコントロールを失い蛇行した後、歩道に乗り上げ建物の壁に激突した。
後続の車は蛇行する先頭の車を避けようと、急ハンドルと急ブレーキで、同じようにコントロールを失っている。
「嘘だろ」
男は激突した車を呆然と見ながら、そんな言葉を漏している。
「どこだ?」
我に返って、あすかを探すがさっきまでいた場所にはいなかった。
けたたましく、息つく暇も与えないマシンガンの銃撃音。
その合間に響く、散発的な4発の銃声。
男が銃声が聞こえた方向に目をやる。
あすかはマシンガンの銃撃をかわしながら、後続の車に向かって、銃撃を加えていた。
お互いが動いているとは言え、ソルジャーたちのマシンガンがあすかの横を空しく裂いていくだけであるのに対して、一方のあすかの射撃は恐ろしい精度だった。
マシンガンを車の窓から外に向けていたソルジャー四人が額に穴をあけ絶命していた。
予想外の光景に男の額に汗がにじむ。
絶命したソルジャーが落としたマシンガンに向かって、あすかが走る。
その手にマシンガンを掴むと、後ろを見せているソルジャーたちの車に向かって、銃弾を浴びせる。
ドババババッ!
その次の瞬間、マシンガンの銃撃音さえかき消す、巨大な爆発音が轟いた。
燃料タンクに命中したのか、最後尾の一台が爆炎上し始めた。
「ぐぅっ」
爆発した車の熱風は男のところにまで届き、その熱風の勢いに男は体を一度揺らし、小さく呻いた。
あすかはそんな爆発を気にもしていない。
マシンガンを持って駆け出し、炎上している車の横を通り過ぎ、まだ無傷の真ん中の車に襲い掛かろうとしていた。




