あすかを撮る謎の男
カタラーニの支配域は相変わらずベルッチファミリーのチェーザレに蹂躙されていた。
チェーザレがカタラーニを壊滅できていないのは、単にその主力の居場所を把握できないがためだけである。
カタラーニの面目を潰し、誘い出す。
その目的のため、チェーザレのソルジャーによる挑発はあちこちで行われていたが、そのチェーザレ側も被害を被っていた。
その被害とはカタラーニのソルジャーにではなく、あすかによってである。
そんなカタラーニの支配域を走り抜ける一台のバイク。
フルフェイスのヘルメットで、その顔は見えないが、その体格から言って男であることは確かである。
止まぬ銃撃音とその力に抗しきれず崩れ去るガラスの破壊音。
はるか先でベルッチファミリーが暴れている事に男は気づいた。
男が握るアクセルを回すと、エンジンが咆哮を上げた。
男の乗ったバイクがスピードを上げる。
男の視界。建物の向こうに黒煙が見えた。
その場所を目指して、男がハンドルを切る。
曲がった通りの先に炎と黒煙に包まれた車が歩道に乗り上げて止まっていた。
男が慌てて、ブレーキをかけ、バイクを路肩に寄せて停車する。
男は何かを求めるかのように、辺りを見渡している。
男の視界は一人の少女をとらえた。
「いた。
あれか?」
男がヘルメットを慌てて脱ぎ、鞄に隠したビデオカメラで少女の姿をとらえようと、カメラを少女に向ける。
それと同時に、男は自分が知っている知識を総動員して、少女の正体を掴もうとしている。
その容姿から言って、アジア系である事は間違いない。
「あの服装は見たことがあるぞ。日本の高校生の制服だ。
しかし、日本の女子高生がなぜこんなところで、マフィア相手に戦っているんだ?」
そう思っている時、通りの向こうに新たな車が現れ、猛スピードでこちらに向かってくるのが見えた。その数、三台。
車の窓は開けられ、マシンガンがのぞいている。
ベルッチファミリーのソルジャーであろう。
「援軍か?」
男が生唾を飲み込み、鞄に隠しているビデオカメラが少女に向いているかを確認した。
「さあ、どうする?
あんたの力を見せてもらおうか」
男が心の中でつぶやいた。




