謎のつぶやき
アーシアが捕まえていたソルジャーを銃弾の雨の中、ロベルトの部屋の中に投げ込んだ。
銃弾で破壊しつくされたドアを突き破り、突然仲間のソルジャーが現れた。
自分たちが放つ銃弾を全身に受け、血と肉片をばらまき、死の踊りに興じるソルジャー。
その光景にソルジャーたちの指がトリガーから離れた。
一瞬、銃撃音と硝煙に満たされた部屋に再び静寂が訪れる。
その次の瞬間、ソルジャーたちを包み込んだのは無と恐怖だった。
ガラスが砕け散る音。
壁に沿って、銃を構えていたソルジャーたちが、その音に気づき窓側を見た時、そこに立っていたはずの仲間の姿は無く、無残にも窓と言う窓が破壊されていた。
続いて、重たい何かが地面に落ちた音が届いたが、その時には自分たちも背にしていた壁に飛び散る赤い血の文様を描いて絶命していた。
残るはドアの両サイドに立っていた二名のソルジャーとロベルト。
アーシアのミッションはロベルトの殺害だったが、ヒューマノイドの人工頭脳の中では倒す相手の優先順位付けが成されていた。
一人は武器を持たず、葉巻を持つロベルト。
二名は銃器を持つ男。
アーシアは迷わず、銃器を持つ二名のソルジャーを襲った。
「だめだ」
二名のソルジャーが瞬殺されるのを見たロベルトはそう言うと、手に持つ葉巻のある場所を指で押した。
それがロベルトの人としての最期だった。
アーシアに殴り飛ばされ、背にしていた壁に激突したロベルトは顔面と後頭部の両方を陥没させ、壁に頭部から吹き出す血で赤いすじを描きながら、床に崩れるように倒れこんだ。
ミッションを完遂した事を確認しているアーシアの足元には、さっきまでロベルトが手にしていた葉巻が転がっている。
陰になってそれほど明るくはない床の上で、その葉巻が赤い光を放っている。
その赤は炎の赤と言うより、何か人工的な赤色であった。
「何?これは?」
アーシアがつぶやいた。
やがて、アーシアが一階に放っていた炎がロベルトの屋敷を包み込んだ。
もはや、わがファミリーの前に敵などいない。
ロベルトの屋敷の前に止めた車の中で、アーシアの帰還を待つベルッチファミリーのソルジャーは燃え上がる炎を見ながら、そう思っていた。




