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十字砲火

 ロベルトが潜む部屋では、ソルジャーたちが息を殺して、外の様子をうかがっていた。

 部屋のドアを挟み込むように、左右に二名が。

 隣の部屋との壁に沿うように、5名のソルジャーたちが。

 屋敷の窓側に沿うように、5名のソルジャーたちが。

 それぞれ緊張の面持ちで銃口をドアに向け、トリガーに指をかけながら、今か今かとその時を待っている。

 そして、その部屋の片隅で、ロベルトは火のついていない葉巻を手に、意味不明の言葉を繰り返していた。


 「数m、数m」


 その部屋にアーシアが近づく。

 アーシアの気配をドアの両サイドに立つソルジャーたちはつかんでいる。

 アーシアがドアの取っ手に手をかけたその時、ドアの両サイドのソルジャーが、ドアに向けてトリガーを引いた。

 それを合図に全てのソルジャーたちが銃撃を開始した。


 響き渡る銃撃音。


 それに呼応して、隣の部屋に潜んでいたソルジャーたちも廊下に飛び出し、マシンガンを乱射する。

 ロベルトの部屋と廊下から降り注ぐ銃弾の雨。

 十字砲火でアーシアを葬る作戦だ。

 部屋の中から銃撃するソルジャーたちにはドアの向こうの様子は、銃弾が貫通した穴からしかうかがいしれない。

 廊下に飛び出したソルジャーたちには、全てが見えていた。


 はるか先に続く廊下。

 そこにアーシアの姿は無い。


 ソルジャーたちのトリガーを持つ指の力が緩む。

 その瞬間、自分たちの背後に人の気配を感じ、振り向くソルジャーたち。

 しかし、それがほとんどのソルジャーにとって、人としての活動の最後だった。

 ソルジャーたちは一瞬の内に頭部に銃弾を受け、小さな穴から赤い血しぶきを吹き出しながら、床に倒れこんだ。

 そんな中、アーシアは一人のソルジャーだけは射殺しなかった。

 アーシアが、そのソルジャーの身体を、まるで人間が猫を持ち上げるかのようにして、廊下を歩き始めた。

 アーシアに持ち上げられたソルジャーが恐怖に顔を引きつらせながら、抵抗を試みる。

 宙をさまよう足で、アーシアに蹴りをいれる。

 アーシアにダメージはなく、何事も無かったかかのように廊下を進んでいく。

 拳でアーシアの顔を殴ってみる。

 そんなものはダメージにもならないと言うかのように、アーシアは無関心でその拳を止める気もない。

 ソルジャーの抵抗の結果、痛むのはアーシアではなく、ソルジャーの足と拳だけだった。

 それでも、ソルジャーは抵抗をやめない。

 ロベルトの部屋から放たれ続けている銃弾が、ドアや廊下の壁を破壊していく音がますます大きくなって近づいて来る。

 このままでは、自分はあの銃弾の雨の中に身をさらすことになる。

 その思いが、恐怖となり、死にもの狂いの抵抗をさせていた。

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