開戦
次の日、ついにベルッチファミリーは五大ファミリーの一角ガンビーナに戦争を仕掛けた。
エルカーンファミリーの支配下だった地域にあるビジネス街。
朝の喧騒がひと段落しかけたビジネス街を、ガンビーナのソルジャーたちが乗った黒塗りの車が片側一車線の直線道路を我が物顔で、走り抜けようとしている。
その進路のはるか先、対向車線側に一台の車が現れた。
徐々二台の車が近づいていく。
もう少しでもすれ違う。
その瞬間、対向車線を走っていた車の窓が開き、黒く輝く細長い物が突きだされた。
マシンガンである。
ガンビーナの車を運転しているソルジャーがそれに気づき、驚いた表情で叫びながら、ブレーキを踏む。
「敵だ!」
心も切り裂くようなブレーキ音が街中に響いたが、それも一瞬の事。
次の瞬間には、耳をつんざくほどの激しい銃撃音がした。
車の中にいたガンビーナのソルジャーたちを容赦なく、銃弾の雨が襲う。
銃弾の雨の中、ただの肉塊と化したソルジャーたちを乗せた車は、コントロールを失い、歩道に乗り上げて、消火栓に激突して、停車した。
エルカーンの旧支配地域はガンビーナファミリーとベルッチファミリーの支配域に囲まれている。
だとすれば、他のファミリーがこの地に現れたとは考えにくい。
ガンビーナのソルジャーたちを襲ったのはベルッチファミリー。
その可能性が最も高かった。
事の真偽とベルッチ側の真意を確かめるため、ガンビーナファミリーのボスは義兄であり、ベルッチファミリーのコンシリエーレであるロベルトに、ベルッチとのコンタクトを依頼した。
依頼を受けたロベルトはその報に驚くと共に、偶発の事件でしかないと信じながら、ただちにベルッチに電話をかけた。
「ボス、ガンビーナのソルジャーたちが旧エルカーンの支配地域で、何者かに襲われたらしい。
何か知っていますか?」
ボスを信じているロベルトの口調は詰問調でもなければ、怒気を含んでいる訳でもない。
「ああ。そのことか。
エルカーンを滅ぼしたのは俺たちだ。
あそこの権益を手にする権利は我々にこそある。なのに、ガンビーナが手を伸ばしてきたので、ちょっとした、衝突が起きたと言う事さ」
深々と椅子に腰かけ、右手に持つ葉巻をくゆらせながら、ボスが平然と答えた。
「では、襲ったのは我々のソルジャーたちに間違いないんですね?」
「ああ。そう言うことだ」
「どう話を終わらせる気ですか?」
両ファミリーの衝突に発展させたくないロベルトが、静かにたずねる。
「終わらせ方は簡単さ。
全てを私が手に入れる」
そう言うボスが笑いをかみ殺しているのが、電話の向こうから伝わってくる。




