解放された美紀
その女性の髪は黒く長い。そして、肌は白いが白人の白ではなく、黄色人種の女性の白い肌であって、下を向き、自分の身に何が起きるのかと少し震えている
「美紀!」
原が叫ぶ。
そこに父がいると教えられていなかった美紀が、その声に驚いた表情で顔を上げる。
「お父さん!」
美紀が原に向かって、走り出す。
原も美紀に向かって駆け出す。
二人はその中間で固く抱きしめあう。
「お父さん!」
涙声で美紀が言う。
「美紀。
よかった。よかった」
原の声も震えている。
しばらく、ロベルトは黙って、その光景を見守っていたが、ロベルトの想像を超えて長かったため、しびれを切らせて、二人に言った。
「すまない。これから私が言う事を聞いてほしい」
感激に浸っている二人の耳には届かなかったのか、全く返事も無く、抱き合ったままだ。
「ふぅ」
ロベルトは溜息をついて、両手で困ったものだと言う仕草をした。
「こほん」
ロベルトが一度咳払いをして、さっきよりも大きな声で、同じ事を言った。
「すまない。これから、私が言う事を聞いてほしい」
二人の時間はその言葉に邪魔され、現実の世界に引き戻され、声の主であるロベルトの方を見た。
二人の顔にはこれからの運命に対する不安が浮かんでいた。




