海辺での決意
大きな魔獣の背中に重そうな大きな籠を乗せると、その一行は動き出した。
「今回はイレギュラーが多かったからね。かなり時間が押している。設営の時間確保のためにも休憩なしで海辺の村に急ぐよ!」
ババリアの声に渇を入れられたように作業員は声を上げ、表情を引き締めた。
砂を強く踏みしめる音だけが響く。ミレイたちの村は中央の村と呼ばれておりいわゆる中央都市の役割をしているのだが、儀式はあくまで海の向こうの霧を晴らすもの。祭事の時は移動が必須だ。
村のお抱え魔法使いに混ざった、モモリとソウも魔法を展開する。
疲れを和らげる魔法、体を軽くさせる魔法をメインに常に魔法を使用しながら歩く。
モモリだけこっそり全自動冷暖微風を全員にかけていたのを知っているのはソウたち旅の仲間だけだ。
いつもより魔法馬力が高い状態だったからか、急いでも半日ギリギリかかる距離をさらにその半分の時間で到着したことに作業員はみな驚いていた。
「疲れもいつもよりないな・・・」
「これならすぐに設営できるんじゃねぇ!?」
「こらこら。せめて飯食ってからにしろ」
和気あいあいとそんな話が一行から聞こえてくる中、ミレイとババリアは、モモリ達を連れて海辺のひときわ大きな倉庫のような建物に入った。
振るそうな思い扉を開けると、そこには黒曜石でできたボートが一艘、どっしりとした貫禄を携えてそこに置いてあった。
「すっご・・・」
モモリの言葉にババリアは自慢げに鼻を鳴らす。
「本来は霧祓いの灯に魔力を込める巫女と、そのおつきの者が乗る船だ。本来なら村の精鋭が同乗するのだが、あんたらもこれに乗りたいとかほざいておったな。」
ババリアの視線が鋭く四人に突き刺さる。
「昨日ルマルと話をした。村の男衆よりあんたらのほうが強いと。この船は六人乗りじゃ。・・・言いたいことはわかるか」
「えっと、つまり・・・」
困惑した様子のモモリにババリアは悔しそうな様子を一瞬見せてから再度真面目な表情で口を開いた。
「あの子とルマル、そしてあんたら四人で定員さ。・・・あの子を・・・ミレイを、頼む」
ババリアは深く頭を下げた。
「ババリアさん!俺たちが必ず守るから安心して!」
リクはニッと歯を見せて笑うと、ババリアの頭をなでた。
「あと、ババリアさんは人間種だよね?うちのパーティ、モモリさん以外、ババリアさんより年上だから、そんなお年寄りムーブなんてしないで自然体でいなよ。たぶんその方がかわいいよ?」
「!?まて、そこの黒髪はエルフなのはわかるが、まさか・・・」
「俺はハーフエルフだよ。容姿は人間だった父親似だけどね。ヒロも獣人のハーフだから犬耳出せるよ!」
「おい待て、俺は狼であって犬じゃねえ。」
急な暴露にババリアは処理落ちしてしまったのか唖然とした様子出その場に座り込んでしまった。
「ババリアさん!?」
リクも驚いて声を上げる。
しかし周りの心配とは裏腹に、ババリアはさっと立ち上がり、膝についたホコリをはらった。
「・・・あっはっはっは!なんだい全く。そんなおかしな集まりならさほど警戒する必要なかったのかい!そういう大事なことはもっと早くいいな!・・・はぁ、気を張って損した」
ババリアは少しばかり金細工の古い煙管に火をつけると煙をっくゆらせながら手近なたるに腰かけた。
「祭事が終わったら、レイのことに関してはこちらに任せな。モモリの話によれば魔法の才能はあるようだし。母親も健在だ。これから何とでもやりなおしはきくさ。だから、ミレイ。」
ババリアの真面目な声色にミレイは姿勢を正した。
「忘れるんじゃないよ。戻ってくるまでが祭事、儀式だ。霧向こうの民へ長くそちらにうかがえなかったことの説明と謝罪、交易に関しての一切を任せた。他の連中はこき使っていいから役目を果たす前に逃げ帰ってくるんじゃないよ。長ければ一年は帰ってこれないんだ。そのことをしっかり胸に刻むように」
「はい。ババ様」
「ふん。私の引率なしの渡りは初めてだからね。ルマル、この子を何が何でも守れ。命に代えても。」
「わかっている。」
ルマルは眼帯の紐を再度きつく縛りなおし、倉庫の外に出て行った。
「さて、重苦しい空気はここまでだ。この船を運ぶよ。魔法が使えるやつは残りな。手伝え」
ババリアのあ声色がいつも通りになった。
ミレイとソウを残し、リクとヒロは邪魔だからという理由で追い出されてしまった。
「あのばあさん人使い荒いよな。本当に先代の巫女なのか?」
ヒロは不満そう言葉を漏らした。
「外!聞こえてるよ!余計なこと言うんだったら同行の許しを撤回してもいいんだよ!」
倉庫からババリアの怒号が聞こえてきた。
二人は慌ててステージの設営準備に混ざりに走った。




