すべては計画通り
「あれ?さっきあやしい商人の男が入っていったから・・・」
リクは困惑した様子を隠せないままモモリに問いかけた。
「あぁ、ミレイさんに差し入れとお手紙を持ってきてくれた人だよ。さっき転移魔法で帰ったけど。」
モモリは当然のようにそう言って紅茶をすすっている。
「あと、キョウさんは何でここに?」
モモリの向かいでくつろいでいる栗毛の美女は、どこからどう見てもエルラードのギルド受付嬢であるキョウである。
「有給とったのよ。だってお祭りやるっていうし私も彼氏ほしいし!」
キョウは楽しそうに言うと、フルーツを一つ手に取って口に放り込んだ。
自動魔法発生用魔法陣は最近モモリがソウに教えていたもので、安定して長時間使うことはできないと聞いていたが、ライブが始まってもう20分は経っている。
モモリの言う長時間の基準がわからなくなったリクは、無事ならよかったといわんばかりに二人に事情を説明してからテントを出た。
テントの外ではすでに騒ぎが起きていて、ライブはまだ続いているが、観衆から少し外れたところで抑え込まれている子供がリクの目には映った。
「子供・・・?」
「巫女様を返せ!あのランタンがあれば巫女様が本物の巫女様って証になるんだ!」
見た目の割には青年のような声色の子供に違和感を覚えたリクは剣を抜くとその子供の横にどんと刺して顔を覗き込んだ。
「あんた、昨日村長の家におばあさんに変装してはいりこんだ?」
リクの真顔にびくりと肩を震わせた子供はきっとリクを睨み返した。
「そうだと言ったら?まさかニセモノつかませるなんて思わなかったけどね」
子供は笑うと転移魔法でその場から姿を消した。
いきなり子供が消えたので抑え込んでいた衛兵はバランスを崩して転んでしまう。
そしてざわつきが観客の方から聞こえてきたと思い視線を移すとランタンを抱えた子供がステージの上に立っている。そして子供の姿からは考えられないほどの高いジャンプでどこかに飛び去って行った。
シンと静まった場にリクもヒロも冷や汗が止まらずにいると、大きな花火が複数上がった。
その大きな光の花に観客は一気にもりあがった。
「サプラーイズ!!えへへ、今日は魔法の花を夜空に咲かせたよ!では気を取り戻して、アンコール行くよー!!」
ミレイの大きな声を合図に音楽が流れ始める。
リクはほっと胸をなでおろす。
そして自分の持ち場に行く前にテントの中を確認するとモモリの姿がない。
慌てて探そうとするとキョウが反対側の入り口から手招きをしている。
それに誘われるようにテントの裏に行くと、杖を上に掲げて炎魔法をひたすら打ち続けるモモリとソウがいた。二人とも集中しているのか無言で上を見上げ続けている。
綺麗だなとその様子をみていると、リクの方に誰かが手を置いた。
「リ~ク~?」
「あ、ヒロ・・・」
リクが振り返るとそこには鬼の形相のヒロの姿があった。
「テメェ!持ち場に戻るぞ!!まだ終わってねーんだよ!!」
ヒロの剣幕にすっかり委縮したリクは、半ば引きずられるようにして持ち場に戻っていったのであった。
ライブが終わり、撤収作業もほとんど終わったということで先に返してもらったモモリ達は、ミレイに誘われて村長の家に向かった。
「お疲れ様~!!」
「カンパーイ!」
グラスのぶつかる音が景気よく響く。
「あくまでリハーサルだよ。明日は海辺の町に移動するんだからね!気を抜くんじゃないよ!」
「ババ様、わかってるってぇ!でもたまにはいいじゃん!」
二人のやり取りに皆が苦笑をする中、村長が口を開いた。
「それで、本物の霧祓いの灯は戻ってきたのかね?」
「うん!控室に行ったら置いてあったからさっき魔力流して確認したけど大丈夫!」
「そうか。なら安心だな」
ルマルが優しい表情でミレイの頭に手を置く。
「もう!子ども扱いしないで!私の方が年上!」
「ちょうどいい高さなんだよいいだろ別に」
「それにしてもあの子供の言葉、どういうことなんだろ。『巫女様を返せ!あのランタンがあれば巫女様が本物の巫女様って証になるんだ!』って・・・」
リクの言葉に村長と老婆が食事の手を止めて黙り込む。
「そのことなんじゃが・・・ミレイ、これから話す事に驚かないで聞いてもらえるかい?」
「村長!!今言うもんじゃないだろう!?」
「仕方ない!あの教団が大きくなってきたのを知った時からいつかは話さなければと思っていた。
ミレイ、実はの、お前さんは月の教団の巫女であるレイの妹なんじゃ。」
「・・・・え?」
ミレイは絶句したまま手に持っていた串焼きを床に落としてしまった。
「ミレイ、本当にすまない。村長と私しか知らないから安心してほしい。
・・・・・・・・これから話す昔話を聞いてくれるかい?」
老婆はミレイをまっずぐと見つめてそう問いかける。
ミレイは何か覚悟を決めたように強くうなづいた。
「それは私が現役の巫女・・・ミレイの今の立場だった時の話じゃ。」




