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追放聖女はもふもふ達と恋をする?  作者: 街のぶーらんじぇりー


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姉様、ご無事で…

「そんな! どうして、マーレ姉様が……」


「すまぬのう。クリストフは万一の時に備え、王都を落ちのび自領まで逃げる手だてを講じておった。儂と妃はそれで救われたのじゃが……混乱した王宮で、アマーリエを見つけることが叶わなかったのだ。もう少し捜せばと思ったのじゃが……クリストフが急げと。自分の娘を見捨てさせてまで儂らだけを助ける仕儀になってしまったこと、実に忸怩たるものが……」


「陛下、そのことはもう。娘とて王室に嫁ぐからには、このような危険も覚悟しておったでしょう、何よりも、国の乱れを収めるためには、陛下御自身がご無事なことを民に知らしめることが必要なのです。私は宰相としてそれを優先したまで、陛下の御心を痛ましめるにはあたりませぬ」


 感情を抑えた声でクリストフ父様が陛下を制するけれど、その左手が固く握りしめられていることが、何よりも雄弁に父様の無念を物語っている。そして、優しく微笑んで下さっている陛下の家族も、無傷ではなかった。最愛の第一王女様が、やはり捕らわれたらしいのだという。それほど親交はなかったけれど、私のような身分が下の者に対しても丁寧で、温和な……民衆からの人気も高いお姫様だった。


「王族を二人も捕らえたとなると、敵が何か要求事項を出して来そうなものですが?」


「そうなのだ。我々もそう考えていたのだが、今のところ動きがない。兵力を得た我々がこれから王都に進出するところでその足を止めるような、何らかのアクションがあると考えている」


 クリストフ父様の推定に、陛下もうなずく。確かに第一王女と王太子妃を盾に取られたら、軍は動けなくなるだろう。もし彼女たちに構わず叛乱軍を攻撃したらしたで、非情の王だの冷血宰相だのと、民の間に誹謗をばらまかれてしまうのだ、それは辛い。


 だけど、たった今悩んでもどうしようもない。継承権のないマーレ姉様がすぐ殺されることは無いだろう、どこかで助けるチャンスがあるはず。私は、ぐっと握ったこぶしに力を込めた。


◇◇◇◇◇◇◇◇


 ロワールから帰った遠征軍二万五千に、ハイデルブルグ家の私兵一万、そして降伏させた叛乱兵のうち素直に従ってくれそうな三千を合わせ、四万弱にふくれ上がった国王軍は、王都に向けゆっくりと行軍していた。


「急ぐことはないのだ。こうやって堂々と存在を示しつつ進めば、風を望んで帰順する貴族も増える。王都を攻略するに、戦力はいくらあっても余分と言うことはないのだからな」


 腹黒のクリストフ父様が、にこりともせずつぶやく。その視線を真っすぐ、マーレ姉様が囚われているであろう王都の方角を向けて。


 確かに、父様のおっしゃることは正しいわ。国王陛下とその麾下にある軍が健在であることさえ示せば、バイエルンでは少数派である西教会をバックにした第三王子にあえて身を投じようとする貴族は少ないはずだ。むしろ戦後不参戦を咎められることを恐れ、陛下が王都を奪還する前に合流しようとするだろう。


 父様の予想通り、日毎に手勢や物資を持って参陣する貴族が、増えてきていた。陛下と父様は鷹揚に彼らを迎え入れているけれど、腹黒なあの人たちは、今頃机の下で貴族の通信簿をつけているだろう。


 たとえば今日も何某とかいう子爵が一千の兵を従えて来たけれど、彼の領地はハイデルベルグの近くにあって……本当なら、とっくに来ていなければいけなかった人なのだ。恐らく西教会にもつかず国王にもつかず、うまく勝ち馬に乗ってやろうと小狡く立ち回っていたのだろう。うん、こいつは「△」だね。一方その次に陛下にまみえたグランセ男爵は、たった二百の手勢しか連れていなかったけど、はるか東方から敵が支配する王都近郊を突っ切って駆け付けたんだ。彼はきっと「◎」、陛下が王都を回復した暁には、何か責任のある役職を任されるだろう。


「どうやら、このまま行けば順当に王都を取り戻せそうですわね」


「聖女は、もう一戦くらいやりたいのではないか?」


「テオドール様はひどい方ですね、私はそんなに好戦的な娘ではありません」


「ふむ、そう思っているのは本人だけかもしれないぞ?」


 思いっきり失礼な彼のコメントに口をとがらせる私。私は戦などしないで、森の中でゆっくりと昼寝をするのが望みなのだ。やたらと戦と縁があるのは……不本意ながら、巻き込まれているだけなのよ。


「そうですね、お姉さんは戦は嫌いかも知れません。でも、やたらと面倒事に首を突っ込むから、こういう羽目になるのですよ!」


 ぐさっ。鈴を転がすような声でそんな辛辣なことをビアンカに言われたら、海よりも深く落ち込んでしまう。やたらと首を突っ込んでいるというより、面倒事が勝手に寄ってくる体質だっていう、自覚はあるのよね。


(まあ、それもよかろうよ。そうして主が面倒事を起こすが故に、妾が血をすすることができるのじゃからな)


 背負ったグルヴェイグまで、そんなことを言って……どうやら私の味方は、ここにはいないらしい。う~ん、納得いかないわ。




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