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追放聖女はもふもふ達と恋をする?  作者: 街のぶーらんじぇりー


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包囲作戦

「ルートヴィヒ殿下は、ご自分の実力が足りないことを恥じ、自ら弟気味であるアルベルト陛下に王太子の地位を譲られることを決断なされたのだ。まさに立派な行いであった」


 いやあ、そう来るかあ。ルートヴィヒ様は国政の改革に燃えておられたはず、それを簡単に放棄するはずがないんだけどね。まあこの大将さんは、敵であろうと根拠のない誹謗中傷をなすことをしたくない高潔な方のようだ、こういう虚構をつくるしかないのだろうな。


「それが本当であれば、確かに立派な行いですわね。ですが、にわかには信じられないことです。もし王太子殿下がご自分の言葉で同じことを語られるのであれば、私どもは喜んでアルベルト『殿下』の軍門に降るでありましょう。王太子殿下は、今いずこにあられますの?」


「ぐっ……殿下は、御病気を得られ、王都で療養中である」


「そのような苦しい言い訳では、納得するわけには参りませんわね。いつ、なんの病気で? 王都のどこで? ふふっ、答えることなどできないのでしょうね。暴力をもって強引に、本来あらざるべき地位をもぎ取ったのではありませんの?」


 こことばかりに、私は切り込む。時間を出来るだけ稼ぐためには、相手が答えにくい問答に持ち込むことが一番だ。案の定、敵の指揮官は沈黙した。よく見ると、指揮官の脇で聖職者らしい男が、執拗に早く攻撃せよと迫っているようだ。そうか、あれが西教会の黒幕なのか。


 やがてその聖職者は、ためらう指揮官にしびれを切らしたのか直接私たちに矛先を向けてきた。


「この背教者どもめ! お前らがロワールで働いた涜神の狼藉、神がお赦しあるわけもなし!」


 ああ、狼藉ってのは、王都から西教会の幹部たちを追放したことね。国王に反逆して王都を追い出した教会のほうが、よっぽど狼藉だと思うんだけどなあ。だけど、この短気な聖職者に主導権を握らせておくと、全力突撃されちゃいそうだから、何とかしないとね。


「このような問答に意味はないわ! 全軍、と……」


 拡声の魔法で全軍に拡散された聖職者の金切り声が途切れたことで、みんながそちらの方向を見た。そこには、杖を私たちに向け、汚らしく口をあけたその聖職者の姿があった……但し、石となって。


 もちろんそれは、私の肩に止まっている、ルルの能力だ。彼女の石化術はもう恐らく大陸一のもの、今やかなり離れていても、視線が届けば相手を石にできるのだ。あまり人間には使いたくなかったのだけど、ここばかりは仕方ない。それにあの聖職者は、平穏だったバイエルンに望んで動乱を起こし、民を不幸にした元凶なんだろう、石になっても自業自得だよね。


 ルルの石化を見せつけた効果は、てきめんだった。早く戦いたくて煽っていた兵士たちも、その口を閉じて様子をうかがっている。まあ、そうなるよね。いくら戦大好きな兵であっても、それは多かれ少なかれ自分が勝てる可能性があるからこそだ。見つめられただけで石になってしまうような相手に勝てる可能性はゼロ、歯向かおうとか思わないよ。冷静に考えたらルルだって千人も二千人も石にできるわけじゃないから、多少の犠牲をいとわずボコられたら負けちゃうのだけど……さすがに先陣を切ろうという勇者は、いないらしかった。


 しばらく静かに、にらみ合いが続く。高位の聖職者がもう一人いたらしくて、さかんに指揮官の伯爵にぎゃあぎゃあと絡んでいるのがウザかったので、「雷光」を一発お見舞いして、黙ってもらうことにした。「聖女の力」を初めて眼にした敵将兵の動きは、さらに鈍くなる。


 そして、ようやく私の待っていた瞬間が来た。


 敵の後方で、にわかに騒ぎが起こる。もうもうと土煙が上がり、馬蹄や干戈の音が響いて……敵が一気に狼狽するのが、こちらからもわかる。そう、別動隊として組織した二つの部隊が、敵後方の左右から一気に襲い掛かってきたのだ。


 これが、私の提案した作戦だった。正面がらぶつかっては損害が大きすぎる、ならば奇襲して決定的な損害を短時間で与え、包囲して降伏させるしかないと。だけど別動隊が後方に回り込む間に弱い本隊を衝かれたら話にならないので、私やテオドール様、そしてルルといった目立つ面々で、なんだかんだと時間を稼いでいたわけなのだ。


 敵に優秀な指南役がいれば、後方からの攻撃など無視して、一気に正面の私たちにぶつかることが最善だと気付いたかも知れない。だけど敵にとっては不幸なことに、正面の本隊をそこまで削って別動隊に割いていることを察した者は、いなかったらしい。敵は危機に陥った後方にばかり意識を向けて、いたずらに兵力を消耗させていた。


「それではテオドール様、お願いします」


「よしっ、任せておけ! いいか! 聖女の頑張りに応えるぞ、全軍前進!」


 黒の軍服に凛々しく身を包んだテオドール様を先頭に、私たちの部隊も嬉々として攻撃を始めた。うん、どうやら、勝ったみたいね。




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