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就職先は宇宙船の艦長さん  作者: 光晴さん
惑星『キュテル』~惑星『ハーベン』へ

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第61話 現れた〇〇




惑星『カハル』から来たシュレナさんたちと会談をしていると、ブリッジにいるオリビアからワープアウトしてくる宇宙船があるとの知らせを受けた。


それを聞いて、俺とカレンがブリッジへ走るのはわかるが、何故シュレナさんたちやパトリシアさんたちも走っているのか分からない。


ま、とりあえず今はブリッジへ急がなければ……。




▽    ▽




ブリッジに入ると、ちょうどメインモニターにワープアウトしてくる宇宙船が現れるところだった。


現れたのは、赤い宇宙船。いや、宇宙戦艦だ。

さらに、続々とワープアウトしてくる青黒い宇宙戦艦たち。

現れ切った時、全部で八隻の宇宙戦艦が出現した。


「あれは惑星『ニバシア』の宇宙艦隊だ!」


メインモニターの映像を見て、シュレナさんが叫ぶ。

パトリシアさんも見たことあるのか、青い顔をして見つめていた。


「あれが、『ニバシア』の宇宙艦隊……。でも、何しにこんな宙域へ?」

「……たぶん、そこのお姫様の婚約を邪魔するために来たんだろうね。

あの先頭の赤い宇宙戦艦、あれレンブレスの専用艦よ?

何しに来たか、もうわかるでしょう」


確かに、火を見るより明らかだ。

すると、何かを察知したのかシュレナさんが自分の宇宙戦艦に戻ると言い出した。


「私たちは、自分の宇宙船に戻るわ。

何しでかしてくるか分からないし、対応いかんでは、戦闘になるかもしれないから」

『分かりました、ではこちらへ』


そう言ってカレンが見送るために案内する。

といっても、ブリッジを出て右へ突き当たるまで進めばいいだけだが。


一応俺も、同行することにした。


しかし、『ニバシア』の艦隊の行動の方が、早かったようだ。

先頭の赤い宇宙戦艦から、一筋のビームが放たれた。

しかも、シュレナさんの宇宙戦艦と宇宙船『アーサー』を繋いでいる通路を撃ちぬいたのだ。


相手としては、二隻の宇宙船の間に威嚇として打ち込んだだけだろうが、ちょうど通路があり撃ち抜かれてしまった。


幸い、まだシュレナさんたちは通路に入ってなかったが、いきなり通路が撃ちぬかれればどうなるか、船内の空気が外へと勢いよく流れ始める。


「なっ!」

「き、気流が……」


船内の通路にある手すりをつかみ、宇宙へ飛び出さないようにしっかりと握る。

そして、何とか全員が耐えること五秒。

緊急処置として、自動で隔壁の扉が閉まり、宇宙へ飛び出すことはなくなった。


それと同時に、気流の流れもなくなり俺たちは通路の床に座り込んでしまう。




「……通路を打ち抜くとは……」

『マスター、大丈夫ですか?』

「あ、ありがとうカレン、俺は大丈夫だ。

シュレナさんたちは、大丈夫ですか?」


カレンに支えられながら起き上がり、シュレナさんたちを見るとどうやら全員無事なようだ。

手すりにつかまって、ゆっくりと起き上がってきた。


「お嬢様、あれは威嚇で撃ってきたと思います」

「でしょうね、ちょうど私の船とこの船の間だったしね。

……ブリッジへ行きましょう、私の船に私たちの無事と戦闘に備えるように言っておかないと」


そう言って、ブリッジの方へ歩いて行く。

俺は、少し足が震えていた。

カレンに支えられてはいるが、足の震えが分かる。


これは、宇宙船から宇宙に飛び出してしまうかもしれなかった恐怖からだろう。

宇宙で過ごしていれば、分かっていたことなのだが、どうやら俺の頭から宇宙へ飛び出してしまうってことが抜けていたようだ。


今回の事で、再認識してしまった。

ここが、最も危険な職場であることに……。




▽    ▽




何とかブリッジに戻ると、俺はすぐにカレンに支えられながら、艦長席に座る。

……足が震えて、当分立てそうにない。


『マスター、通信をお願いされましたけど、よろしいの?』

「ん?ああ、シュレナさんは自分の宇宙船のことが気になっているんだ、許可するから使ってもらって」

「すまんな、加藤殿。

こちら、宇宙運搬会社『ショルフダール』所属の宇宙船よ、聞こえる?聞こえたら返事をして?」


すると、少し間があって返信が返ってきた。


『お嬢様、お嬢様ですか?!ご無事ですか?!』

「すまない、状況はどう?宇宙に放り出された人はいる?」

『いえ、こちら………』


シュレナさんたちは通信を続けている。

どうやら、向こうのシュレナさんの宇宙船にも、外に出された人は無く損傷も軽微だそうだ。


『マスター、コーヒーを入れましょうか?』

「ありがとうカレン、済まないが頼む」

『はい』


笑顔で返事をすると、カレンはブリッジを出ていく。

食堂で、コーヒーを用意してくるのだろう。


「エヴァ、シールド作動、レベルは四で頼む」

『了解!シールド作動!レベル四』


……これで、船体にビーム攻撃をしても大丈夫になった。

このまま、戦闘が始まってしまうかもしれないが、さっきの攻撃が威嚇か……。


ということは、相手からの通信があると思うのだけど、遅いな……。

ふと、シュレナさんの方を見ると、シュレナさんも相手からの通信を聞いていた。

だが、向こうも通信は無かったようだ。


変だな……。




▽    ▽




カレンがコーヒーを注いで持ってきた。

それを俺が受け取ると、ようやくビームを撃ってきた相手から通信が入ったようだ。


『マスター、赤い宇宙船から通信ですわ』

「メインモニターに回してくれ。

……しかし、威嚇をしておいて、ずいぶんと時間のかかった通信だな……」

「加藤殿、相手の意図が見えん。話はなるべくのばしてくれ」


シュレナさんのお願いに頷き、通信を繋げる。

そして、メインモニターに映ったのは、赤い軍服に身を包み、胸の所にはジャラジャラと勲章のようなものが光る。

さらに、しっかりと髪をセットし化粧までしている男が貴族の礼をして立っていた。


……もしかして、髪のセットや化粧、さらに着替えていたために通信が遅れたのか?

そのことが分かった時、ブリッジにいた全員がドン引きした。


パトリシアさんが、あそこまで嫌がる理由が分かった気がする。



『初めまして、運搬屋諸君。

私が惑星『ニバシア』の次期大統領のレンブレス様だ。その船に私の婚約者であり、私の一番大切な女性のパトリシア第三王女がいるのは分かっている。

おとなしく、モニターの前に出したまえ?』


……バカだ、バカが目の前にいる。

モニター越しではあるが、本物のバカだということはわかる。


俺たちは、そのセリフに呆れて行動に移せずにモニターを見つめることしかできなかった。すると、何を勘違いしたのかさらに的外れなことを言い出してきた。


『どうしたのだ?モニター越しとはいえ、私の美しさに声も出ないか。

まあ、そうだろう。私は美貌も権力も力もある男だからな!

こんな私が、パトリシア第三王女を迎えに来たのだ、健気だろ?』



……どうしよう、笑ってしまいそうだ。

シュレナさんは、俯いてふるえているし、一緒に来た人たちも同じだ。

パトリシアさんは、相変わらず青い顔をしているし、護衛の女性はパトリシアさんの側で支えている。


カレンやオリビア、エヴァにヘレンは、表情を無くしたようにモニターを見ている。

よかった、シールドを展開しておいて。

この後、どうなるか少し予想できたから……。








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