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就職先は宇宙船の艦長さん  作者: 光晴さん
惑星『キュテル』~惑星『ハーベン』へ

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第58話 戦争の真相




惑星『ハーベン』に向けた亜空間航行、二日目。


この日、ブリッジの艦長席で毎回のようにナンシー班長の資料に、目を通していると、自動扉が開き中に入ってきた人が。


「あら?……ココは、宇宙船の操縦席、ですか?」


惑星『キュテル』のパトリシア第三王女様だ。

どうやら、護衛は一人だけのようで、確かメイル、と呼ばれた女性だったと思う。

護衛についている女性は全員短めの髪をしていて、ボブだったりショートだったりだ。


メイルさんは、ショートにしている女性で眼鏡をかけている知的な女性。

ただ、スタイルはスレンダーで緊急事態にも対処できそうな感じかな。


「姫様、どうやら曲がる角を間違えてしまったようです」

「では、通路に出て右ではなく左だったのね?」

「そのようです」


ブリッジの入り口で、道を間違えた話をしているお二人に、俺は話しかけた。


「パトリシア様、どこへ行くつもりだったんですか?」

「あら、加藤さん。私たち食堂へ行くつもりだったのだけど、どうやら道を間違えたようですの」


……そういえば、パトリシアさんがお部屋として使っている四人部屋は食堂から一番遠かったな。

入り口前の壁に、案内板を貼りつけておくか。


「そうでしたか、ではすぐに案内表示を船内に貼っておきましょう。

次は迷うことは、ないと思いますから」

「お手数をかけますが、よろしくお願いします。

……ところで、加藤さんはここで何をなされていらっしゃるのですか?」


「私は、心配性でして。依頼の資料を読みなおしていたんです。

今回の依頼は、パトリシア様たちを届けて終わり、ってことになりそうになかったので……」

「それは、何と言っていいのか……」


「加藤殿、面倒くさいことになったのは姫様のせいだと言いたいのか?」


護衛のメイルさんが、睨んできた。

さすが、お姫様の護衛、迫力があるな……。


「いえ、そういうことではありません。

ただ単に、資料を見直して自分たちのできることを最大限しようというだけです。

お姫様のせいだなんて、思っていませんよ」

「……ほんとに、そう思っているのか?」


……疑り深い護衛である。


「運搬業を数は少ないですが、いろいろ経験してそれなりに大変な依頼もありましたから。その経験から、こうして資料を読みなおしたりしているんですよ」

「まあ、それならいいが……。決して、姫様のせいではないとだけは覚えておけ?」

「分かりました」


メイルさんの方が、面倒くさいような気がする。

でも、護衛の人って、こんなものなのかな?


「ところで、加藤さんはどんなものを運んだりなさったのですか?」

「今までの依頼の中で、ですか?」

「はい!」


……守秘義務、があるのかないのか分からないが、詳しく話すことはしないでいいだろう。

依頼人にも、受取人にも迷惑がかかるかもしれないからな。


「そうですね、最初の運搬依頼は、食料や生活必需品の運搬でした。

遺跡調査をしている人たちやそのサポートをしている人たちのための荷物でしたから、かなりの量を運びましたね」

「遺跡調査とは、珍しいことをされている方たちがいるのですね……」


珍しい、か?

俺が、不思議な顔をしていたことに気づいた護衛のメイルさんが教えてくれた。


「不思議そうな顔をしているな、加藤殿。

私たちの星では、遺跡を調査することはない。すべて海の下、だからな。

それに、祖先がどうだったのかにもあまり興味がないのだ。

今を生きることに、一生懸命でな……」


なるほど、昔を振り返っている余裕がなかったってことか。

今は、遺跡調査とかに興味が無くても、平和になればいずれ調査し始めるかもな。

海の下だろうが……。


「後は、どんな運搬依頼がありましたの?」


パトリシア様は、好奇心からいろんな運搬依頼を聞いてきた。

中でも、宇宙戦艦の戦闘に巻き込まれた話なんかは、ハラハラドキドキしながら聞き入っていたようだ。


俺も、調子に乗って臨場感たっぷりに話したことがやり過ぎだったようで、次から次へと話を要求してくる。

しかし、俺は、まだまだ新人だ。


そんなに話があるわけではない。

で、結局話がつきかけた頃、カレンがコーヒーを持ってきてくれたことで終わりとなった。

いや、助かったよ、カレン……。



「はぁ~、美味しい」

「ええ、この飲み物は落ち着きますね……」


しかし、カレンはここに、パトリシアさんやメイルさんがいることが分かっていたのか?

人数分のコーヒーを持って来るなんて……。


まあ、いいか。

話も尽きて、何も話すことが無くて慌てていたからな。

なんにせよ、助かったよ、カレン。




コーヒーを飲んで、興奮した気持ちが落ち着いたのか、パトリシアさんが、ある話をしてくれた。

それは、惑星『キュテル』と惑星『ハーベン』の戦争の始まり。


そう、きっかけだった……。



「加藤さん、その資料には『キュテル』と『ハーベン』の戦争のきっかけは載っておりますか?」

「いえ、関係者に聞いてみたが、忘れた人たちばかりだったとしか……」


パトリシアさんは、飲みほしたコップを弄りながら、話し始める。


「まあ、当然ですわね。

当時の王族や貴族たちが、その件に関して機密扱いにしたのだから……。

始まりは、一人の貴族が犯してしまった罪……」



戦争が始まる前の惑星『キュテル』で起こった事件。

その日、親交のあった惑星『ハーベン』から貴族家の団体が当時の王の誕生パーティーに参加するため、惑星『キュテル』を訪れていました。


その中に、ネレイレ、というある貴族の少女がいたの。

当時、まだ十歳になるかならないかという歳だった。


王の誕生パーティーに参加し、ネレイレはその見た目のかわいらしさから王の覚えもめでたく、また王妃からも将来が楽しみねとお声をかけられたそうです。


ですが次の日、事件は起きました。


ネレイレが、突如消えたのです。

当時の『キュテル』の王直々の兵士まで出して捜索するも、行方知れずとなりました。


ご両親は、たいそう心配し悲しんだそうです。

ですが、悲劇はそれだけではなかったの。


次の日には、別の貴族家の令嬢がいなくなったそうです。

そして、また別の日にも、また別の日にも……。


王は自分の誕生日パーティーがきっかけで人がいなくなるとは、とたいそうお怒りで町の兵士まで使って捜索を行わせたそうです。


そして、七人目の令嬢誘拐の現場を、町の兵士が偶然目撃。

その場で捕らえることをせず、後を追っていくとある貴族家の屋敷に入っていったそうです。

屋敷に入ったことを確認した町の兵士は、そのことを上司にすぐに報告。


上司は、貴族家の屋敷ということを考え、王に直接報告しました。

もちろん、王はその報告を聞いて、すぐにその貴族の屋敷を捜索させるように兵士長に命令。


そして捜索の結果、その屋敷の地下から行方不明になった貴族家の令嬢たちを発見しました。

攫われたばかりの令嬢以外、物言わぬ姿で……。

その令嬢たちの中には、損壊が激しく身体の一部が無かったものもいたとか……。

また、ある令嬢にいたっては血の涙を流していた形跡があったとか。


その報告を聞いた王は、すぐにこの探索に関わった者たちにかん口令を敷き、犯人であろう貴族を呼びつけたのだ。


当時の王の、側近中の側近の、宰相を……。








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